真犯人明智光秀の事件簿 本能寺殺人事件
@nemotoyeah
第1話 織田信長の焼死体が発見される
生き残った女中の話によるとそれは1582年6月21日の早朝のことであったという。信長が寝所としていた京都の本能寺が瞬く間に炎に飲み込まれ日の出とともに焼け落ちた。信長とお供の者全員が行方不明。
煙が燻る焼け後を目の前にして、今回の事件の真犯人である明智光秀はただただ呆然と立ち尽くしていた。プスプスとあがる煙が儚く空へと登る。我慢ならないはずの火事場の独特の臭いも今だけは気にならなかった。京都市中警護の任についていた光秀は一報を聞いて文字通り飛び起きて手勢を率いて現場に急行した。消火作業と生存者の捜索とを指揮した。がしかし、信長をはじめ多くの者の行方は分からなかった。焼け落ちた御殿の下で無念の死を遂げているのではないか。光秀は捜索を急がせた。生存者は終ぞ見つからず、悲しい予測だけが全て当たった。顔も名前も判然としない炭化した焼死体が複数見つかり、その一人は信長の愛刀である実休光忠を握っていた。それを決めてとして光秀は織田信長の遺体とした。時代が大きく動き始めた。その中心にいたはずの織田信長を差置いて、自分がそこにいる…。その奇妙な事実について光秀は考えていた。これは歴史の必然なのか、それともこの眼の前の煙が揺蕩う煙が如く行先不明のものなのか。光秀には断ずるほどの自信も根拠も持ちわせていなかった。
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