第52話 部屋の外で

052 部屋の外で


ボッボッボッと青い炎の明かりが灯っていく。

そして、部屋の奥から黒い影が現れ出でる。


・・・・・・・

一方、部屋の外では、アンジェラが異変に気付き、扉をたたいていた。

「早く開けなさい、あなたたち一体何をしたの!」

「開くわけねーだろ」

「まさか、わざと彼を中に閉じ込めたの!」

「何言いやがる、あいつが勝手にこけて中に入っちまったんだろうが、本当にウトイ奴だよな」

「ああ、そうだ」

「嘘を言わないで、あなたたちがやったに決まっているわ!すごい音がしたじゃないの」

シールドバッシュの音だった。迷宮内で響きわたっていたのである。

「ああ、あの音は、あいつが転んで俺の大事な盾にぶち当たったんだよ」とタンクの男。

「あなたたちを許さない、絶対に訴えてやる」とアンジェラが叫ぶが、扉は開くことはない。


「へへ、何粋がってやがる、俺たちは白金級冒険者なんだぞ、お前は金級だろうが」

「ギルドに訴えるわ」

「どうぞ、お好きなように、聞いてくれるといいけどな」

「はは、全くだ。しかし、奴がこけたことに変わりはない」とタンクの男。


「やめろ、アンジェラ。彼らは領主が招いた冒険者だ。まずいぞ」なんとアンジェラのパーティーのリーダーが割って入る。

「でも、あいつらわざと」

「アンジェラ、聞き分けろ」リーダーは問題を起こす気はなかった。

それも、ただの銅級冒険者のためになど。


それと、以前あった、その男とパーティーを組むというアンジェラの発言をリーダーは知っていた。俺があれほど、アンジェラに目を掛けてやったというのにだ。

ちょうどよかったぜ。

リーダーの男はそう思ったのだ。


「ジン!」アンジェラは、涙を流して扉に縋りついた。

それでも、扉は開かない。

・・・・・・・・

扉の上には、魔法石が存在し、赤く光っている。

中で戦っている場合は、赤く光るのだ。

そして、戦いが終わると赤い光が消える。

そうすると、次のパーティーが入場可能となるのである。

「つまらん事故はあったが、これからが本番だ。気を抜くなよ」死神の鎌の一員が偉そうに言う。

赤い光が消えている。


ジンの消えた日の夜。

アンジェラの所属するパーティーのリーダーは死神の鎌のテントを訪れていた。

「お前も文句を言いに来たのか」

死神の鎌のリーダー。

「いえ、そんなことは全く、実は俺はメルキアを出ようと思っておりまして」

「それで?」

「まあ、あなたたちのギルドに入れてもらえないかと思いまして」

「お前、金級だよな」

「はい」

「まあ、資格はあるとして、それにしても、タダとはいかねえだろ。タダとは」

「もちろん、プレゼントを用意しましょう」

「なんだ」

「アンジェラです」

「ほー」

「どういうこった」

「まあ、プレゼントはこの討伐をクリアしてからにしましょう、ああ見えてもアンジェラは戦力になる」

「そうだな。楽しみにしているぞ」

「おませください、その代わり、私のことをくれぐれもよろしくお願いしますよ」

「プレゼントがうまくいけばな」

「そこは、うまくやりますんで」


このような薄汚い取引が行われていたことなど、アンジェラは知る由もない。

なぜに、このような下種ばかりが生き残るのだろう。

なぜ、このような輩だけがはびこるのだろう。

そして、この会話は聞かれていた。

聴いていたのは、ヤミガラス。


セーフティーゾーンにモンスターは入れない?

いや、こいつらの方が本当の意味での、魔獣(ケダモノ)であろう。

ヤミガラスなど可愛い鳥ではないだろうか。



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