第2章 草狩市/壊滅した都市

 千は、草狩市くさかりしへとやって来た。草狩市は海に囲まれており、他の都市とも接点が無い為、千達にあまり情報が入って来ない。なので千は草狩市についてはほとんど知らない。耳のデバイスで検索しても、ほとんど情報が無い。

 

 千の周りには、手入れされていない野生の森が広がっている。千の背後には、ご神木なのかしめ縄の巻かれた太い木がある。近くには、倒壊した神社がある。


 千は周りを見渡す。すると猫の暗魔に囲まれている事に気付く。猫の暗魔は、人並みに大きい猫の姿をしている。


 魔機を具現化し、戦おうとする千。するとどこからか飛んできた矢によって、暗魔は一体、また一体と倒されていく。これをチャンスと捉え、千は残りの暗魔を倒す。


 猫の暗魔を倒すと、男性が木から降りてくる。男性は流鏑馬駆やぶさめかける。駆の魔機は馬をモチーフとした弓だ。

 駆は草狩隊の隊長である。


 駆は、草狩隊本部へ戻るところだという。千は、駆に本部へと案内してもらった。



 

 千達は草狩隊本部へと着く。本部は、倒壊したショッピングモールのようだ。


 本部の中には住民がいる。駆によれば、ここにいるのは避難してきた人だという。

 「避難」という言葉が気になり、千は駆から草狩市の現状を聞く。


 草狩市は暗魔によって滅亡した。今も街や森には暗魔がうろついている。

 生き残った人々は草狩隊本部に避難した。草狩隊は普段は本部を守っている。たまに駆が外へ出て、生存者を捜している。


 草狩隊は駆と小鳩舞結こばとまゆの2人だけになってしまった。草狩隊は、草狩市を守れなかったのだ。

 千は駆に、協力する事を決める。




 駆に案内されて、千は屋上へとやって来た。屋上には畑がある。畑には、野菜が植わっている。

 

 駆は、舞結を紹介する。舞結の魔機は鳩をモチーフとした手甲だ。


 舞結は普段は食料を育てている。壊滅する前の草狩市では、農作が盛んだったという。


 舞結は、神託を聞く事ができる。神託は、神のお告げだ。主な神託の内容は暗魔がどこから攻めてくるというもの。草狩隊本部は広く、その上暗魔は四方八方から攻めてくる。駆にとって暗魔が来るのをいち早く知れるのは、ありがたいという。


 舞結は一度目を閉じ、しばらくして目を開ける。駆によれば、舞結が神託を受けた合図だという。

 舞結は神託の内容を明かす。神託の内容は、草狩隊本部に暗魔が攻めてくるというもの。


 千と駆は外に出て、暗魔を迎え撃つ。



 

 千達は、猫の暗魔らを倒して、草狩隊本部へと帰ってくる。


 舞結によれば、神は駆と同じように優しい人だという。駆は神の存在に懐疑的な様子を示す。


 駆は、森を捜索するという。千もついていく。


 本部に何かあったら、舞結は伝書鳩で連絡すると。舞結は2人の無事を祈る。


 千と駆は、森へ向かった。



 

 森を探索中、集落に着いた千達。家は木の柱の上にかやぶき屋根がある、たて穴住居のような家だ。


 家はあるものの、人はいない。この集落も、暗魔によって荒らされた形跡がある。


 しばらく探索していると、ロウと会う。ロウは、集落最後の生き残り。集落は、昔暗魔によって壊滅したという。


 日が暮れそうな上、この辺りに暗魔はいないので、千達は滞在を決めた。


 滞在中、ロウにもてなされる。ロウは、飲み物を作り踊りを踊る。


 この飲み物は集落で栽培されている薬草から取れ、疲れが取れるという。千はありがたく飲む。しかし駆は飲まない。


 千達は集落について話を聞く。集落の人々は自然と共に生きており、自然に感謝する。そんな生活を送っていた。


 ある日、ロウは狩りに出かける。意気揚々と獲物を集落へと持ち帰るロウだが、帰ってきた頃、集落は壊滅していたという。


 ロウは2人が寝ている間、見張っていると。その言葉を信頼し、2人は眠りに着く。


 

