第8話 対スライム その2
激しい轟音と閃光が辺りを包む。
「がっ?!」
レインズの体に衝撃が走る。
衝撃で吹き飛ばされ、大木に叩き付けられたのだ。
「がっ!はっ!な、何だ?雷かっ?!」
未だ耳鳴りの鳴りやまない頭を振り、覚醒を促す。
目も焼きが付き、世界が白い。
スライムの吐いた水の塊に雷が落ちたー…?
そんな偶然が…??
いや、今はそれどころではない。とにかく助かったのだ。今はスグに次の行動へっ!
スライムはっ?!
レインズはスライムがいた位置に視線を向ける。
今の衝撃で木端微塵に吹き飛んでー…はいないようだ。
衝撃で体の水が吹き飛んだのか、心なしか小さくなった気もするが、まだその巨躯は健在だ。
だが、やはりさっきのは落雷だったのだろうか?
スライムは感電したのだろうか、ブルブルと小刻みに震えながら、マヒ状態のように見える。まあ、いつもの揺れかもしれないが。
表情のないスライム相手だと、相手の状態が分かり辛い。
「はっ!アレクシィはっ?アレクシィーっ!」
アレクシィーは無事だろうか?
レインズは軋む体に鞭打って、フラフラと立ち上がると、スライムに気を付けながら、彼女の名を呼ぶ。
水の塊はアレクシィに当る直前、弾けたように見えた。
恐らく、直撃ではなかったろうが。いや、あまりの閃光にしっかりとは見えなかったが…。
「アレクシィーっ!」
「…は…はい…。」
「!」
今、微かにだが、確かにアレクシィの声が聞こえたっ!
「ぐっ!」
レインズはすぐに声がした方へ、痛む体を引きずりながら駆け寄る。
「どこだっ!アレクシィーっ!」
「こ、ここです…。」
アレクシィの声は少し先の茂みの中から聞こえる。彼女も先程の衝撃で飛ばされたようだ。
レインズは茂みを掻き分け、彼女の声が聞こえた辺りを探す。
「アレクシィっ。」
分け入った茂みの先、力なく四肢を投げ出しが彼女が仰向けに倒れている彼女を見つける。
「無事かっ?!」
「は…はい、ちょっと…耳が聞こえにくいですけど…。」
見るとアレクシィの耳から血が出ている。
あの轟音を間近で聞いたのだ、鼓膜が破れたかもしれない。
「ひ、一先ず良かった…。」
「坊ちゃまも、よくぞご無事で…。」
レインズよりも近くで衝撃を受けたせいで遠くまで飛ばされたようだが、
茂みの中に飛ばされたおかげで、叩き付けられたダメージは少なそうだ。
擦り傷などで血が滲んではいるが、見た所耳以外からの大きな出血などはなさそうだ。
「大丈夫か?立てるか?」
「はい…痛っ!」
アレクシィは立ち上がろうとしてすぐに、足首を押さえてうずくまる。
「見せてみろ。」
「い、いえ、大丈夫ですっ!」
レインズはアレクシィが隠そうとする手を引きはがし、彼女の足首を確認する。その足首は腫れ上がり、とても大丈夫には見えない。
「捻挫か骨折か…どちらにしても、動けそうにないな…。」
「ちょうどいい。」
「え?」
「お前はこの茂みに隠れていろ。」
レインズはすっと立ち上がると、
「すまなかったな、こんな事させてしまって…。あとは俺がやる。」
その横顔には、今までより強い決意と、戦場を単騎で駆け巡った頃の、[王国の盾にして剣]と呼ばれた頃の、戦士の面持ちが戻っていたー。
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます