第12話 対スライム その6
「でかしたっアレクシィっ!」
ーキィィィンッッ!!ー
甲高い金属音と共に、レインズの剣がスライムの巨大な核を貫く。
ーパキィィンンッッ!ー
突き刺さった剣を中心に、巨大な核に放射線状にヒビが入り、砕け散る。
「ぐわっ?!」
砕け散った破片の一つが、レインズの左目に突き刺さる。
「また左目かよ、くそっ!」
レインズは己の不幸に悪態をつくが、今はそれどころじゃないっ。
巨大スライムは断末魔の叫びを上げる獣の如く、体を激しく揺らして暴れる
スライムに不釣り合いな魔力を抑え、コントロールしていた核が砕けたため、
体内の魔力を制御出来ず、その巨躯を維持できないのだ。
体のそこかしこが膨張と収縮を繰り返しす。
膨れた体の一部が巨大な水の#腕__かいな__#となり、レインズ目がけて振り下ろされる。
「うわっ!」
間一髪、水の塊の一撃を避けると、レインズは距離を取る。
「これじゃ、近づけないっ!」
鮮血が溢れる左目を物ともせず、果敢にもスライムとの距離を詰めようと試みるが、両手を振り回すように暴れるスライムに近づけない。
「クソッ!もう核も砕いたんだっ!
いつまでもアレクシィを飲み込んでるんじゃ―…ないっ!!」
無意識だった。
レインズは掌に魔力を集中させ、その手を横薙ぎに振り払った。
ーゴオォォォッッ!!ー
轟音と共に、見たこともないような巨大な炎の塊が、暴れ狂う巨大スライムに向けて放たれ、
ーじゅぱぁぁっ!ー
凄まじい水蒸気と共に、あの巨大なスライムの上半分を蒸発させた。
「なっ?!なんだっ今のはっ?!」
レインズは自分の右手を見る。
「お、俺か?俺が…出したのか?あんな巨大な炎を…?」
レインズはあまりの事に呆然と右手を眺めたまま立ち尽くす。
一方スライムは、必死に自身の魔力を制しようとしていたが、体の半分近くを吹き飛ばされたことで動きを止めー
ーパアアァァァァンンッッ!!ー
破裂音を辺りに響かせ、ついには弾け飛んだ。
「アレクシィっ!」
巨大な破裂音にレインズは我に返る。
アレクシィっ、アレクシィは無事かっ?
アレクシィはスライムが弾け飛んだ場所、巨大な水たまりの中に横たわっていた。
レインズは慌てて駆け寄ると意識を確認する。
「アレクシィっ!アレクシィっ!!」
必死に呼びかけるが、返事はない。
耳を彼女の顔に近づける。
「息してないっ!」
「くそっ!アレクシィっ、しっかりしろっ!」
ーぐっ!ぐっ!ー
レインズはアレクシィの胸を両手で押し、心臓マッサージを行う。
「アレクシィっ!死ぬなっ!アレクシィっ!」
レンズは大声で呼びかけながら、懸命に彼女の胸部を圧迫する。
だが、アレクシィは動かない。
今一度、雷が落ちてくれれば…いや、そんなバカなっ!
彼女の御蔭で巨大スライムを討伐出来たのだ。その功労者を見殺しになどできるものかっ!
「すまんっ、アレクシィっ!」
レインズは意を決すると、彼女の鼻を摘まむと、人工呼吸を試みる。
アレクシィのその薄桃色で可憐な、花の蕾のような唇へ自身の唇をー…。
「…血色いいな…。」
気のせいだろうか、アレクシィの体がピクリ…。
「……。」
レインズは再びアレクシィの顔に自分の顔を近づける。
ーそよ…そよ…ー
アレクシィの微かな鼻息が、レインズの頬を撫でる。
「気が付いてるじゃないかっ!」
「ふぎゃっ!」
レインズに頭を叩かれ、アレクシィが悲鳴を上げる。
「痛ぁ~いぃ。ヒドイですっ、坊ちゃまっ!」
アレクシィは口を尖らせ不満顔だ。
「ちょっとしたご褒美位…ー。」
ーガバッー
「え?坊ちゃま??////」
起き上がりかけたアレクシィを、無言のレインズが抱きしめる。
「ちょっ、坊ちゃ…ー////」
アレクシィは先程キスをせがんだ少女と同一人物とは思えない、顔を真っ赤にして初心な反応でたじろぐ。
「よかったっ!」
「坊ちゃま…。」
「お前が無事で…本当に…よかった…。
ほ、本当にっ!し…死んでしまったかと…っ!」
「……申し訳ございません…。」
アレクシィは自分を強く抱きしめるレインズの背を、そっと優しく抱きしめ、
お互いの生を確認するように、その場でしばらく抱きしめ合ったー。
つづく
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