第16話 日々の鍛錬
目が覚めると、横にはライムハルトはいなかった。
外を見ると、日の出の時間のようで日差しが眩しい。
光の照らす方でライムハルトが、剣術の稽古をしていた。
こんなに朝早くから勇ましい。
「おはようございます」
「おはよう、ソフィア。勝手に出てすまぬ。これは毎日の日課なのだよ」
「毎日の鍛錬ですね。尊敬します」
恥ずかしい話だが、私は毎日コツコツと鍛えるようなことは苦手である。
だからこそ、欠かさずに続けようとする人のことをとても尊敬する傾向があるのだ。
「ソフィアも一緒にどうだ? 魔力の鍛錬もしているのだろう?」
やっていることが当たり前のような表情で私に聞いてくるが、生憎稽古という行為をしたことがない……。
私は申し訳なく思いながら首を横に振った。
「実は、魔力を鍛える訓練という行為はしたことがないんですよ……。もうしわけご──」
「はい!?」
ライムハルトの腕の動きがピタリと止まり、驚いた表情で見つめてきた。
「聞くが、誰かに魔法を習ったことは?」
「ありません」
「では……、ソフィアの師匠という者も……」
「えぇ、いません」
昨晩はいい感じの雰囲気だったが、今正直に話してしまったことで関係がマズくなってしまうんじゃないだろうか。
毎日努力している人が何もしない人を見たとき、どういう反応をするのだろう……。
少しばかり怖かった。
だが思いの外、ライムハルトは期待に満ちたような目をしていた。
「素晴らしい……。何もしないであの魔力の数値……。相当な努力を重ね築き上げたものかと思っていた」
「申し訳ございません。毎日何かをするという行為が苦手なもので」
「ふむ、ならばソフィアが魔力の鍛錬を行えば、人はおろか生きとし生きる者の中で最強の存在になるかもしれぬな」
そんな大袈裟な……、と苦笑いしながら心の中で思っていた。
お父様からは、肉体も鍛えれば最強の座になれるかもしれないなどと言われたことはあったが、何もしてこなかった。
もしかしたら、幼少期から頑張っていたら、ライムハルトと同じくらいの力を手に入れ……いや、それはさすがにないか。
だが、ライムハルトが一生懸命やっている姿は見ていてカッコよかった。
私も一緒にやってみようかなという気持ちになったのだ。
「明日から、お供してよろしいでしょうか?」
「もちろん構わぬ。よければ剣術も教えるが」
「考えておきますね」
翌日から故郷へたどり着くまでの間は毎日、ライムハルトと一緒に鍛錬をしてみた。
一人では絶対にやっていなかったことだが、二人でやると案外楽しいものだと思えたのだ。
もしかしたらライムハルトと一緒ならば、何をやっても楽しいのではないだろうか。
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