第9話 実証実験
009 実証実験
俺は、復活した。
治療費はやはり金貨5枚。
高額だ。
アンジェラは、すでに迷宮に潜っているので、お礼を言えなかった。
貧乏暇なし。すぐに飯を食う金もなくなる。
冒険者家業とは、このようにして、焦って冒険をして命を落としていく者が多いのだ。
俺は、メルキア大迷宮の5階にきていた。
すでに、レベル18相当の成長をしている俺には、弱すぎる敵だった。
5階層にきて、あの時俺を襲ったのと同じようなゴブリンのチームが襲ってきた。
余程運にも見放されていたのだろう。
長剣の一撃で、三体の首を跳ね飛ばす。
今日来たのは、カードプレイの実験のために来たのだが、再調整された俺では、敵が弱すぎる。「そう、貴様らはでは俺の相手にならん!雑魚めらが」俺は高笑いしそうになった。
レベル18は、人にもよるが、10階層程度は行く。
但し、10階層にはボスが存在しており、一人ではどうだろうか?あまりそういう事例は聞かない。
「カナタ、どうすればいい」
俺はカードナビゲーターをカナタと呼ぶことにした。
対話型AIだと思うことにする。
<カードを選んで召喚してください>
「よし、モンスター召喚!」
カードを場に送り出す要領で、叫ぶ。
ちょっとやってみたかったのだ。
ゴブリンレベル1が出現する。
「いけ、ゴブリン」
「ギギ」緑の小鬼は、同族の迷宮産ゴブリンに突進していく。
レベル5ゴブリンは軽く、いなして引き倒す。
そして、レベル2ゴブリン2匹が襲い掛かる。
パリン!
召喚ゴブリンがあっという間にガラスのように砕けて消滅していく。
「え?」
そう、俺が持っているゴブリンは全て、迷宮1階のゴブリンとスライム、5階で戦えば、容易くこうなってしまう。
「使えん!」
そして、カード1枚が喪失した。
全くの無駄ではないか!
カードプレイヤーレベルが1なのでできることは、カードを使うしかできないとのカナタの回答だ。
『カードプレイヤーレベル1』
その説明には、こう書かれている。
『初級者
初級者は、1日に3枚の空のカードを得る。
カードを使うことができる。』
なのだそうだ。
しかし、レベル2になるためにはカードバトルをしなくてはならない。
簡単にいうと、1階層で戦えば、いい勝負になるのだが、すでに強くなった俺は1階層がいやだった。
スライム、ゴブリン30枚以上が撃破され、ついにレベルアップした。
カードプレイヤーレベル2
『プレイヤーはカードを複数枚使うことができる。』
因みに空のカードは、俺が倒したモンスターを確率でゲットするために必要なものになる。
32000枚程度在庫がある。
ほぼ30年分、つまり俺の生まれてからの日数かける3なのだろう。
なんという、時間の浪費、俺の29年間は一体なんだったのか。
またしても、暗い考えが満ちてくる。
ファンファーレとともに<ゴブリンLV5をゲットしました>とカナタの声が頭の中に響き渡る。
「LV5ゴブリンゲットだぜ!」
待っていろ、ぴ〇ちゅうお前をゲットする日は近いぜ。
何とかタウンのモンスター〇スターのように心の中で叫ぶ俺。
勿論、ぴ〇ちゅうなどいうモンスターはこの世界には存在しない。
ここは、何とか地方ではなく、絶望の狭間、簡単に死ぬことができる恐るべき世界だからである。子供が一人で旅をすれば、さらわれるか、モンスターに食い殺される未来しかない世界である。
戦いの負けは即、死につながる。
いつまでも、バトルをできるわけではないのだ。
即プレーヤーを攻撃してくれるだろう。
あんな優しい世界だったら、どれほどよかっただろう。
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