居眠り少女は何者なのか?
藤間伊織
第1話
がたんごとんと電車の規則的なリズムに揺られ、眠りについてしまう……。そんな経験が誰にでもあるのではないだろうか。
今の俺もそうだ。必死に睡魔と戦っている。まだ目的の駅まであるし、別段寝てはいけない理由があるわけじゃないがなんとなく抗ってしまう。
そもそも、あの担任が悪いんだ。クラス代表でも何でもない俺に雑用押し付けて……。第一、荷物運びなんて生徒にやらせていいのか?……ぱわはらじゃ……ないのか?
……ぐー。……はっ!寝てた。
気を取り直して愚痴を再開する。
顧問にも手伝いしてたって説明したのに部室の掃除に戸締りさせられた。おまけにスマホを忘れて教室まで戻る羽目に……。
外ももうこんなに暗くなってる。まったく……とんだ……災難……だ。
ぐー。
……んん。また寝てたのか?
どのくらい経っただろう。ぼんやりした目を気合で開けると俺の乗っている車両に人はほとんどいなかった。俺は終点で降りる予定なのだが、見回りの駅員さんに起こされていないということはこの電車はまだ終点に向かって走っているということだろう。
少し眠ってすっきりし始めた頭が肩の重みを感知した。そちらに目を向けると、一人の女性が俺の方に頭をもたれて眠っていた。
俺の頭は即座に混乱の渦に巻き込まれた。今までおじさんには散々やられてきたが、女性が隣で眠っていた試しはただの一度もない。
よくない、とは思いつつその人を見てしまう。周りの席には誰もおらず抑止力となるものがなかったせいもある。俺の責任は50パーセントくらいのはずだ。多分。
よくみるとなかなか、いやかなりの美少女だった。歳は俺とそう変わらなそうだ。すやすやと寝息をたてて眠っている。あ、ちょっぴり髪からいい匂いがした……。って、これじゃ俺が変態みたいだ!断じてそんなことはない!ただ、年頃の男の子なだけで、犯罪行為に手を染めたわけでもないんだから、不可抗力だ!ぶんぶんと首を振りたい気持ちを抑えもう一度目をやると、安らかな寝顔が見えた。警戒のけの字も知らないようなあどけない少女だ。その寝顔を見ていると、純粋に癒される気がした。心の中でうだうだ言っていた自分が馬鹿みたいだな、と小さくため息をついて最小限の動きで元通り前を向いた。
俺が寝てしまったら姿勢が崩れてしまうかもしれない、と意識すると眠気は訪れなかった。なるべく少女の方は見ず、動かないようにしていたが、ふいに首元にくすぐったさを感じた。髪の毛が変に当たっているのだろうか。そう思って少女を起こさないようゆっくり首を回すと、少女の頭から耳が生えていた。動物の耳が。
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