婚約破棄と追放された聖女は、国を出て新国家を作っていきます〜セッカチな殿下の身勝手な行動で国は崩壊しますが、もう遅いです〜
よどら文鳥
第1話 婚約破棄され、追放命令までされた
「聖女レレーナ=リンドバレルよ、我慢の限界だ。婚約は破棄した上で、お前だけは国から追放する」
突然、王室の応接室に来るように命じられた。
なにごとかと急いで来てみれば、デイルムーニ王国のために政略結婚しようと言ってきた相手が、目の前で怒鳴っていた。
「なんですって!? ドックス殿下、正気ですか!?」
「当たり前だ。お前は聖女と言いながらいまだになにも役に立っていない。それならば結婚する価値などない。私は国の役に立ってくれる者を嫁に迎えたいのだからな」
国のためと表向きに言っているのは結構。
だが次期国王陛下になる可能性があるかもしれないドックス殿下は、セッカチで頭の中もお花畑である。
今回の婚約破棄も、現在他国へ出張中の国王陛下には告げず、ドックス殿下の考えだけで一方的に言っていることなのだろう。
それにドックス殿下は肝心なことを忘れている。
「婚約破棄され国を出るように命令されたことは、お父様に告げることになります。そうなると――」
「ああ、そういう話はいらんいらん! そうやって私を脅そうとしているのが見え見えなのだよ。そういうところも気にくわん」
いや……、話は最後まで聞いておいたほうがいいと思う。
次期国王になろうとしているくせに、お父様がどれだけ国に納税しているか知らないのか。私が国を出ていくとなれば、お父様も黙ってるわけがない。
「それにレレーナは特別な聖女なのだろう? そんな力を秘めているというのに何も力を使っていない。お前本当に聖女なのか?」
「それは陛下に事情を説明──」
「言い訳するでない!」
話を聞こうとしない殿下に呆れてしまう。
聖女として力を使うのはドックス殿下と結婚してから、一気に解放すると本人にも言ったはずだ。
どちらにしても、今は聖なる力を充電中だから使えないことは事実。
だが、充電が完全に溜まったところで一気に解放し自分自身に加護を与えれば、今までどの聖女も成し遂げたことができなかった魔力を秘めた『魔女』へと昇格できる。
魔女にさえなってしまえば、魔力というこの世界に存在することのなかった力で、国のためにあらゆることができるようになるはずだ。
私はそういう道を選んだのである。
「念のために最後にお伺いしますが、国王陛下はこのことは知ってのことですか?」
「やはりバカ聖女だったのだなレレーナは。父上に言う必要もない。何故ならば父上も無能な女などと結婚は望んでいないからな。私がいち早く察知し、父上には帰ってきてから報告する。こうすれば私の判断力も評価され、より有利に国王になれるのだよ。つまりお前は私を優位にさせるための道具として役立ってもらう」
「はぁ……」
私は大きなため息を、殿下にもわかりやすくはいた。
ここまで無能だとは思わなかった。
むしろ婚約破棄されて助かったと思ってしまうほどである。
「わかったらとっとと支度してお前だけは国から出て行け」
「何故国を出て行けと命じるのです?」
「聖女だと嘘をつき国を騙そうとした罪に決まっているだろう」
ここでしっかりと説明すれば、流石のバ……頭のおかしい殿下も理解できるかもしれないと思ったが、何も言わずに首を縦に振って同意した。
「わかりました。では準備して10日以内には国を出て行きますね」
10日と言っているのには理由がある。
聖なる力の充電が溜まって魔女へと昇格できるのが体感的に7日後なのだ。
念のため数日余裕をもたせておいたのと、許可が得られるのがこのくらいだろうと想定した。
「ふむ。素直でよろしい!」
よし、うまくいったようだ。
おそらくドックス殿下は、この後陛下からこっぴどく叱られるだろうが、もう知らない。
更にお父様がこの後どういった行動に出るかもなんとなく想像がつく。
お辞儀もすることなく、応接室を出ていった。
「さてと、まずはお父様に報告しましょうか。きっとお父様は国を相手に敵対して陛下に文句を言ってくれるでしょう」
婚約破棄されたストレスは少しはあるが、すぐにでも行動ができるくらいの余力はある。
国を出ていくと言っても、周りに国などないからなぁ。
ともかくまずはお父様に頼りましょうか。
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