第3話 自動車学校で友達が出来た

 強引にお願いして自動車学校合宿をネットで調べたら二十万前後で二週間三食付きと格安の自動車学校を見つけた。但し二週間で取れない場合は延長料金を払い合宿を続けなければならない。一週間後、新潟の自動車学校に入る事になった。三食付きで八畳の部屋を四人で使う事になり、二段ベッドが左右にあり私は上の段を使う事になった。シングルで一人部屋もあるが一番安い部屋にした。翌日から講習が始まり五日目にして練習車で運転の基礎を学んだ。学校に入ってから一周間、初めての休みが取れた。

 当然同じ部屋の人達とは仲良くなり三人の友人が出来て、新潟市内に遊びに出た。やはり海が目の前にあるだけに魚料理が豊富にあった。私達四人は地元の居酒屋に入り、酔った勢いで何故か身の上話に発展した。

 一人は横浜から来たという吉野統子、そして埼玉の大宮から来た沢田千絵、最後に私の住んで居る近くから来たと云う青木桃子は二十七才、ほぼ同年齢のためか意気投合した。気が許せる仲間だから四人とも悩み事を打ち明けた。統子は会社でパワハラに耐えきれず退職し、むしゃくしゃついでに車の免許を取る事にしたとか。千絵と桃子は私と同じく失恋らしい。共通している事は働く気力もうせて現在無職。私はバイトだが似たようなものだ。次は私、陽子の番よと迫られて、ありのまま話した。すると千絵と桃子は笑った。

「なぁんだ一緒じゃん。分るその気持ち。でも陽子には悪いけど安心した。仲間が増えたってね」

「だけど自殺をしては駄目よ」

「私も自殺するために摩周湖に向かった訳ではなく、あの霧が私をこちらへおいでと呼ぶような気がしたの」

「まさかぁ、でも神秘的だし行って見たいな」

「私、摩周湖で霧の缶詰を買って来たの。見る?」

「霧の缶詰? じゃあ中に霧が入っているの」

「霧が入っていたかも知れないけど、いつまでも霧は残らないし強いて言えば摩周湖の空気だけかな。缶詰だから開けたら終わりよ」


「じゃあインチキじゃない」

「ううん、そうでもないの。ほら缶詰に霧の摩周湖の写真が貼ってあるでしょう」

「それがどうしたの」

陽子は千絵に缶詰を渡して、缶詰を握りしめてと伝えた。すると霧の摩周湖の霧が取れて晴れ渡った摩周湖が現れた。

「うわーいったいどうなっているの」

「なんでも缶に特別な細工してあるらしいの」

みんなは盛り上がった。それなら私も行って見たいと皆が言った。


つづく

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