 

 外が騒がしく、千は目覚める。千は周りを見るが、横にいたはずの駆はいない。

 

 千は家の中を探す。しかし駆もロウもいない。

 

 千が外に出ると、家は猫の暗魔に囲まれている事に気づく。そして駆が、猫の暗魔と戦っている。

 

 千は戦おうとするが、眠気に襲われる。慌てて魔力を使い、眠気を回復する。


 千は駆の元へ向かう。駆はため息をつきながらも、馬を2体召喚する。千達は馬に乗り、森の中に入る。そして木陰に隠れる。


 


 暗魔が追ってこないのを確認し、一息つく2人。


 駆は千が襲われている隙に、逃げるつもりだった事を明かす。


 ロウによると、飲み物には強い眠気を起こす薬草が盛ってあった。駆は得体の知れない物を口にしなくて、正解だったと。

 更に目的の為の犠牲ならやむを得ない。そして自分達の目的は草狩市を救う事。犠牲とは、自分達魔機使いであると。


 千は、駆の考え方に反対する。弱肉強食は自然のルールだが、助け合う事が人間のルールだと。そして、犠牲になっていい人なんていないと。


 ついて来るなら勝手にしろと言い、駆は歩き出す。千は、王の剣のため、ここは我慢して駆についていく事にした。



 

 次の日の日中、千達は研究所に着く。研究所は壊れており、苔や植物が生えている。

 床には実験器具や、資料が散らばっている。


 散らばっている物の中に、日誌がある。千は日誌を拾う。


 日誌の内容は、ここでマギアがおこなっていた暗魔に対する実験。


 研究所が何故滅んだのか、記述を探す千。


 日誌によると、暗魔が1体脱走した。1体なら大丈夫だとたかをくくっていた研究所。しかし暗魔は数を増やし、大量の暗魔を連れて帰ってきた。強い暗魔が生まれれば、強い魔機が生まれる。そう考え、研究員は暗魔を捕獲する。


 しかし暗魔は予想以上に増えた。そして研究所は暗魔に滅ぼされた。

 

 「助けて」という文字より後には、何も書かれていない。


 千は駆が日誌を覗いていた事に気付く。駆は、続きについて聞く。


 千は話す。マギアは研究所のデータを収集すると、研究所を切り捨てたのだ。


 マギアは目的の為なら犠牲はやむを得ないという考えを持っている。それで研究所を助けず、切り捨てたのだろうと。


 駆は悩む顔を見せる。自分のした事が、マギアと同じだったからだ。



 

 千達の前にロウが現れる。千は、ロウの集落が犠牲にされたことを話す。すると、ロウは語る。


 集落が襲われた時、実はロウも敵わなかった。そして、ロウは暗魔にされてしまった。ロウは暗魔になって、全てを知ったという。


 ロウは自分達の集落が、マギアの実験台にされていた事が許せなかった。だから、マギアの研究所を滅ぼした。


 仲間のいない世界など、生きていても仕方が無い。自暴自棄になったロウは魔機を具現化し、襲い掛かる。


 ロウの魔機は狼をモチーフとした爪だ。


 千達は魔機を具現化して、ロウと戦う。


 千達は攻撃しようとするが、ロウは宙返りする。千達の攻撃を、ロウはアクロバティックにかわす。

 

 千達はロウの行動を読み、ロウの動く先に攻撃を当てる。ロウに勝ち、千はロウの魔機の宝石を破壊する。


 ロウは魔機を捨て、狼の暗魔となる。狼の暗魔は、人よりも大きい狼の姿をしている。


 狼の暗魔は猫の暗魔らを召喚する。そして集団で千達に襲いかかる。

 千達は苦戦するも、狼の暗魔達を倒す。


 


 駆は千に、犠牲にしようとした事を謝る。


 駆は何故そう考えたか話す。


 暗魔が町に侵攻し始めた時、駆は1人でも多くの人を助けようと戦っていた。けれども、数人の草狩隊では草狩市の全員を救う事が出来なかった。時には、見逃さなければならない状況だってある。大勢の人を救う事ができても、少数の人は救えなかった。


