第3話 選ばれたのは…
あれから数時間。
固有スキルを選んだ人がチラホラ見え始め、選び終わった人同士で集まってどんな固有スキルを選んだかなどを話し合っている。人数的にもうそろそろ終わりそうなのに未だに俺は悩んでいた。
「私はコレにします。」
『はいよー。了承っと。』
「自分はコレで。」
『ん〜了承了承っと。』
どうしよ、どうしよ...。気づいたらまだ決めてないの俺含めて後三人しか居ないよ。
(悩んでいる間に9枠の固有スキルは無くなってるし、6枠も後二つ、【強奪】と【経験値100倍】しかないけどデメリットが重いし。なんだよ、この固有スキル【強奪】は。「相手のステータスを閲覧しスキルを奪える代わりに奪った相手のスキルを得るまでの経験を追体験する。またスキルを奪った相手に負けたらそれまでに奪ったスキルを失い、奪われた相手に返還される。」って、軽いものなら良いけど重いものだったら下手すりゃ廃人になるぞ。)
(それに固有スキル【経験値100倍】も「人より得られる経験値が100倍になる代わりに、種族が人間しか選べず転生は赤ちゃんからやり直しで寿命が約80年縮む」とか。種族が選べるのか?と思ったけど強制的に人間になるし、80年ってもし俺達と同じ存在の人間だったらどう足掻いても早死にするじゃねぇか!俺はもっと長生きしたいわ!だからといって3枠の固有スキルは良い奴無いし、本格的に不味い。やはりリスクありでも6枠にするか...。するにしてもどちらを取るか...。)
そう俺が考え始めた時、俺同様に余ってる人の一人が声を上げた。
「くそっ、こうなったら俺は【強奪】と【体力強化】を選ぶ!もうこうなりゃやけだ!」
『OK、君は【強奪】と【体力強化】ね。後悔しない?』
「後悔するかもしれんが、もうそういうものだと割り切る!」
『分かった。了承したよ。さあ、後二人だね。』
(なっ!?と、取られた!クソっ、こうなりゃ俺も...。)
「僕はこの【経験値100倍】と【思考力強化】でお願いします。」
あ。
『寿命も種族もこの先決まっちゃうけど良いの?』
「確かに、色々少なくなっちゃうけどどうせ転生するなら悔いのない人生にしたいからね。赤ちゃんからのやり直しでキツイけどその分歴史に名を残したいと思ってるよ。」
『そっか。それじゃ了承!...残りは君だけだね。』
もうダメだァ、お終いだぁ...。そう俺は項垂れながら余り物の中でせめて死ににくいようなやつを選んだ。
「じゃあこの【治癒力強化】と【根性】と【巻き戻し】の三つで...。」
これらの固有スキルは左から順に、常人より治癒力が上がる、死ぬ様な攻撃をされても瀕死で生き残る、その場で起きた光景をモニター式で巻き戻して見るという、あまりパッとしないし使い所も限られる能力だ。悲しいことにこれくらいしか生き残る為に役立ちそうなものはなかったのだ。
『了承!』
はぁ、早く決めときゃ良かったなぁ〜。優柔不断な自分が恨めしい...。そう俺は嘆いていたら、突如として三つの固有スキルが合わさり銀色に光だした。
「え?」
俺は急な出来事に何がなんだが分からず困惑していたら、頭の中に謎の声が聞こえた。
《固有スキル【治癒力強化】と【根性】と【巻き戻し】の統合を行い、固有スキル【再生】に昇華しました。固有スキル【再生】の詳細を表示しますか?》
(な、何...コレ?統合?昇華?それに【再生】って、俺が選んだ固有スキルが何か知らんもんに変化したんだが...。それに詳細を表示って。)
「あ、あの...コレ...。」
『ふ〜、やっと全員選んだね。それじゃ次にいこうか!』
神様は目の前の出来事に気付いていないのか、そう言うと一箇所に集まっている選び終わった人達の所に颯爽と向かってしまった。
「あ、ちょ!?」
神様なら何か知っているのではないかと思い聞こうとしたのだが、もう既に行ってしまっていた。
「...よく分からんがとりあえず後回しにしよう。うん、それがいい。」
俺は考えるのを辞めてみんなの所に向かった。
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『え〜、全員固有スキルを選び終えたので、次は「アレナ」について話したいと思います。ほっ。』
パンッ。と柏手を打つと宙に様々な物体が浮かんでいた。
『今君たちが見ている丸い星が「アレナ」といって、最初に言った通り剣と魔法のファンタジーな世界。ステータスはあるけど詳しい事はスキルの【詳細鑑定】でしか見れないようにしてある。じゃなきや利点が無いからね。けど、自分の名前や種族みたいな基本的な事は【詳細鑑定】がなくても見れるからね。』
(へ〜、ステータスがあるのか。何かそこはゲーム染みてんな。鑑定系の固有スキル選べなかったから基本的なことしか分からないらしいけど。)
『「アレナ」には魔物がいてそれらを倒すことで魂の位階、つまり君たち風に言うとLvが上がって魂の器が大きくなり、それに合わせて肉体の強化がなされていく。』
『世の中には信じられないくらい強い魔物もいるから、それらに打ち勝つ為の人類の救済措置とでも言えばいいかな。』
(成程。神様がそこまで言うくらいの魔物が存在しているならそうでもしなきゃとっくに人類滅亡してるからな。けどそれならなんで魔物なんか生み出したのだろう?それとも自然発生したとか?)
