ゴルフ(価値感)

 いつも通り


 嫌いな言葉だ。


 私はドライバーでかっ飛ばすのが好きだ。

 練習ラウンドで9割以上のフェアウィキープ率を誇る。まあ最高ってこと。

 練習ラウンドで大会上位に入賞する選手を上回るスコアを出したことは1度や2度ではない。


 大会が始まれば、フェアウィキープ率5割ほどに下がる。まあ最悪です。

 ミスショットを補うリカバリーは不思議とミスをしない。気楽だからだろう。


 悔しい、勝ちたいと、意識し調整を図るほどに狂う繊細なズレ。

 ミスは1打、1打、順位を落とす。順位を落とせばズレが治る。

 上位に近づけば落ちるの繰り返し。

 そう、身に着けた技術に問題は無く、気持ちの問題なのだ。

 毎回ではないが、気合を入れた時に限って散々な目に合っては心を傷つける。


 父はよくアドバイスをくれる。「気合と根性」これ以外聞いたことがない。

 正直に告白しよう。

 アイアンで父の脛をへし折ったことがある。

 まあ、さすがに反省した。

 道具は大切にしないといけない。


 コーチが2度、3度と変わる。父の転勤の都合だ。


 で、やたら馴れ馴れしいコーチに当たった。

 ソイツは、やたらと喋ってくる。しかもゴルフと関係の無いことばかり。


 ゴルフノートは技術的なことや目標ばかり書いてきたが、ソイツは昨日何食べたの?おいしかった?と聞いてはノートで返事を求めてくるくる。


 キモイ、交換日記でもしたいのか?


 ソイツのレッスンを受けて一か月後、今日はゴルフクラブを握りませんという。

 意味が分からない。


 ソイツは、ゴルフがちょっと上手なメンタルトレーナーだった。

 

 結果は変わった。びっくりするぐらい変わった。

 意識を順序だて分配する。精神も鍛えれば筋肉のように強くなり、反復すればより素早く平常心に戻すことができた。能動的に波止め、明鏡止水を作りだす。体の動きでは無くメンタルを修正して一打に臨む。

 一つ成果が上がれば雪だるまのようにつながり大きく形を成す。筋力トレーニングは、肉体の疲労によるミスを無くす目的が明確になった。今までのトレーニングから生活に至るまで、意味を持ち繋がり道になる。私が今何をすべきかが分かり迷いなくなく進む。

 

 大会ではベストをイメージして動作に移るのが私にハマった。狙えるバーディは全て狙った。対戦相手のことを度外視しできるようになったのが良かったようだ。

 リスクを多く取るようになり、ミスは増えた。負けは続いたが勝利の確信は持ち続けることができた。

 

 初めて大会で勝つことが出来た。

 うれしさより、当然だと思う気持ちが強かった。

 

 結果論だが、きっかけはアレだった。

 父は足のケガより、ゴルフクラブの心配をしている私を見たからこそ、今まで以上に私を応援しようと思ったそうだ。私も父もイカレてる。

 きっと、私が父の足を折るようなヤバさがなければ、メンタルコーチをつける発想も父から出ることは無かっただろう。


 人間万事塞翁が馬ってことだ。

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