第6話 家の建設

「デイルムーニ王国のうち、俺が所有していた建物は全てレレーナの魔法で収納した。今日はそれを指定の場所に配置していってほしい」

「承知しました」


 朝、日の出と共に起きて、軽く食事を済ませる。

 早速本格的に国づくりが始まるわけだが、作業は簡単だ。


「お父様が所有する物件をたくさん持っててくれたおかげで建物に関しては十分足りそうですね」

「当たり前だ。むしろ、デイルムーニ王国の街並みが異様に変化した。あれだけ派手にやってもドックスという殿下は何も文句を言ってこないのだな……」


 私の収納魔法で、デイルムーニ王国の約半分近くが空き地と化してしまった。

 土地もお父様が所有していた場所である。

 そのためデイルムーニ王国の法律上では、国が文句を言ってくることもできないが、さすがに何かアクションがあってもいいのではないかとも思ってしまった。


「ドックス殿下は外に出るのを本当に嫌っていましたからね……。部下達が抗議してくるかとも思いましたけど」

「まぁそれだけ指示もできない無能なのだろう。だが言われたところで止める気もなかったが」


 今回に関しては何も言われなかったこと喜んでおくべきかもしれない。

 余計な手間が省けたというものだ。

 ドックス殿下が何も指示できなくて助かった。


 私は、早速収納していた家や建物をどんどん出していく作業を開始した。


 ♢


「まさか……あっという間に街っぽくなってくるとは……」

 お父様が用意してくれた細かい地図を参考に、私は収納していた家や建物を次々と指定箇所に出していった。


「作業としては特に大変ではないので、今日中には全て配置は終わるでしょう」

「レレーナの収納魔法は規格外だということがよく分かった。だが無理ないように自分のペースでやってほしい」


 いや、今日中には全て配置しておいて、移住した全員が元の家で寝れる環境にはしておきたいと思っている。

 それに、他の人たちも国を作るために作業をしているのだ。


 結界の範囲内にもなっている高原まで足を運び、今後農園として作物を収穫できるように開拓してもらっている。

 他にも、街となる場所の草を刈ったり馬の世話、それから馬と一緒に連れてきた家畜の世話もしてもらっているのだ。


「全員で協力しているんだから、私も頑張らなくちゃ!」


 収納魔法をひたすら発動していて少しだけ疲労を感じてきている。

 お父様の言うとおりに休んだ方がいいかもしれない。

 だが、やはり聖女の使命として、命をかけてでもやらなければいけないこともあるのだ。


「ふぅ……あと少しね……」


 少しばかり目眩がする。

 いくら消費魔力がほとんどないとはいえ、同じ作業の繰り返しを休むことなく発動していたから疲れたのかもしれない。


 残り1割程度で全ての配置が終わるのだが、身体が重くなってきてしまった。


「レレーナ! 今日はここまでだ」

「いえ、あと少しで終わるので……」

「これは俺の命令だ! 本来ここまで10日を目標にしていたのだぞ! レレーナは頑張りすぎだ。いい加減に休め!」


 お父様がやたらと怒ってくる。

 とはいえ、私もかなりフラフラになってしまっているのでお言葉に甘えることにした。


「残りの家は……」

「なぁに、十分過ぎる出来だ! これだけ家も建物もあれば皆で協力すれば全員泊まれるに決まっているだろう」

 

 私は一安心して、少しだけ目を瞑った。

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