第2話 I can not 魔法

『これで全員かな?』


 私、魔法、使えない。何故?才能、ないから、使えない。


 I can not 魔法。I can not 魔法。I can not 魔法。


 ああ魔法よ、君はどうして私に使わせてくれないのか。私はこんなにも君を欲しているのに、君は私の手から離れて離れてしまうのか。ああ、魔法よ。ああ…


『……一人ちょっとおかしい人がいるけど、全員の才能を見終わったから次の話を進めるね。先ずはさっき言ったチート能力についてだけど…』


「チート能力⁉」


『うわっ⁉急に戻ってきたね…。何か様子がおかしかったけど大丈夫?確かに君だけ魔法の才能がなかったけどさ。』


 そう、そうなのだ。何故か俺だけが魔法の才能が全くなかったのだ。どんなに才能が無い者でも最低一属性は使えるそうで、事実、俺以外のみんなは多かれ少なかれ魔法を使えるのだ。そりゃあ現実逃避の一つや二つ、したくもなるだろう。


「恨むぞ、神様…。」


『僕に恨まれてもね…。まあ気を取り直して、ええと…そう、チート能力についてだったね。まあチート能力と言っても君たちに与えるのは固有スキルなんだけどね。さっきも言ったけど固有スキルは稀に持つことができるやつなんだけど、それを自分たちで選ばせてあげようと思うんだ。神様特権ってやつだね。』


(ふむ、固有スキルか…。よくあるお約束の一つだな。てか稀に持つことがあるのに、そうポンポン渡していいのかね?まあ、貰えるもんは貰っとくけど。え?貧乏くさい?だって魔法が使えないですし、おすし。)


『で、その固有スキルなんだけど、固有とは名ばかりで同じ固有スキルを持っている人は全然いる。つまるところかぶりだね。その人の唯一無二のスキルって訳じゃないから頭に入れといてね。それと固有スキルには一人9枠までリソースがあって、そこから能力は3枠のもの、6枠のもの、9枠のものってランダムで選ばれるんだよ、普通はね。ああ、9枠のものはほぼ文字通りの固有スキルだからそこは安心して良いよ。』


 一人9枠までの保持コストがあり、普通はそこから3枠、6枠、9枠を消費する能力の三つがランダムで選ばれるらしいが…


(それにしても、9枠は文字通りになりそうだが固有スキルなのに固有化してないのはこれ如何に。まあ現実問題として文字通り固有化して、もし名称や効果がほぼ同じになったら同一の固有スキルでよくね?ってなりそうだしな。知らんけど。)


『その固有スキルを君たちが死なないようにさっき言った自分で選ばせてあげるのと、普通は一人一つしか持たないけど、特別に合計で9枠分まで選ばせてあげよう!つまり3枠・3枠・3枠の最大三つだね。』


(話の流れ的にどうやら俺たちは稀に、かつランダムで与えられる固有スキルを選ばせてくれるらしい。しかも最大の9枠分まで!いや~転生さまさまだね。まさにチートだよ。感謝します、転生神様!そんな神様なんていないだろうけど。)


『あ、そうそう言い忘れてたんだけど、固有スキルにはパッシブで発動するものとアクティブで発動する二種類がある。そしてデメリットがあってね、それが代償や発動条件だったり色々あるんだよ。この詳細は後で説明するからいいとして、固有スキルは弱い順に3枠、6枠、9枠になってて、3枠だけは代償や発動条件がないんだけどその分能力は微妙なもので、6枠は能力はそこそこな代わりに、代償や発動条件もそこそこなものになる。最後の9枠は能力も強力なものばかりなんだけど、それ相応の代償や発動条件がある。こんな感じで固有スキルにはデメリットがあるんだ。』


(え~~、固有スキルなのにデメリットあるのかよ。しかも代償とか怖いものもあるし、無難なデメリットのない3枠を三つにしようかな。いやでも6枠までのものなら何とか…しかし9枠のものも代償や発動条件が比較的緩いやつなら生き残るためにはアリ、か?わからん、わからんなぁ。)


(まあ、取り合えずどんな固有スキルがあるかを見てからでも遅くはないか…うん、そうしよう。)


『それじゃあ一通り説明も終わったし、どんな固有スキルがあるか例として実際に見せるね。それともちろん、見せたやつも選択肢に含まれてるから気に入ったら遠慮なくいってね。』


