第4話 ギルドで働いている親友に報告した

 街の出入り口近くにあるギルドへと入る。

 本来だったら今頃ダンジョンに入っているはずなのに、私が帰ってきたことを確認して、ギルド職員のアーニャは少々驚いているようだ。

 彼女と私は仲が良くて、プライベートでお茶をしたりする親友だ。

 だからといって、私だけギルドメンバーとしての特別扱いをされるようなことは一切ない。


「どうしたのソフィー!? 帰りメッチャ早くない!?」

「あ、うん。色々と事情があってね」


 アーニャは私のことをソフィーと呼んでくれる。

 彼女だけの特権だ。


 幸い周りに誰もいなかったので、私は包み隠さずダルム達に言われたことを話した。

 アーニャは驚きながらも、徐々に顔が怖くなっていく。

 そうとう怒っているらしい。


「はぁー!? ありえなくない!? 異性目当てでソフィーをクビって……。そもそもあんな男とソフィーが一緒にパーティー組めているだけでも奇跡だと思ってたんだけど!!」


「ちょ……それ言い過ぎ! あなたギルド職員だってこと忘れてるでしょ!」

「え? あぁそれはいいの。どうせ他のみんなも同じこと思ってたから! ぶっちゃけソフィーの評価は凄いし。さすがに他の冒険者にはこんなこと言えないけどねー」


 今度は私が驚いてしまった。

 アーニャからは度々褒められてはいたけれど、それは親友として応援してくれてる意味合いがあると思っていた。

 まさか、そんなに深く関わっていない他のギルド職員さん達にまで私の存在を知られているとは……。

 まぁアーニャが裏で私のことを推してくれたんだろうけど。


「ソフィーの魔法ってさ、ぶっちゃけて言うと一流冒険者の域超えてんのよね。多分最高ランクの超級冒険者くらい?」

「言い過ぎ! 今まで三流ランク推奨ののダンジョンしか入ったことないし、超級冒険者だなんて……。どうしてそんなことがわかるの?」


「それは企業秘密。でも、ソフィーならあんな雑魚メンバーと一緒にいるのがそもそもおかしかったのは事実。そりゃー幼馴染同士で婚約もしているってことだから、アタシ達も何も言えなかったけどさ……」


 どうも親友だからって感じの言い方じゃないんだよな……。

 ダルムと離れたことに最初は怒りまくっていたアーニャだが、次第に離れてくれてありがとうといったような感じになってきている。


「で、ソフィーはどうすんの?」

「王子様を探す!」

「は!?」


 今度は「何言ってんだコイツ」と思っていそうな眼差しを向けてきた。


「お父様が、好きな相手と結婚しなさいって言ってくれたの」

「さっすがドメイレス様~!! 元超級冒険者にして最高の子爵だわぁ!」

「だから、冒険者をしながら恋をしてみたくて……」

「ソフィーは可愛いんだから、すぐに男が寄ってくるって!! でも、変な男とはくっつかないでよ? 例えば『ピーーー』ルムとか!」


 いや、普通に遠回しでダルムって言ってんじゃん。

 ピーーーーって声に出して自主規制しているけどすぐわかるから!

 それはともかくとして、私のことを可愛いと言ってくれたアーニャは大好き!!

 すぐに抱きしめたいけどギルド内なので流石にやめておく。


「あぁ、そういえばもうすぐ公開される情報なんだけどさ、あるお方率いるパーティー募集が始まるんだよね。ソフィーが冒険者続けるんなら先に紹介したいんだけど」


「それってギルド任務の、えこひいきとかない!?」

「あー大丈夫だって。そもそもこの募集かけた相手って、本当はソフィーを加えたかったのよ。でも、事情を説明したら残念そうに諦めていたからね。ソフィーが入るって言ったら大喜びするはず!!」


 そんなに求めてくれている人がいるなら話くらいは聞いてもいいかな。

 もちろん、今回のような失敗を経験しているので、パーティーに入るかどうかは会ってから決めるけど。


 誰でも良いとは思っていない。

 戦闘能力はともかくとして、人柄を見て決めたいな。


「うん、じゃあ会ってみようかな。どんなパーティー?」

「実はまだ1人なんだよね。でも、ぶっちぎりの腕前を持ったスーパーイケメンよ?」

「失礼だけど、そんな人この街にいたっけ……」


 おかしい。この街の冒険者でソロで活動している人はいなかったはずだ。

 アーニャは笑いながら黙って首を横に振った。


「そのお方は、ここから2つ街を超えた王都にいるの。名前今言っちゃって良い?」

「え、えぇ……」


 名前を言っただけでわかるくらいのお相手なのだろうか。

 そんな人がどうして私を誘ってくれたんだろう。


「ライムハルト=シャーゴッド第3王子よ」

「はぁぁぁぁぁああああーーー!?」


 その名誉ある名前を聞いた瞬間、うっかり大声で叫んでしまった。

 いや、叫ばずにはいられない。


 ライムハルト殿下といえば、王子でありながらギルド冒険業を趣味で行っている、少し変わったお方だ。

 だが、その功績はずば抜けて高く、ソロで一流冒険者が引き受けるような依頼をこなしてしまうと聞く。

 しかも誰かとパーティーを組んだこともなかったはず。


 もちろん遠く離れたこの街にも、ギルド界ではその名前を知らない者はいない。


 ユメでもみているのだろうか……。

 ほっぺをグイッとツネってみたが、痛さは本物だった。

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