『まあ、面白そうだと僕が生み出したら存外にも勝手に強くなっちゃったから、そのお詫びも兼ねてるけど。』
(もうコイツ邪神でいいんじゃねぇか?アレナに住む人達も怒って良いと思う、うん。)
『で、この世界の種族についてなんだけど主に五つの種族に別れてるんだよね。それが人間、エルフ、ドワーフ、獣人、魔族といった感じでね。君たちにはこれらの中から選んで転生して欲しい。ざっと説明するから選んだら言ってね。』
(やっぱ選べんのか。個人的には獣人になってみたいと思う。俺は自他ともに認めるモフリストであるが、自分自身がもふもふになるのもなかなか悪くないと思うんだ。)
『まずは人間。この種族は君たちと同じ人間の定義とはちょっと異なっててね。寿命なんから長くても120年くらいとそこだけは余り変わらないんだけど、さっき言ったように魔物を倒す事によりLvが上がって身体が強化されていく。まあ、Lvに関してはどの種族も同じ仕様だけどね。で、コレがキモなんだけど人間という種族はあらゆる者になれる可能性がある。今言えるのはこれだけだけど、これについては人間に転生してからのお楽しみだね。』
『次にエルフ。この種族の他に後二つの種族は様々な条件によって進化することが出来る。進化先は流石に秘密だよ。それでエルフは寿命が5000年は余裕で生きれるし魔力が生まれつき高く、扱いも得意な種族なんだ。』
『三つめがドワーフ。この種族も進化することが出来る。寿命は1000年くらい。手先が器用で物作りに長けている種族。何か作りたいならこの種族がオススメだね。』
『で、四つめが獣人。最後の進化出来る種族だね。寿命は300〜500年くらいで身体能力が高くて、子供でも素手で岩を割ることが出来る。また五感もほかの種族より鋭敏で物事の判別が得意になる。そして獣人は最終進化先になると9枠の固有スキルを与えられるんだけど、今選んだ固有スキルは消去されるからもし獣人を選ぶんだったらそこん所気をつけてね。』
『最後に魔族。この種族はエルフの次に魔力が高く、ドワーフの次に手先が器用で、獣人の次に身体能力が高い。と言ったふうに様々な種族の特徴を併せ持った種族で、寿命は様々な種族をまとめて魔族と括ってるから生まれ変わる種族によるとしか言えないね。それと魔族は固有スキルが決まっていてね、元々持っていた固有スキルは消えて【魔族化】て言うんだけどその固有スキルに変わるんだ。この【魔族化】は種族や自身の肉体によって姿が変わり、パワーアップするよ。そして固有スキルが固定化されるかわりにこのスキルは進化するんだ。最初は【魔族化】の3枠で進化する度に6枠、9枠と上がってくるけど、転生してからのお楽しみ。それと【龍化】を選んだ少年は分類的には魔物になるから待機しててね。』
『こんな感じの説明でいいかな?うん。それじ五つの魔法陣があるからそこに表示されてる種族を選んで陣の中に入ってね。』
その説明の終わりを皮切りにゾロゾロと各自行動をし始めた。
(どの種族も一長一短だな。最初は獣人がいいと考えたけどどうやら固有スキルが変わるみたいだし、魔法が使えないのを考えたらエルフも魔族も魅力を感じない。人間が無難なのかな、可能性ありそうだし...。物作りにも興味無いしね。うん、そうしよ。)
そうして俺は人間を選んだ。
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