第7話 ステータス
気づいたら苦しい状態が完全に無くなっていた。
そして周りの状況を確認しようと周囲に目を走らせる。
(まだ水の中か。苦しくないってことはまた身体が何かなったんだろうな。とりあえずこの状況をどうにかしないと。)
どうやら魚達はいつの間にか消えており、少し大きめの岩に引っかかった状態だったのでお陰でこれ以上流されないで済んでいた。
「よいしょっと。にしてもまた酷い目にあったな、あの魚共次会ったら覚悟しとけよ……。で、ここ何処だ?しかも服脱いだせいで全裸だし、どうすっかなぁ……。」
川の中から地上に出てひとしきり毒づいた後知らない場所に流されていて現状着るものもないすっぽんぽんのため、真斗は困惑していた。
「まあそもそもこの世界のこと自体ほぼ知らないんだけどね……。とりあえず葉っぱかなんかで下半身だけは隠すか。」
流石に全裸は不味いので近くにあった大き目の葉っぱを何枚か上手い具合に重ねて即興の不格好の腰巻にした。
「……まあ、ないよりはマシだろ。それはそうと流石にいい加減に気になるな、なんか自分の体がおかしくなってる理由。」
その腰巻を身に着け少し不服そうにしながらも、指し迫り自分の体に起こった不思議な状態を確かめるため、休憩も兼ねて近くの大岩に腰掛けながら確認しようとした。
「えっと、確か《ステータス》だっけ?色々見れるの。て、うお!?急にモニターが出てきたな、トリガーワードになってんのか?てかコレあん時見たやつと同じやつか。通りで既視感あると思ったわ。で、なになに……。」
《名前:道影 真斗 20歳 性別:男
種族:人間
固有スキル
・【再生】
スキル
・貫通 ・酸無効 ・精神障害無効 ・麻痺無効
・毒無効 ・痛覚無効 ・溺死無効 ・即死無効
称号
・転生者 ・虫の天敵 ・鏖殺者 ・一騎当千
・狂人 ・破壊と再生の化身》
「なんか色々あるな。固有スキルはいいとして、いつの間にかスキルやら称号やら付いてるし。」
何故いきなりあらゆる苦痛が無くなったのか、それは恐らく色々と無効のスキルを獲得したからだろう。
「ていうか魂の位階が上がってる筈なのに表示されてないってことは鑑定系の固有スキルが必要って事なのかな?色々と付いている称号なんかが気になるけど、これ以上詳細なことも見れないっぽいしひとまず原因は確認出来たからいっか。」
魂の位階やら称号の詳細を見ようとしても何も表示されないことから鑑定系固有スキルなのだろうと当たりをつけてステータスを閉じた。
「さて、これからどうすっかなぁ。とりあえずこの森から出たいけど道わかんないし、また魔物にやられるのも嫌だし……。」
一通り確認し終えた俺はこれからどうするのかを決めかねていた。
「……折角異世界に転生した事だし、魔法を使いたいけど神様に才能ないって言われたからなぁ。なにか無いか、なにか……。」
悩み悩み、悩み続けた俺は、
「うん、とりあえず強くなろ。」
とりあえず強くなる事にした。
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あれからとりあえず強くなる事を決めた俺は弱い魔物から戦い始め、攻撃を食らっては固有スキルの【再生】で傷を治していき確実に倒していった。そして闘いを通して耐性・無効のスキルを獲得していく。腹が減ってはよく分からない木の実や倒した魔物を焼いて食っては体調を崩し、また耐性・無効のスキルを獲得していく。空いた時間は筋トレに励んで肉体を少しでも強くする為に費やした。
十年経つ頃には自分の容姿が全く変わってない事に違和感を感じながらも未だに森から出れない事に焦り始めていた。何度も諦めずに外に出ようと森を徘徊し続けてるといつの間にか中型の魔物を倒せるようになっていた。
更に百年経つ頃には大型の魔物も倒せるようになっていたが、相変わらず森から出れない為諦めて森に住むことにした。容姿も髪が伸びる以外の変化が一切ない事から筋トレが意味をなさないのでは無いかと思い始めていた。実際は見た目には変化が無いだけで筋肉がついているのだが、それを知るのはまだ先の話。そしていくらやられても、寿命でも死なないため自分は不死身なのではと考え始めていた。
千年経つ頃には森の中で倒せない魔物は居なくなり、暇になったので対人戦や何とか魔法が使えないかなど色々と自分なりの技を極めようとし始めた。そして不死身の原因は固有スキルである【再生】である事に気づいたが、どうすることも出来なかった。やはり自分は永遠に生き続けなければいけないのかと嘆き、死ぬ方法を模索したが何時しかもう考えるのを放棄して、当初の目的である強くなることを生きがいにして永き時を生き続けた。
そして更に時が経ち、はや五千年。俺は―――
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「…フンッ。」
ズドンッ!