 そして、犠牲になるのは住民だけでない。駆達草狩隊が戦えば、草狩隊は1人、2人と減っていく。草狩市の為に戦う事は、自分達を犠牲にする事なんじゃないかと駆は考えた。


 住民も草狩隊も救えなかった駆は、全てを救う事を諦めたという。


 日誌には、暗魔の目的について書かれていた。暗魔の目的は王の剣である。王の剣を手に入れ、暗魔の主を倒せば、草狩市は平和になると千は言う。


 駆によれば、王の剣の場所は舞結が知っている。2人は舞結に会う為、本部に戻る。



 

 本部へと戻ってきた千達。無事な事を舞結は喜ぶ。


 舞結によれば、王の剣は神社に奉納されているという。千は、倒壊した神社を思い出す。


 千と駆は、倒壊した神社へ向かう。




 神社には、王の剣が奉納されていた。駆は近付こうとするが、何者かが止める。


 その声と共に、白く着飾った青年が舞い降りる。青年は正体を明かす。


 青年の正体は王の剣によって暗魔の王となり、並行世界を超えた駆だ。今の駆にとっては、未来の自分自身にあたる。


 舞結に神託を与えていたのも、この未来の駆だ。様々な世界を見てきたからこそ、舞結に神託を与える事が出来る。


 未来の駆は舞結に王の剣を使わせようとする。それは、駆が剣を握ると、どの世界も滅びに向かうからだという。それでも、駆は舞結を犠牲にせず、自分が王の剣を使うと。


 未来の駆は、駆が自分に勝ったら認めるという。


 すると、景色が森から草原に変わる。草原の中央に、大樹が立っている。大樹の枝先は、それぞれの時間軸に繋がっているようだ。枝先には、崩壊しなかった草狩市、舞結が王の剣の持ち主になった世界など、色々な時間軸が見える。


 駆と未来の駆は戦う。


 駆は馬を召喚し、馬に乗る。そして馬を走らせ、未来の駆に向けて矢を放つ。未来の駆は地面からツタを生やし、駆の進路を妨害しようとする。駆はよける。

 

 駆と未来の駆は互角の戦いを繰り広げる。


 未来の駆は覚悟を知ったと言い、王の剣を回す。すると、景色が森へと戻る。


 未来の駆は健闘を祈ると言い、消える。


 駆は神社にある王の剣を手に入れる。


 千と駆は、本部へと戻る。


 


 本部へと帰ってきた2人。


 駆は、王の剣を地面に刺す。王の剣の力によって、本部周辺の暗魔に荒らされた自然が回復する。


 舞結は受けた神託を明かす。神託の内容は、剣を狙って、大勢の暗魔が本部へと襲撃するという事。それも草狩市の暗魔全て。


 駆は住民を安全な場所で待つように指示。


 千達は準備をし、暗魔を待ち受ける。


 


 駆と舞結は屋上から暗魔を撃ち、千は門の前で暗魔と戦う。


 しばらくすると、大きな暗魔が現れる。暗魔は猫の暗魔よりも1回り大きい、ライオンの姿をしている。


 舞結は受けた神託を伝書鳩によって拡散する。


 千は伝書鳩を受け取る。伝書鳩の手紙には、こう書かれていた。

「これが最後の神託。草狩市の暗魔を統べる獅子の暗魔が現れた。本部を守りきれ。そして、草狩市を救え」


 駆と舞結は千の元に来て、獅子の暗魔と対峙する。


 千達は、獅子の暗魔と戦う。


 獅子の暗魔は地震を起こす。そして大地を隆起、沈降させる。


 舞結は遠くから暗魔を狙い、鳩を飛ばして攻撃する。千は隆起した大地を飛び移り、斬る。


 駆は王の剣で、獅子の暗魔を倒す。すると、他の暗魔が逃げていく。



 

 駆が各地を回っても、暗魔はいなかった。駆は平和を確信する。


 駆はこの剣があればまた草狩市が襲われると考え、草狩市を旅立つという。


 舞結はこれから、住民と共に草狩市を復興するという。


 王の剣は空間を切り開き、広い図書館へとつなげる。

 千は駆と別れ、広い図書館へと入っていった。

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