実験
第16話 遂に俺は
目覚めると竹嶌さんが隣にいた。
「気が付きましたか?」
・・・・気が付くも何も全く覚えがない。何この状況。
「すまんが何も思い出せん。」
「え?まさか記憶喪失ですか?」
「どうなんだろう?自分の名前は分かるし、竹嶌さんもわかる。だが何故俺はこんな場所で寝ていたのか思い出せん。」
「あーそれはですねえ・・・・」
竹嶌さんの話によると、俺は雑木林でインセント狩りを1人で行っていた所、6名の悪漢に襲われ撃退、その時に受けた頭部への打撃の影響で、街へ戻った所で倒れてしまったらしい。
そして運よく竹嶌さんがいて、事なきを得たようだ。
そうか。俺は襲撃を受けたのか。じゃあその6人はどうなったんだ?
「その後の足取りをたどったらですね、生き埋めになっていた6名を発見し、逮捕しました。以前から素行が問題となっていたハンター達でしたので、今回は証拠もあって逮捕につなぐ事が出来たと警察は感謝していましたよ。」
うーん、そうなんだ?思い出せ俺・・・・何となく思い出せるような気がしたが・・・・あれ?俺確か6人を地中に埋めて、その後どうしたかいまいち思い出せん。
なんか地中に埋めた後、別のインセントと戦っていてその間に窒息死した気がするんだが。
そうだ、その後俺は6名を回収し収納したんじゃなかったっけ?
うわ!俺は人殺しになったって事じゃないか!
「お、俺、人を殺したんだな。」
「あー、岩ヶ谷先生、それ多分一時の記憶混乱ですね。実際頭から下は埋まっていましたが全員息がありましたよ。」
じゃあ俺が回収した死体って?
「実際回収したのは魔物の死体ですね。6名も一命をとりとめ全員生きています。今は全員スキルで拘束されていますからご安心を。」
そっか。俺はまだあっち側に行っていなかったんだな。
一度人を殺すと色々な意味で変わってしまうと言う。
「そ、そうか、俺は・・・・俺は・・・・」
俺は泣いていたらしい。
竹嶌さんが優しく抱きしめてくれた。
俺は震えていた。そして竹嶌さんの体温と心音が心地よく、安心・・・・
『どうですか岩ヶ谷さんは?』
『ああ帯野さん。カードをありがとう御座います。やっと落ち着いたようです。』
『それはよかった。岩ヶ谷さんが悪漢に襲われ酷い目に遭ったと聞いてこうしてここへ連れてきてもらったのは正解でしたね。頭へのダメージは深刻で、脳の一部に致命的な損傷が見つかっていましたからね。修復スキルが無ければどうなっていた事か。』
『まだ一部記憶に混乱があるようです。』
『悪漢を殺したと思い込んでいたようですからね。まあ実際死んでいたんですが。あのまま死んでしまった方がよかったんですけどね。そこは蘇生させて頂きました。もはや生きる屍ですが岩ヶ谷さんの為には生きた姿を見てもらうまでこうして生かす必要があって、全力で生かしているんですよ。まあ内緒ですけれどね。それにしても岩ヶ谷さんは運がいい。このまま1ヶ月程養生して頂き、その後は実験に付き合ってもらいます。竹嶌さんも同じく我々の護衛という扱いにしますから、暫く岩ヶ谷さんの傍にいてあげて下さい。』
俺の知らない所で話は進んでいるようだ。
・・・・
・・・
・・
・
俺は実際目の前で生きている6人を見るまで安心できなかったが、マジックミラー不越しに見た6名は生きていた。
よかった。俺は本当に人を殺さなかったようだ。
この後俺は6人がどうなったのかは知らない。知る必要もないが違う土地の拘置所へ移ったと聞かされ、その後は関心が無くなった。
で、俺はどうやら国立スキル学校に入院していたようだ。
学校なのに入院設備が充実しているとかどうなんだ?
何故?と思うが帯野さんとの約束もあったし、その方がいいとの判断なのだろう。
まあいい。折角だ、もう暫くゆっくりとさせてもらおう。ハンターになってこんなにゆっくりと過ごした事はなかったっけなあ。それに今は竹嶌さんが隣にいる。
それににたまにやってくる美女2人は何者だっけ?帯野さん専任の2人だったかな。
俺からすれば年下だが、帯野さんからすれば年上であろう2人。
何度か顔を見たが会話をした事が無かった。まあそのうち分かるだろう。
「岩ヶ谷さん、どうしたの?」
「ちょっと考え事をしていたんだ。もうそろそろ実験とやらかな?」
「そのようね。私も同じように実験に付き合う事になっているの。まだどんな実験かは聞かされてはいないけれど、切ったりとかそんなんじゃないとは言っていたわ。それに失敗しても特に影響はないし、成功すれば恐らく世の中がひっくり返るような状況になるだろうと言っていたわ。そして帯野さんは自分で試し成功しているので、そこは安心をって。」
彼は何をしたいのだろう。
そして実験の結果、成功すれば世の中がひっくり返るって想像もつかん。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます