第5話

わたくしは、ウィルに全てを話した。

1人で抱えるのが辛かった事もあり、促されるままに全て話してしまった。ウィルは、黙って聞いてくれて、全て信じてくれた。


「まとめると、オリヴィアには前世の記憶があるんだな」


「うん」


「前世の記憶によると、この世界はオリヴィアが前世で遊んだゲームに酷似してる。そのゲームは、乙女ゲームいうジャンルで、『キミボウ』というゲームなんだな」


「そう、あってる。正式名称は違うけど、略してキミボウ」


【君の望むままに】

略してキミボウ。文字の読み方変わってるじゃんってツッコミを無視して、公式が言い出した略称だ。


よくある乙女ゲームってやつで、主人公は特待生となって学園に入学する平民の少女、ロザリー。


学園で出会う数々のイケメン達から愛を囁かれ、最終的に1人と結婚する。ハーレムルートはない。だって、この世界は無茶苦茶貞操観念が固いんだもの。完璧な一夫一妻。貴族も、平民もね。


「で、そのゲームとやらでオリヴィアは主人公であるロザリーを虐める役回りなんだな?」


「うん」


「けどよ、オリヴィアはイジメなんてしねぇだろ。そもそも、学園に通えてない」


「きっともうすぐロザリーを……」


「虐めたいと思うのか?」


「思わないわ! そんな事したってアイザックの気持ちはわたくしに戻って来ない。あそこで抱き合ってたって事はもう好感度はマックスよ。あとはわたくしへの憎しみを募らせて、卒業式で婚約破棄されるの。それまでにロザリーを虐めてた人達全員、同時に罰を受ける」


「どんな罰だ?」


「妃になる女性を害したからって理由で、全員処刑されるわ」


「はぁ? 虐めで処刑かよ! 妃になるのはオリヴィアだっつーの! そんなのあり得ないだろ!」


「だって、王族の決定は絶対じゃない! アイザックがわたくしを殺せと言えば、わたくしは殺される。ウィルもわたくしに巻き込まれて殺される! そんなの駄目!」


「オレは絶対にオリヴィアから離れないからな。そんな危ない事になってるなら余計心配だ。極力ロザリーには近寄らねぇ。冤罪なんてかけられねぇように、アリバイも作っておく。だから安心しろ。ゲームの通りになんてならねぇ」


「でも……もうアイザックはロザリーに恋をしてる。わたくしは邪魔者よ……他の人達も……」


「オリヴィアの話では、サイモン達もロザリーに恋をするんだろ? そんな気配、全くねぇぞ。サイモンはロザリーをゴミクズを見るような目で見てるし、マーティン様も王太子を諌めてる。理事長先生だって、ロザリーを特別扱いしてる様子はねぇ。単なる生徒として見てるだけだ。オレの人を見る目が確かなのはオリヴィアも知ってるだろ。エドワード様だけは分かんねえけど、そもそも学園に来てねぇしロザリーと会ってないんじゃね?」


あれ……。本当だわ。ゲームでは、攻略対象は全員ロザリーに好意的な筈なのに……。


「心配なら、サイモンには全て話しても良いんじゃね? アイツは、口が堅い。オリヴィアの為だって言えば、拷問されても吐かねえよ」


「けど……信じて貰えるかしら……」


ウィルはすぐに信じてくれたけど、普通こんな話信じない。自分達がゲームの登場人物だなんて、簡単に言える訳ない。


「ためらうなら、言うのはやめようぜ。ただ、いつでも説明できるように情報を整理しよう」

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