 そういって神様は何やらそれぞれの光を発する物体を三つ宙に並べた。


『白色が3枠の固有スキル【治癒力強化】。』


『青色が6枠の固有スキル【武芸百般】。』


『金色が9枠の固有スキル【龍化】』


(おお!あれが固有スキル…。凄いな、なんか感動してきたかも。それにしても色で分けているのか、まあ分かりやすくて良いけど。ていうか【龍化】なんてもんもあるのか。名前的に龍になれそうだけど詳細が気になるな。)


『それぞれどんな能力か教えていくね。まず一つ目、3枠の固有スキル【治癒力強化】はそのままの意味で、普通の人よりも傷が治るのが早くなる。擦り傷やちょっとした切り傷はものの数秒で治るようなスキル。』


『そして二つ目、6枠の固有スキル【武芸百般】は全ての武器種を経験無しでも扱える様になるスキル。将来的に沢山の経験を積んだら全ての武器種を完璧に扱えるだろうね。代償として最低限の防具しか身に着けれなくなる。普通の服や要所要所を守る防具はつけれるけど、鎧などは無理ってことだね。』


『最後の9枠の固有スキル【龍化】は文字通り龍になることが出来る。そしてその【龍化】は戦うごとに進化し、最終的にはエンシェントドラゴンという僕の世界でも五体しかいない龍になれる可能性があるスキル。当然相応に代償があり、まず人の思考でいることができなくなる。これは論理感もそうだけど、龍は滅茶苦茶長寿だから時間の感覚が人とだいぶ異なる。だから人の世界では生きられなくなるね。それと孤独。龍は生物の中で最強格だから基本は群れず、強い者こそ正しいっていう世界だから味方なんてのは存在しない。常に同族で闘争に明け暮れているから平穏とは一番遠い生き物じゃないかな。とまあ、こんな感じかな。今のやつで気に入ったやつがあったらいってね。ああ、もちろんこれだけじゃなく他にも有名どころの【強奪】や【経験値100倍】なんて、多種多様な固有スキルを揃えてあるから、ちょっと待ってね。』

 

そう言って神様は大量の光を発するものを宙に並べ出した。


『今出したこれらの中から好きなのを選んでね。』


 それを見て思ったのは9枠の固有スキルが少な過ぎることだ。何故だろうと考えていると...


「なあ、何か9枠の分だけ少なくないか?」


 とその場に居た人は言い出した。


『ああそれはね、元々希少な事もあってそれ相応に数を絞ったんだよ。今ここにいる人は100人だから、10個くらいかな?で、6枠は大体60個、3枠のは全員分あるからね。けどさっきも言ったように6枠のものからは様々なデメリットがあるから、決して9枠のものだけがいいって訳じゃないからね。選んだ固有スキルはその時点で変更は出来ないから慎重に選ぶように。一応それぞれの固有スキルの得られる能力とデメリットは見れるからその点も加味して考えてね。あ、言い忘れたけどコレ早い者勝ちだから。』


 その場に居たみんなは一斉に走り始め、そして光る物体の前で悩み始めた。早く決めねば良い奴は取られる!と。もちろん、俺もその一人。


(固有スキル...。固有と呼ばれるだけあり、例として紹介されたどのスキルも思ったより能力が高かったな。3枠のやつはまあ有ればお得、って感じだけど。6枠のやつは代償もそこまでだし、全然アリだな。9枠のやつは...魅力は感じるけどその分のデメリットが重過ぎるからなぁ。他のも見てから選ぶか...)


 そんな感じで考えてたら一人の少年が声を上げた。


「僕は【龍化】がいいです!」


 何と【龍化】を選んだのである。この即決即断には周りも驚いていた。


『結構デメリットが重いけど、大丈夫?』


「はい!大丈夫です!元々自分、生まれつき病気もちで、入院中に暇潰しに読んでいたファンタジー小説出てくる龍に憧れてたんです。もし生まれ変われるのなら病気に負けないような強靭な身体を持つ龍になりたいと。」


『...うん。そういうことなら分かったよ。君は【龍化】ね、了承したよ。みんが選び終えるまでちょっと待っててね。』


「はい!ありがとう御座います!」


 こうして9枠の固有スキルは残り九個となった。

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