第8話 大、大、大嫌いな言葉
予想外に最悪な展開‥であった。
ミツエと別れたのは三ヶ月前だが、彼女の方はまだ康博に想いがあることをサークルの他の女子から聞いていた。そんな状況で、大島とこの時間まで飲んでいたのだ。どう考えても、いい展開などあるわけがない。
「何時から一緒なんだ?」
「6時くらい」
「お前も明日試験だよね?」
「うん」
「もう終電ないだろ?」
「うん」
「どうするんだよ?」
「知らない」
一度は付き合った女性だ。しかも、こんな夜遅く‥心配しないわけがない。
しかし康博は、相手のことも考えずにこういう甘えた言葉を口にする女が大嫌いだった。だから冷たく「じゃあね」と電話を切ろうとした。
「待ってよ」
「なんで?」
「どうして切るの?」
「用事はないんだろ?」
「私と麻衣ちゃんだったら、麻衣ちゃんの方が大事なわけ?」
「そーいう取り方しかしないんだな」
「だって、そうじゃない」
「明日、試験で忙しいんだ」
「私のこと嫌い?」
「好きじゃない」
「‥‥」
「もういいかな」
「待って!」
「なんだよ」
「私をこんな風にしておいて、別れたらもう知らんぷり?」
「そーいう言い方、よくできるね」
酔ってることは知っている。めちゃめちゃ考慮しよう。でも、康博はこういうことを言う女は、大、大、大嫌いだった。友人の彼女であれば「女の子らしいね」とか言って平然としていられるが、自分と関係がある女性、となると話は別だ。
「ちょっと大島さんに代わってくれる?」
「どうして」
「家まで送るように頼むから」
「やめてよ」
「じゃあ、自分で頼みなさい。そして、ちゃんと家に帰ること」
康博は、ミツエの返事も聞かず電話を切った。
麻衣はずっと英語の文法を筆記していたが、康博が電話を切ると顔を上げた。
「一体、なんだって言うの?」
麻衣は麻衣で、何やら腹を立てている‥
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