「グガッ!?」
今日も日課に考え付いた技を魔物相手に試してはそれが有用かどうかを見極め、必殺になるように昇華させて極めていく。
「コレは無しだな、威力が弱過ぎる。この森の魔物相手には余り有用とは言えないな。」
「グガァァァ!!」
人差し指に力を入れ魔物の急所にぶっ刺しその痛みで殺そうとしたが、威力が足りなかった為こちらに突進してきた。
「ふむ。」
バァン!
「ああ、肉片が飛び散ってしまったか。やはり魔法を使うのは無理なのか……。」
次に魔力を魔物に送り発火させようとしたが、どうやら発火せず許容量の魔力を強制的に送ったせいか爆散してしまった。
「ふぅ、今日の日課が終わったか。」
その時身体の中心に熱いものを感じた。
「ふむ、位階が上がったか。そういえばもう随分と前から上がってなかったな、久しぶりに見てみるか。」
そう言って《ステータス》と唱え、目の前にモニターが表示される。
《名前:道影 真斗 5791歳 性別:男
種族:人間[破壊と再生の権化]
固有スキル
・【再生】
スキル
・貫通 ・酸無効 ・精神障害無効 ・状態異常無効・痛覚無効 ・溺死無効 ・即死無効 ・斬撃無効
・圧耐性 ・魔法耐性 ・刺突無効 ・衝撃耐性
・魔力操作 ・空歩 ・道影流
称号
・転生者 ・森の天敵 ・鏖殺者 ・一騎当千
・狂人 ・破壊と再生の権化 ・無謀者 ・超越者
・不死身 ・化け物 ・技職人 ・初代道影流 》
「ふむ、随分と歳を取ったものだ。遂に5000歳を超えたか、俺もすっかりジジイだな。いや、こんな若々しい容姿のジジイとか詐欺でしかないか。まあ、ここは異世界だからもしかしたら俺みたいなやつも居るかもしれんが。」
確認したい事はし終えたのでモニターを消し、それからふと思い出した。
「今の俺ならアイツの事を倒せるんじゃないか…。」
今から約三千年くらい前、当時は二千歳くらいだったかな。俺はまたいつもの様に魔物を倒していたんだ。そしたら突然目の前に鹿の魔物が現れて俺はソイツに蹂躙された。
当時の俺は森の中で勝てない魔物は居ないと自負していたのもあって、ついで感覚で倒そうとしたが鹿の魔物が放った謎の攻撃で体が四散した。
勿論それだけで死ぬ俺ではなくすぐさま【再生】が発動し、治ったと同時に攻撃を仕掛けた。
しかし、まるで地面を殴ってるかのようにソイツはビクともせず、逆に反撃してきてまた俺は四散した。
そんな感じで幾度も繰り返したが結局は堂々巡りであった為、やむ無く俺はソイツから逃げ出した。
幸いにもソイツは追ってくることはなかったため逃げれた訳だが、俺は久しぶりに魔物相手に敗走したのだ。
そこから俺は何度も挑戦したが結局倒す事は叶わず、三百年くらい経った時にはもう諦めて挑まなくなった。
あれからもう三千年以上経つ。昔よりかは幾分か強くなった今なら勝てないまでもいい勝負が出来るのではないか。
「試してみるか ……。」
そう考えた俺は更に森の奥地へと向かった。
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