第6話 抱えている恐怖

新作「超人気俳優が女子高校生を好きになるのはダメなことですか?」始めました!

こちらの方もよろしくお願いします。


この度、素敵なレビューをいただきました!

本当にありがたい限りです。

作者のこの作品が読者様の『大切な物語』になることを願いいつつ書かせて頂きます。


さて、今回の話も少し強烈な内容となっています。その点、ご注意ください。


あらかじめ、この場を借り説明しますが、この物語は、事故で怪我を負った主人公を題材として、書かせていただいてますが、この作品で、事故、障害に関して、読者の方を不快にさせる意図は一切ありません。

もし、この物語を読まれて嫌な気持ちになられるのでしたら、深く謝罪させていただきます。あくまで、フィクションとしてお楽しみくだされば幸いです。


前書きに付き合っていただきありがとうございます。



では、本編をどうぞ!



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「俺は.........ずっと怖かったんだ。」



病室を埋め尽くす静寂の中、水希の腕の中で俺は呟いた。




「.........うん。」


彼女は、俺の言葉にただ頷く。



それがまるで、あなたの言葉を私は全部受け止めるよ、と言っているかのように。



それに甘えるかのように、今まで家族にすら言わなかった自分の将来について話していた。


「......俺さ、将来学校の先生になりたかったんだよ。」




「......うん。」


彼女は静かに頷きながら言う。




「俺が中学の頃かな、やった覚えのない万引きを友達が学校に告げ口して、犯罪者にされたことがあったんだよ。」




その言葉に、彼女は抱きしめていた腕を一瞬震わす。だが、再び力を込めて俺を包み込む。




「………………続けて。」


その言葉を聞き、俺は再び口を開く。


「それでさ、学校に行けば昨日まで仲良かった奴らが俺をまるで、汚い物を見るかのような目で見てくるんだ。」




「ーーー。」


彼女は無言だったが、抱きしめる力は先程よりも強くなる。


それは、龍星の辛い経験を少しでも自分に背負わせてくれ、と言うかのように。




「......でもな、その時家族以外で俺を信じてくれたのが、当時担任の先生だったんだ。ほかの先生やクラスメイトが俺の事を酷く言っても、その人だけは俺を信じてくれたんだ。」





「...いい先生だったんだね。」





「うん。本当にかっこいい先生だった。



それから、しばらくして俺がやってないことがわかって、今まで散々俺に酷いことをしてきた奴らが謝りにきたんだよ。


最初は絶対許さないって思ってた。

だけどさ、周りからは『優しい奴』っていう勝手なレッテルを貼られて、軽く謝ったら許してくれると思われてたんだよ。」



「……」


彼女は、唇を噛み締めて言葉を飲み込んだ。




「それを知ってからかな、俺はもうそいつら

を恨むことを諦めたのは。


そん時からかな、俺は優しい奴じゃないといけないって思ったのは。


そこからは………………

しんどい毎日だよ。



何をやるにしても、勝手にお前ならやってくれる、お前なら大丈夫って言われ続けた。」


震える口で龍星は必死に続けた。




「.........ぅぅ。」


それは龍星の過去を知り、懸命に堪えて出せる水希の精一杯の返事だった。



「そんな時に、担任の先生がさ、俺に言ったんだよ。


『君は、本当にすごい子だね。周りを恨まず、憎まず、自分だけが背負えばいいと考えるのだから。でもね、君の人生は他人のためにあるんじゃないよ。君の本当の優しさは傷つく痛みや我慢する痛みを知っている事だよ

その使い方をどうか間違えないで欲しい』


と言われたんだよ。」



水希はただただ言葉が出てこなかった。



彼が今までやってきた誰も傷つかせないという途方もない道を垣間見て、、。



「そこからだったかな、俺が教師を目指そうと思ったのは。俺が誰かの役に立てると思ったから………………。」




水希は、今の短い会話でも悟ってしまった。



龍星が自分よりも他人を優先して考えてしまう根本が、 今でも変わっていないことに…




そんなことを考えていると、龍星は言葉を続ける。


「だからさ、あの事故の時本当に嬉しかったんだと思う。こんな俺の命ひとつで誰かを助けることができたんだから、、、、、。」


それは心の奥底から考えている本心だというのは明確だった。



水希はその言葉に…………





「......ふ...ない...で。」



龍星はそれを上手く聞き取れず、


「……え。」




すると、水希は抱きしめていた腕を解いて、龍星の顔を自分と向かい合わせるようにして頬を両手で掴む。





「…………ふざけないで!!!」




それはおそらく、廊下まで聞こえるかと思えるほど遠くに響く音量だった。



その言葉に龍星は呆然としていると、、



「…………何がこんな俺の命よ。

あなた、本当にバカじゃないの。」


驚きを隠せない龍星に水希は続けて言う。




「あなたの事を想ってくれる人をバカにしないで!

あなたが今日目覚めるまで、何人の人があなたの事を想ってきたのかも知らないくせに!」


龍星は言葉を紡ぐように、

「俺を心配する奴なんて…………」



それを遮るように、






「247人よ。」







なんの事か分からない龍星は、

「………………え?」




龍星に優しく言い聞かせるように、




「今日まで、あなたの事を想ってこの病室を訪れた人たちの数よ。私は毎日ここに居たって言ったでしょ?

その間にお見舞いに来てくれた人たちよ。


それでも、私が居ない時に来てくれた人を合わせるともっといるよ。」



「………………ほんとに。」


龍星の目から、再び大量の雫がこぼれ落ちる。


「俺を想ってくれる人が…………。」





それを肯定するかのように水希は龍星をもう一度包み込んで、






「それに、あなたの目の前にもあなたの事を思っている人がいることを忘れないで。



これでも、あの日命を救ってくれた時から私はあなたの事を世界で一番大切に想ってるんだよ。


だから、もう自分一人が傷つけばいいなんて考えないで。あなたの不安も苦しみも半分私に背負わせてください。」


そう言い終わると、病室は流星の口をかみ締め泣く音に覆われるのであった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(おまけ)

2人が抱きしめ合っている病室の外で、、、

由里子

「やっぱり、無理させていたのよね。」


「そうだな、これからは俺たちがあいつを甘やかしていかないとな。」


紗理奈

「そうだね……、

悔しいけど水希さんならにぃにも変われるのかも。」


由里子

「そうだね。これは本格的にあちらの家族と話し合いの場を設けないとね。」


「俺が場を作るよ。」


由里子、紗理奈

「「頼んだ!!」」






いかがでしたか?


今後、龍星がどのように生きていくのか


そういった部分も注目してくださると嬉しいです。


面白い!続きが気になる!と思ってくれた方は応援、フォロー、☆☆☆等々つけてくださると作者の励みになりますので、よろしくお願いします。



次回もお楽しみに!!

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