第19話 複製と修復
「ところで何故【複製】と【修復】なのですか?」
俺もそう思った。先に竹嶌さんが声を出してくれたが、実績のある【抽出】スキルじゃないのには理由があると思うのは確かだが、無い物を得るのに何を贅沢と思うだろうし有用なスキルに間違いはないし、特に【複製】スキルは竹嶌さんが求めてやまないスキルだ。
「そうでした!僕ついうっかり説明していませんでしたね!実は実験の第二段階は僕自身が行うつもりなのですが、スキルホルダー制約が厳しく、まああの男女でのあれはまだ学生の間はしなくてもいいのですが、カードへのスキルを注入する作業はどうしても避けられないのですよ。それを行うと第二段階の実験が成り立たないものですから、お2人には実験に協力して頂き、私の注入したカードを【複製】及び、使用済みのカードを【修復】して頂き、私の【抽出】カードを増やしてほしいのです。」
「市場に出回っているカードを回収すればいいのでは?」俺はそう思ったのだが、
「どうにも私と他人の抽出スキルには違いがあるようで、適当なカードを回収しちゃうとばれてしまう恐れがあるのですよ。そして今行おうとしている実験が成功すれば、世の中がひっくり返る可能性がありますから、当面は情報を流さないようにしないといけませんからね。」
俺は改めて部屋を見た。
部屋というのはどうなんだ?教室丸ごとより遥かに広く、特別教室というべきか?図書室のような広さがある。
そして扉があちこちに。
「ここには20人が寝泊まりできる個室があり、浴場は大小合わせ2つ備わっています。小さい方は私と岩ケ谷さんが使用し、大きい方は女性が使用します。トイレは個室に備わっていますし、作業中にも利用できるよう、洗面と合わせて設置していますから24時間気にする事なく利用して下さい。」
一体何が目的でこのような部屋がスキル学校には備わっているのだろう。
「岩ケ谷様、ここに集った補佐役は皆、それぞれ今後仕える人に絶対服従ですし、スキルによってここで見聞きした事は一切口外いたしません。口外以外にも筆記、ジェスチャーその他考えられる情報漏洩は出来ないようになっておりますからご安心下さい。そして今後私共は岩ケ谷様及び竹嶌様が結ばれるその日までしっかりサポートしてまいりますから!あとその・・・・国で定まれているのですが、全員岩ケ谷様がスキルホルダーとなった暁には、子を授かりたく存じますので、ぜひ頑張りましょう!」
・・・・周囲にいる俺好みの女性達。
そう言った役目があるのか。
だが今聞き捨てならない事を言っていたぞ?
俺と竹嶌さんが結ばれる?いやあ、ないだろう?え?聞き捨てならない事ってそこだけじゃない?だってさあ、いきなりインパクトのある事を言われたんだ、後の事を聞き逃しても仕方がないじゃないか?
「竹嶌さん、今不快な思いをしたんじゃないかい?」
「岩ケ谷先生と私が結ばれる・・・・私が・・・・きゃああ!!!!」
やっぱり拒絶するよなあ?
「竹嶌様、それでは想いは伝わりませんわ。」
想いって?
「そ、そうね。岩ケ谷先生、是が日にも成功させ、私を受け止めてほしい。」
「あ?ああ、そりゃあ成功させたいが、俺、竹嶌さん程の実力者を受け止められる実力はないと思うぞ?」
うん?何だ?周囲の空気感が変わったぞ?そんな事より開始しよう。
「あーうん、多分3年前の僕のような状態ですねえ。まあ竹嶌さん、いずれは分かってもらえると思いますが、ハンターを拗らせた男性って軒並みこんな感じと聞いていますので、まずは結果を残しましょう!」
ハンターを拗らせたって・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「では細かい説明になるのですが、どちらかがどちらを得てみますか?」
そりゃあ竹嶌さんは【複製】スキルだろう。そう思ったが竹嶌さんの答えは違った。
「私は【修復】スキルを得たい。岩ケ谷先生には【複製】スキルをお願いしたい。」
「どうして?あれほど求めていた【複製】スキルじゃないか?」
俺は思わず強く聞いてしまった。そして俺の視線を真っ向から受け止める竹嶌さんは、先程とは違い真剣な眼差しだ。
「あんな思いは二度としたくありません。【修復】スキルがあれば致命傷であろうとも完全に元へ戻せます。【複製】スキルは物にしか効きませんから。」
何の事だ?
俺は知らなかったが、あの時の怪我は深刻な状態で、色々なスキルカードを用い俺は回復したという話だ。
そうか・・・・俺、皆の足を引っ張りまくりじゃないか。
もっと高みに・・・・だが竹嶌さん程になるのは・・・・厳しいなあ。
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