第12話 始まる地獄と照らす光
前話で7000PVだったのに、
気付けば8000PV超えてました……
読んでくれた方本当にありがとうございます
さて、今回の話で『復帰に向けて』が一応終わります。
龍星の努力を、そして彼を支える水希をどうかご覧下さい!
では、本編をどうぞ!!
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「 …………………では、始めるぞ。」
と、八乙女さんは言うと、
俺の方に近づいてくる。
横で控えていた香川さんたちも近くに来て、義足の装着の手助けをする。
ーーーー約1時間程掛けて全ての機会を体に取りつけることが出来た。
ようやく終わった、と俺は少し気を抜いていたが、八乙女さんの一言で気が引き締まる。
「本番はここからだよ。さっきも言ったけど、これから1ヶ月の間、君は足を動かそうと意識するだけで、激痛に苛まれるようになる。それに耐えれるかどうか、がまず基本的な問題点だ。
そう言ってもどうせ分からないだろうから、試しに足を動かすイメージをしてごらん。」
その言葉に少し恐怖を感じたものの、
「…………わかりました。」
と言って、右足の義足を動かそうと意識を集中させ、、、、、。
「うわあぁぁぁ!!!!!!!!」
今まで出したこのすらない声量の悲鳴が部屋中に響き渡る。
その痛みは、例えるなら内側から心臓をえぐられるような、頭の中から脳みそをかき混ぜられるような、そんな形容し難い痛みだった。
何よりも恐ろしいのは、ただイメージするだけでこれである。
実際には、義足は1mmも動かしていないのだから。
「………………はっはぁはぁ、これがさっき……言ってたやつか」
「ああ、そうだ。
今、実感してわかっただろうが、少しイメージするだけでこれだけの痛みが襲う。
それは義足を動かすための機会を取り付けた脊椎にある神経が拒絶しているためだ。
だから、それを慣れさせる訓練をしていかないといけない。」
淡々と述べる、八乙女さん。
それを涙目で懸命に堪えながらも見守る水希。
横では和樹さんが握りこぶしにこれでもかと言うほど力を入れ、こちらに視線を向ける。
そんな、彼女らを見て、どうにか気持ちを落ち着かせながら、
「…………………………訓練っていったい。」
「なあに、簡単なことだ。
毎日その義足を動かすようにすればいい。
最初は拒絶するが、毎日やれば約1ヶ月で神経が錯覚してその拒絶もなくなり、痛みなく義足を動かせるようになるはずだ。」
「毎日、これを………………」
俯きながら俺が言うと、八乙女さんは怪訝な表情を浮かべながら
「もう怖気ついたのか?
まあ、お前の覚悟もその程度ってことか。」
そのわかりやすい挑発の言葉に、俺は
「………………その程度って、まだ俺は諦めるなんて言ってないよ。言っただろ。
やるって。たった1ヶ月だろ、それでまた自分で立てるなら、歩けるなら、やってやる。」
それを聞いた、八乙女さんは満足気で言う。
「そうか、ではやってもらうとしよう。
君のペースでいい。1日最低20分だ。その時間の間、義足を動かす訓練をしてくれ。
それと、そこの連れの君たち。」
急に指名されたことで驚く2人。
だが、そんなことは気にせず、八乙女さんが
「もし、九条くんが限界と判断した時はすぐに義足を外しなさい。それと……」
そう言うと、八乙女さんは2人に近づき、
「どうか、一番辛い思いをする彼を助けてあげて。」
と俺には聞こえないほど小さく、でも確かに2人の心に深く届くように言う。
「それで、どうしよか。今日のところはここで残りの時間、訓練する?」
「…………そうですね。お願いします。」
そう言うと、それからクールタイムを置きながら、約5時間かけて、最低時間の20分を何とかやり遂げるのであった。
その間、廊下を通る人達に聞こえるほどの悲痛な叫び声が響いたことは言うまでもないだろう。
ーーーーーー
そこから、俺たちは自宅に戻った。
早めに帰ってきた、両親に病院であったことと義足についてのことを話す。
最初は、和樹さんと同じように猛反対したけど、最後には納得してくれて、協力してくれることになった。
その後に帰ってきた妹の紗理奈に納得してもらうのに時間がさらにかかった。
そして、次の日から正真正銘地獄の日々が開幕した。
その日は、両親が仕事で休み、妹は祝日で学校が休みなこともあって、水希を含め4人で俺のサポートをしてくれた。
義足は案外取り付けがしやすいようにされており、初心者の俺たちでも、それほど困ることなく付け終えることができた。
そこからいよいよ、訓練がスタートする。
歯を食いしばり、覚悟を決め、足を動かそうとする……
その瞬間、再び俺の体を猛烈な痛みが襲う。
「うわぁあああ、んんん……」
必死にそばに準備していたタオルを口に挟み必死に痛みを堪える。
たった1秒が永遠にすら思えるほど長く感じる。普通なら気絶するレベルだろう。
でも俺は必死に意識を手放さないように懸命に耐える。
俺の左手を水希の優しい手が包み込む。
「大丈夫、私がそばにいるから。」
