終幕 合流と、約束と
軍人や貴族の死体を放置してハモンは静かに森を出た。
自分が入った場所から遠く、宿に帰るには遠回りの道を選ぶ。貴族が軍人の
ハモンが宿に戻れたのは日が
北の村と
大通りでなくとも客商売の店が並ぶ路地には提灯が
お陰でハモンは迷う事無く宿の
「
白髪の目立つ女店主の隣で声を上げずに泣くイチヨが赤茶のショートジャケットの
ハモンの姿を見て直ぐに玄関でブーツも
ただ殴られた
「イッちゃん、お兄さん帰って来たの?」
宿の奥から青ジャケットのハナがイチヨが姿を現した。その後ろには旅商人の父も
「心配を掛けて済まない」
イチヨへ謝罪をしつつ女店主、ハナ、父親にも深く
ハナを面倒見た代わりの様にイチヨの世話を押し付けた手前、父親には特に迷惑を掛けてしまった。子供を預かるという相当な
イチヨを心配したハナが同じように
やっとハモンが帰って来たと実感が
「イチヨ、ここは冷える。部屋に行かないか?」
「……うん」
泣き
ハモンとイチヨの二人だけの方が良いだろうとハナと父親も気を遣ってくれた。
女将は少ししたら夕食を運ぶと言い去って行った。
自室に入り二人だけに成ってもイチヨはハモンから離れない。
小さく肩を震わせる彼女を休ませる為にも腰を下ろす。
「済まない」
「……怪我、してない?」
「少し
「え?」
嘘を言っても着替えを見られれば直ぐに
イチヨが顔を
「誤解から軍に追われた。それで少しな」
「軍って、そんなの」
「問題無い」
驚いて顔を上げたイチヨが初めてハモンの顔を見た。頬の打撲痕に気付き顔が
別れてからずっと
指で
頭を胸に抱き寄せて涙は全て服に
悲しむ
「済まない」
結局、謝罪以外の言葉が見つからなかった。
その
泣き止まないイチヨを見て女店主が
少しでも良い印象を与えた方が良いかと思ったが、今は
可能な限り普段通りの
「
それが出来る器用さがハモンに有れば苦労はしていない。ただ女店主の言う事も
彼女は何をすれば良いか分からずに
「イチヨ、
「……うん」
「何か、自分にして欲しい事は無いか?」
「ぇ?」
「情けないが、どうすれば泣き止んで貰えるか分からなくてな」
「……ずっと一緒に居て」
「……ああ」
言い
状況が状況ならば
上手く笑みを浮かべられているか自信は無いが笑顔でイチヨの頭を
少しだけ安心したのかハモンに気を遣ってか、イチヨも涙を浮かべたまま笑みを作った。
「頂こう」
「頂きます」
いつまでも共に居られる約束など、
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