第2話 お父様に相談した
「そうか。キャルム陛下がどうしてもと言うからレレーナを婚約者として認めたのだが……陛下の息子は相当なバカのようだ。大変な想いをさせてしまいすまなかったな」
「いえ、私は別に……」
次期国王候補の人間をも簡単にバカと言ってしまうお父様。
別にお父様のことを責めるつもりもないし、仕方がないことだと思っている。
今までドックス殿下は、世間に名前だけ知られていたものの、人柄や顔は非公開だったのである。
それに陛下の頼みであったから、お父様といえど断りきれなかったのだろう。
「さて、レレーナをここまで傷つけた罪は重い。そこで俺は国を相手に戦おうと思っている」
「やはりそうなりますか」
どうやら私の予想通りだ。
国を相手に文句を言って、国からの追放を取り消しにしてくれるのだろう。
そうすれば、たとえドックス殿下と結婚しなくとも、魔女の力を使って住民の力になれればいいのだから。
王族と結婚したときのメリットは、大々的に力を発揮できて情報もいち早く入手できると思っていたくらいである。
……おっと、お父様の話も最後まで聞かないと、私もどっかの誰かみたいになってしまうな。
「一緒に国から追放されようではないか」
「え!?」
私の予想していることとは全く見当違いのことを言い出した。
一体何を考えているんだ!?
「国と戦うと言っただろう。国から追放されて自由の身になり、新たに国を作ってしまおうと言っているのだ」
「正気ですか!?」
デイルムーニ王国は王都こそ広く、頑丈な鉄壁に囲まれた要塞国家だが、これが国の領域全てである。
外はどこの国の領土でもない荒野のような世界だ。
何故ならば王都の外は、危険なモンスターが生息しているし、人間が安全に住むことができない。
「この国のすぐ近くに新国家を設立することにしよう。なぁに、そこまでのルートを安全なものにすれば勝手に人が集まることになるだろうよ」
「と、いいますと?」
「簡単なことだ。この国はいずれ滅ぶ」
簡単に言い切ってしまった。
確かにお父様の納税額は国全体の半分近くにもなる。
その納税者がいなくなってしまえば、国も今まで通りに機能しなくなるだろうし、何よりも……。
「ドックスだったか。あの者をある程度知っているレレーナから見て、国王としてやっていける器を持っているか?」
「滅ぶでしょうね……」
「そういうことだ。あくまで自分の身は自分で守るという精神で俺も追放されようと言っているのだよ」
簡単に言っているが、今まで稼いできたお金も名誉も全て捨てることになる。
お父様は無駄になるような行動は絶対にしない人だ。
全てを失ってでも国を出たほうが良いと判断したのだろう。
「私の婚約破棄がなかったら国を出ない判断をされていましたか?」
「おそらく。だが、話を聞けたおかげで早期発見ができ、早い段階での決断ができた。ある意味ドックスには感謝かもしれんな」
ここまでの発言を聞いていると、ドックス殿下の行動が全てマイナスに働いているような気がしてしまう。
いや、変なフラグみたいな発言をするのは控えておくか。
「残ったデイルムーニの金は全て使ってしまおう。残っていても無駄になるからな。今まで働いていた従業員たちへ次の働き先までの猶予期間として二年分の給料、それから土地もその者達に譲渡してしまう。残った金で移動に必要な物や保存食、馬車の用意などをすれば使い切れるだろう」
「今年払う納税金は?」
「そんなもん知らん!! 国にビタ一文払うものか。国を出たあとも請求してくるならば国を相手に戦争でもしてやろう」
お父様は言い出したら聞かない。
今回は相当怒っているのだろう。
「確か俺が払った去年の納税額は、総税収の60%と言っていた。来年どうやって国が機能するか見れないのが残念だな」
お父様はとても楽しそうに語っている。
対して私は、苦笑いしかできなかった。
「お父様も国を出るとなると、一緒に出たいと言う人が増えそうですね」
「断る必要もない。来るもの拒まずの精神でいく」
翌日、お父様は早速全ての店を急遽閉じると宣言し、従業員たちには話していたとおりに高額の慰謝料を支払うことを約束したようだ。
そして、私の予感は的中した。
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