そう言うと、込める力も徐々に強くなる。
それが、俺に耐える原動力をくれる気がした。
紗理奈は俺の背中を一生懸命にさすりながら、頑張って、と俺にエールをくれる。
それが、俺に勇気をくれる気がした。
結局、一日のノルマを達成するのは日が暮れて夕方になるくらいだった。
ーーーーーーー
そこから毎日俺は周りのサポートを借りながら義足を使う訓練をしまくった。
訓練を初めて1週間ほど経った頃、幼馴染の優、舞、悠月が俺の事を聞きつけてくれて、両親や妹が家にいない時必ず、2人以上俺のそばに居るように、仕事や学校を調整して、手助けをしてくれた。
1週間経ち、最初の頃は1秒を永遠に数えるような感覚だったのが3秒ほどなら痛みを我慢できるようになった。
2週間経ち、その3秒が10秒ほどまでに時間が伸びる。
3週間経つ頃には、1分ほどなら顔をしかめずに、足を動かそうとイメージできるようになった。
それでも、俺の右足の義足は動く気配すらなかった。
4週間経つ頃には1時間ほどなら、人とかいわしながらでも耐えれるほどになった。
それでも、義足は動くことはなく、1ヶ月経ったことで、俺は再び、八乙女さんの元へ行くことにした。
ーーーこの1ヶ月の間にも何度か定期的にメンテナンスをしてもらうために、八乙女さんのいる研究所に行っていた。ーーー
今回は、母さんが車を出してくれ、俺と水希、そしてなぜか悠月も同行することに…
まあそんなこんなで研究所に着いた俺たちは八乙女さんのいる研究部屋に向かう。
部屋に入ると嬉しそうな顔でこちらを向き、
「君はほんとにすごい!!
本当に1ヶ月よく頑張ってくれた。」
そうやって八乙女は言う。
だが、反対に俺の表情は暗く、
「でも、まだこの義足を1mmも動かすことができません。」
「……そういうことね。
それは、言っておくがコツがいる代物だからね。」
そうドヤ顔で俺に言う。
「…………コツですか。」
「そう。普通なら私たちは歩こうと思うだけで勝手に足が動くでしょ?
でも、君の場合はちょっと違う。イメージすることは大切だけど、大切なのは明確に意識をすること。どうやって動かすのかを正確に意識することだよ。ほら、試してみて。」
そう言われて、改めて考える。
足を動かす、と漠然としか考えていなかった。どうやって、動かすのか、なんて考えたことは1度もない。
例えるなら、人が呼吸する時、意識して肺や心臓の動きをコントロールするようなものだ。
悪戦苦闘しつつも、明確にどうやって足を動かすのかを意識する。
それから2時間ほど経ち、
義足の右足が自分の意思で動いたのだった。
気づけば、俺の視界は涙でいっぱいだった。
それを隣で見ていた、母さん、水希、悠月はその光景に思わず、頬にたくさんもの雫を流す。
近くで見ていた、八乙女さんも思わず目元を押えながら、こちらに親指を立てて、よくやったと表情で伝える。
涙を拭き、母さんは
「よく頑張ったねえぇぇぇ。」
と震える声で言う。
悠月も
「龍星くぅぅぅん、おめでとうぅぅ。」
と、鼻水まで垂らしながら、俺にそう言う。
水希は
「本当にお疲れ様です。
そして、今まで頑張ってくれてありがとうございます。」
と静かにまだ目に涙をうかべつつどうにか作った笑顔でそう言う。
それから2週間ほど経つ頃には、
手すりや杖を使いながらだが、1人で立つことができるようになった。
地獄の日々の中で小さな希望の光が照らされたのだった。
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(おまけ)
八乙女さんの研究所に向かう当日の朝、龍星の母、百合子は幼馴染3人にメールを送る。
それは、
『今日お昼頃に、八乙女さんの研究所に龍星と水希ちゃんを連れて行くんだけど、誰かもう一人来てくれないかな?』
というもの。
そのメールを見た3人はすぐに近くの公園に集まり、
優 「今回は俺が行かせてもらうぜ。」
舞「何言ってるの。龍星くんたちと一緒に行くのは私に決まってるでしょ。」
悠月「今回だけは譲れないよ。」
優 「2人とも、譲る気はなさそうだな。
じゃあ、あれで決めるしかないな。」
舞「ええ、いいわよ。これで恨みっこなしよ?」
悠月「私もいいよ。絶対に勝つから!」
「「「最初はグー、じゃんけんぽん!」」」
こうして、勝利した悠月は満面の笑みを込めながら、龍星の家にむかうのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
いかがでしたか?
もちろん、全てフィクションですので実際に似たものがあると言う訳では無いので、ご注意ください。
龍星の真っ直ぐな努力がこの結果を生んだのかも知れませんね。
続きが気になる!面白い!と思ってくれた方は、応援、フォロー、☆☆☆などなど、よろしくお願いします!!!
良かったらコメントもしてくださると嬉しいです!!
では次回から新章スタート!
お楽しみに!
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