第三幕 再会と、友と
防衛都市に
帝都に向かうのであれば徒歩だと二泊を
イチヨの同行も報酬から
「お~い、そこの白革羽織の
今日も都市周辺の
その途中、大通りで大きな声が響いた。周囲を見れば白革羽織は自分だけだ。
声の方を見てみればハモンに向け手を振る
確かな事は言えないので首を
寄ってみれば旅の商人らしく荷車の横の台に商品を並べて販売所を開いていた。
「
「……ぉ」
「忘れとったんかい!」
流石に気が
思い出せるのは寝袋を押し付けた際に
「あの村、大丈夫だったか?」
「いや」
「そうか。まあ、仕方ないか。うん、よくある話だな」
そんな風に言いながら商人の声は明らかに沈んでいた。
悪辣な男でないと思ったのは間違いではなかったらしい。
「俺は旅商人のギンジってんだ。いずれは帝都一の大商人に成る男、覚えといて損はさせないぜっ」
「……そうか」
ハモンは商人との
商人が果たす役割を理解していないのでお近付きに成る
「そうだそうだ、ちょいと聞き
「十人程が生き残った。村は
「そうかそうかっ。村が亡くなるのは残念だが、生き残りが居るのは良かったじゃねえか!」
そう言って何度もハモンの肩を叩きギンジは喜んでいる。
商人は
「あの村は良い村だ。村長さんは
「生き残ったのは娘だけだ」
「……嘘だろ? なあ、嘘だって言ってくれよ!
生き残りが居ると聞いて自身と接点の有る相手だけが
肩を掴まれて前後に揺らされ、驚いた周囲の視線が集まった。
このまま騒げば喧嘩と間違われ
「イチヨは自分がこの都市の宿に
「……は?」
「だから、イチヨは自分の旅に同行させている」
「え、あれ、
「違うが村では世話に成った。礼は返す」
ハモンも同情からくる自己満足という自覚は有るがイチヨにはその同情すら向けられていなかった。あのまま
「それだけ? 数日世話に成ったから、娘を引き取ったって?」
「そうだ」
「っ、
先程からギンジの感情の上下に付いていけないハモンはとうとう
「そろそろ離せ。あまりイチヨを独りにしたくない」
「お、そうだな! そうだ
「……思い付かん」
「そりゃ
「それは
「おうおう、任せときな。あれだけ状態の良い牙は中々手に入らねえ。買い取ってった職人も状態が良いから直ぐに商品にするって
騒がしいギンジが
宿の前では赤茶ショートジャケットのイチヨがハモンを待っていたが、今日は同じ年頃の青ジャケットの娘と横に並んでいた。
同じ宿に
「ハモン兄様!」
会話の途切れた
笑顔でハモンに駆け寄ったイチヨに抱き着かれる。受け入れる様に背に手を回し、気になって青ジャケットの娘を見た。
自分と同じ様に
その現実に
「お帰りなさいっ」
「ああ。
「えっと、うん」
「紹介してくれるか?」
「うんっ」
娘の
腰に抱き着くイチヨの背中を軽く押しつつ娘の前に歩み寄り
「自分はハモンだ。イチヨの友に成ってくれて感謝する」
「う、ううん。アタシも、イッちゃんと友達、嬉しいから」
「そうか」
「あ、アタシ、ハナ、です」
「
このままハナを残すのも
ハモンは二つ買っていた
「え、良い、の?」
「構わん」
「えへへ。食べよ、ハナちゃん」
ハナは初対面の男にいきなり渡された
ただイチヨが
宿の
ただ何かを思い付いたようで小走りで宿の奥に去って行く。
二人が饅頭を食べ切る頃、
「さぁさ、お
「……
「ありがとぉございますっ」
「ありがと、ございますっ」
娘二人にも礼を
そんな娘たちを見て優しく微笑む女店主に感謝しつつハモンも茶を頂く事にした。
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