浮気する心理を辿ったら真理に辿り着きました


激動の一夜が明けた月曜日、全く眠れなかったものの、俺はしっかり登校した。


俺達は付き合っていることを秘密にしている関係上、学校ではあまり話すことがない。

クラスも違うため、美玖とどんな顔して会えばいいかと悩むことがないのが救いだった。


これからどうしていくか一晩考えたが、結論は出なかった。

美玖と別れて、美優さんと付き合ってしまうのが一番なのは理解している。

でも俺は浮気して浮気されても尚、

美玖のことが好きなのだ。

未練がましいが、幼馴染期間も含めると10年以上も一緒にいる人のことを簡単に切り捨てられる程サバサバした考えではいられない。


...はぁ。とりあえず美玖がいつから浮気していたのかが知りたい。

次に会った時の美玖の反応をまずは見極めることにしよう。

幸い時間はある。

次に会うのは再来週だから───


[今日沙耶香に頼んでアリバイ作ったから、

放課後久しぶりにお家に行ってもいい?]


そんなことを考えていた俺に美玖からの

まさかのお誘いの連絡がきてしまった。


確実にいつもと違う。

俺と美玖は最近、平日にはあまり会わない。

今週の土曜日が美玖の都合でダメになった埋め合わせだろうか?


勿論最悪も考えている。

もしかしたら彼氏ができたとかで振られてしまうのかとかな。

──いや、むしろそっちの方がいいのかもしれないな。

下手に二股かけられるよりも、既に事後とは言えきっぱり関係を断ってくれた方が誠実だ。


[いいよ。また放課後]


暫し考えたが、会うことにした。

ある程度覚悟はしておこう。



ところで何故ここまで美玖との関係を秘密にしていたのかと言うと、原因は美玖の両親にある。


美玖の両親は裕福な家庭だ。

対する俺は片親で、俺自身の素行が少々悪いこともあって俺は美玖の両親にあまり好かれていない。


昔から散々俺と関わるなと両親に言われているらしく、付き合う前──中学生に上がった頃から既に俺達は幼馴染であることすら周囲に隠すようになったのだ。

何故そこまで徹底するかと言うと、

どこからバレるか分からないためだ。

もしもバレたら強制的に別れさせられる可能性すらある。

未成年のうちに親に反発するリスクを考え、

一部を除き友達にすら秘密にしている。


ちなみに一部とは俺の母親と、

美玖の親友である深瀬フカセ沙耶香サヤカ、俺の親友の佐々木ササキ小次郎コジロウの3人だけだ。


前者は俺が美玖の家に行けるわけがなく、

よって必然的に美玖が俺の家にくるため言わざるを得なかったこと、

後者は俺と会うアリバイの協力者として、だ。



◇◇◇



「お邪魔しまーす」


放課後、美玖が俺の家にきた。


さて、どうする、どう出る──



「優貴、久しぶりにシよ?」



...ん?



「大好きだよ優貴」



...んん?



「えへへ、幸せ♪」



...んんん?




最中も事後も美玖がめちゃくちゃ甘えてくる。

正直言ってここ最近で一番可愛かった。

昨日俺が見た光景は何かの間違いなのではないかとすら思えてしまう。

いやそれはないけど。

間違いなく美玖だったけどさ。


でも改めて、やっぱり俺は美玖が好きだ。

昨日のことを聞いて、美玖が正直に言ってくれたら許そう。


「なぁ、美玖。昨日は何してたんだ?」


「えっ?...沙耶香と出かけてたよ」


「そっか。どこに行ったんだ?」


「色々だよ!ね、そんなことよりもう一回シよ?」


あ、はい。クロですね。

美玖の両親に向けたアリバイの協力者である沙耶香ちゃんを浮気のアリバイに使うなんて、なんて恩知らずな真似を...。

てか誤魔化すの下手すぎないか?


「色々って?」


「もー!しつこい!下着屋さんとか行ったんだよ。言わせないでよ。そういう優貴は昨日何してたの?」


「えっ?...佐々木ササキと出かけてたよ」


「どこに行ったの?」


「い、色々だよ。美玖、もう一回シよっか」


ふう〜。

まさかのカウンターがきたが

なんとか上手く誤魔化すことができたな。


...いや〜、ね?

そういや俺もクロでした。

やり辛ぇ〜!やり辛ぇよ〜!

いやヤッてるけども!(意味深)

2回戦までヤッてるけども!(意味深)

気持ちいいね!!(半ギレ)



「それじゃあ、またね美玖。気をつけて」


「うん!今日の優貴すっごい優しくしてくれて嬉しかった。大好きだよ」



結局何も聞き出せずいつも通り、いや、

いつも以上にいちゃいちゃして別れた。

今日の収穫は

やたら美玖が甘えてきて可愛いかったことです。


しかしてっきり、もう俺のことが好きじゃないから浮気したのかとばかり思っていたが...。



「浮気した後 彼女 甘えてくる 検索っと」



美玖が何を考えているのか、どういうつもりなのか自分一人で考えててもまるで埒が開かないため、ネットの海の先生方に頼らせてもらうことにした所存である。


「ふむふむ。浮気してる人は罪悪感からパートナーに優しくなると...」



なるほどなぁ、通りで───



(「うん!今日の優貴すっごい嬉しかった。大好きだよ」)



...あれぇ?俺もじゃね?



美玖と俺は特に何の問題もなく付き合っていたはずだ。

それなのに何故浮気をしてしまったのか。

その答えはもしかして既に俺の中にあるのでは...?


勝手に男と女は違うと決めつけていたが、俺が浮気した心理を辿って行けば自ずと答えに辿り着くのではないか?



俺の場合は───



・美玖以外の人ともシてみたかった。

・美優さんが美人でおっぱいでかかった。

・バレなきゃいいと思った。

・でも美玖が好き。

・それはそれとして美優さんとも今後もやりたい。



まぁ細かい理由を省けばこんなところだな。


これを美玖に置き換えてみると──



・俺以外の人ともシてみたかった。

・イケメンさんがテクニック上手い(仮定)

・バレなきゃいいと思った。

・でも俺が好き。

・それはそれとしてイケメンさんとも今後もやりたい。



...やっべぇ。何か凄く納得してしまった。

他人だったらそりゃ仕方ないって思っちゃう。



え〜!でもな〜!嫌だな〜!

なんかな〜!でもな〜!嫌だな〜!


俺が浮気するのはいいけど〜!

されるのはすっごい嫌だな〜!!


だってだって!創作とかでさ!

ハーレム主人公に浮気野郎!

ってヘイト向かないじゃん!

でもヒロインがちょぉーっと

他の男に靡いたらヘイト凄いじゃん!

男はみんなワガママなんだよ〜!!!

だよなぁ野郎ども!?



あぁ、ご先祖様。

俺はワガママなのでしょうか?



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る