Ꮚ・ω・Ꮚメー(6:この輝きは!)

 メェッ!(この輝きは!)

 メエェ!(レア! いや、違う!)

 メメェ!(エピックパンだと!?)


 どこからかサングラスを出したバロメッツたちが驚きの声をあげます。

 レアなパンが焼けると謎の発光現象が起こるようです。

 光の具合がクラス付与のカードのときとよく似ています。

 バロメッツの反応からすると、レアパンどころでないものが出来ているようですが。

 やがて光が和らいで、湯気と光の粒子が入り交じったようなオーラを放つ六つのパンが姿を現します。

 五つは銀色のオーラ、ひとつだけ金色のオーラを放っています。


「レアパンとエピックパン、なんでしょうか?」


 発光具合と驚き具合からすると、そういうことになりそうです。


 メェ (そのようだ。鑑定してみるといい)

 メエェ(ひとつふたつレアが出来てもおかしくないとは思ったが)

 メメェ(この材料からエピックまで出すとは)


 レジェンダリーベーカーの力が早速火を噴いてしまったようです。

 オーブンから取り出すと、六つのパンが放つオーラは収まり、代わりに小麦の香りが漂いました。

 いきなり手を出すと火傷をしてしまいますので、まずは鑑定、と念じてみます。

 白く光った五つのプチフランスの鑑定結果は。


 秀逸なプチフランス×5

 レアリティ :レア

 品質    :最高

 食事効果  :バイタル2段階回復

        ストレンクス(小・6時間)


 というものでした。

 バイタルは冒険者がどれだけのダメージを受けているかを示す指標で、グリーン、ブルー、イエロー、レッド、ブラックの五段階。

 無傷でグリーン。

 行動に支障の無い程度のダメージを受けるとブルー。

 行動に悪影響のあるダメージを受けるとイエロー。

 戦闘不能一歩手前の段階でレッド。

 ブラックアウトで戦闘不能となり、意識を喪失してホームエリアに送還。七十二時間以内に復活スキルやアイテムの使用がなければ所持PPの半分と引き換えに復活リスポーンという流れになるそうです。

 なお、東京大迷宮での戦闘やトラップなどで受けるダメージはブラックアウトが上限となっており、人が死なないようになっています。

 アンデッド因子感染症や老衰といった東京大迷宮以外の要因による死はさすがに回避不能のようですが。

 今回できあがった秀逸なプチフランスは、食べるとバイタルが2段階回復。

 ダメージ累積状態のイエローからなら全回復、瀕死状態のレッドからでも軽傷のブルー状態まで回復。

 かなり強力な効果ではないでしょうか。


「ストレンクスというのはなんでしょう?」


 メェ (筋力、持久力を一時的に上昇する)

 メエェ(小ならば筋力依存の攻撃力が20%アップ)

 メメェ(肉体労働時の作業効率もあがる)


これも悪くない効果のようです。


 続いて最後の一つ。

 金色のオーラを放っていたプチフランスを鑑定してみます。


 神餐しんさんのプチフランス

 レアリティ :エピック

 品質    :最高

 食事効果  :バイタル全回復

        メンタル全回復

        ステータス異常回復(強)

        ステータス異常耐性(大・24時間)

        ストレンクス   (大・24時間)

        プロテクション  (大・24時間)

 

 大変なことになっているようです。


 メェ (プロテクションは防御力アップだ)

 メエェ(大だと二倍程度まであがる)

 メメェ(攻撃力と防御力が二倍になってステータス異常を八十%の確率で防ぐ)


 小麦粉とイーストと塩と水で作れて良いものではない気がします。


 メェ (問題は、ステータス異常回復の(強)だ。大抵のステータス異常を回復するんだが)

 メエェ(アンデッド因子感染症に対する効果は不明だ)

 メメェ(効くかも知れないし効かないかも知れない)


「過去に試した事例がない?」


 メェ (そういうことになる。安全策をとるならバザールに出すのも手だ)

 メエェ(相当の高値になるはずだ)

 メメェ(万能薬はともかく因子抑制剤の購入予算になる)


 誰も試したことがないので、効くとも効かないともいえない。

 上手く行けばアンデッド因子感染症を回復できるが、無駄になってしまう可能性もある。

 売りに出して万能薬やアンデッド因子抑制剤の購入にあてたほうが堅実なようですが――。

 ここは。


「食べてみます」


 メェ (分の良い賭けではないと思うが)

 メエェ(バザールに出したほうが確実に延命につながる)

 メメェ(それでもやるかね)


「生まれて初めて焼いたパンを、いきなり売りに出す勇気はありませんから」


 鑑定結果はともかくとして、どんな味がしているのかもわからないものをいきなり売りに出すのはどうかと思います。

 エピック級の食べ物をいきなり口に入れるというのも、別の意味で勇気が必要ですが。

 ウォーミングアップというのも変ですが、レアの秀逸なプチフランスをひとつ食べてみることにしました。

 焼きたてのパン、と言う言葉の響きはおいしそうですが、オーブンから出した直後となるとさすがに熱すぎますので、発酵用アイテムボックスを使って一時間分寝かせます。

 加速機能を使っているので実際の所要時間は五分程度。

 時間感覚がおかしくなってきます。


 メェ (折角なのでご相伴にあずかりたい)

 メエェ(秀逸なプチフランスをひとつ譲ってもらえるだろうか)

 メメェ(八千PPでどうか)


「材料費や場所代もいただいていますから、代金は結構ですよ」


 メェ (気持ちはありがたいが)

 メエェ(我々はナビゲートモンスターなのでね)

 メメェ(ダンピングをするわけには行かない)


 立場的にただには出来ないということのようです。


「わかりました、八千PPでお譲りします」


 メー (よし、商談成立だ)

 メエェ(早速振り込んでおいた)

 メメェ(所持PPを確認してくれたまえ)


 ステータス画面を開いてみると『8,000PPが振り込まれました』というメッセージが表示され、所持PPが108,000に増えていました。

 初心者が生まれて初めて焼いたパンひとつで受け取っていい額には思えません。

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