第7話 元カノ登場!
康博は、スマホの表示を見て眉をしかめた。
麻衣が咥えた煙草に火をつける。
「人のこと言えないけど、誰ですか?こんな時間に」
「大島さんだ」
康博の一つ上の先輩。
俺は芝居で生きていく‥らしく、就活期だというのに部室に顔を出す4年生は大島くらいだ。面倒見がよくサークルの後輩からは面白い先輩として慕われている。
ただその手の輩は、一転すると、この上なく面倒なキャラクターにもなりうる。
今晩の展開を考えると、康博はもうその嫌な予感しかしなかった。
ピピピピ ピピピピ
「出ないんですか?」
「出るよ」
この時大島からの電話に出たことを、後に康博は死ぬほど後悔することになる。
「もしもし」
「康博ちゃん?」
第一声で嫌な予感が的中したことを悟った。あきらかにイイ感じに酔っている。
「どうしたんですか、先輩」
「今サークルの連中と飲んでてね‥って言うか、お前、麻衣ちゃんの部屋で何やってんだよ?」
「だいたい想像つきますけど、誰に聞いたんですか?」
「タケオ」
「ですよね」
「どういうことなワケ?」
「タケオに聞いたと思いますが、試験勉強なワケです」
「らしいな。それはそれでいい。大いにやりたまえ」
康博は、大島の芝居掛かった台詞を聞いて、そういうことか、と思った。
「今日ずっとタケオと飲んでましたね?」
「鋭い!」
「もしかして杉本もいませんか?」
「お前、超能力者か?」
だいたい見えた。タケオも杉本も、大島にハッパをかけられて、麻衣に電話してきたのだろう。好きならドーンと当たって来い!とか何とか言われて‥
「たぶん澤藤も合流してますよね」
「おう、さっきタケオが帰って来た時一緒に来た」
康博は麻衣に ”すぐ切るから” とサインを送り、シメの言葉を切り出した。
「みんなもう帰れないと思うんで、よろしく頼みますよ」
「タケオは澤藤が別の店に連れていくらしい。杉本は貴重なんで、朝まで俺の部屋で飲もうかと思う」
「安心しました。では失礼し‥」
「待て」
「はい?」
「もう一人いるんだ」
「誰です?」
「代わっていいか?」
「‥‥」
「代わるぞ」
しばしの沈黙の後に、女の声がした。
「もしもし‥ミツエです」
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