第四十話 第五の事件
「そういえば貴船、古賀さんの現場を見た時に分かったことって何?」
僕はキエさんの家に戻る道の途中で貴船に聞いた。
「あぁ、古賀さんが殺された部屋の床を見た時に思ったんだが、現場の血がかなり乾いていたんだ。陣外さんが殺された時は天井裏から血が
貴船の問いかけに対して澁鬼が答える。
「確かに、古賀さんは晴樹と一緒に陣外って奴を降ろす時まで生きていたはずで、そこから間もなく殺されたのに血が乾いてんのは妙だな...」
「あぁ、あの現場で殺されたのは間違いなさそうだが、この事件は不可解な点が多い。純平も言ってたが、皆死体が形として残っているんだ。死体は全員バラバラにされているが、綺麗さっぱり死体が食べられているのは一件も無い、本来人間を頭から爪先まで喰らい尽くす筈の獣人がだ」
僕は事件の違和感は感じとってはいたものの、それを上手く言葉にするのが苦手なので、貴船がいることで僕自身も話の整理が出来るのでホントに助かってる。
「あと気になるのが、死体がどんどん俺たちが手に触れづらくなっていることだ」
「え?どういうこと?」
僕は貴船の言葉の意味がよく分からなかった。
「最初の宍戸さんはバラバラにされた状態で家に無造作に放られていたが、2番目の陣外さんは舞台の天井に、3番目の古賀さんは燃え盛る部屋の奥、そして晴樹は鍵のかかった部屋に首だけ置かれ最後に爆破。まるで俺たちを死体に触れさせないようにわざと遠ざけてるように感じてな」
「そう言われてみれば確かに...」
だけど僕はそれがどういう意図でやったものなのか検討もつかなかった。そもそもそこまで計算しているのかも正直分からない。
僕は獣人の狙いや真意が掴めずまた頭を抱えた。
すると突然ーーーーーーーーーー
ピ-----------------------------ッ!!!
どこかで聞いた事のある鹿笛が鳴り響いた。
「これってキエさんの......!?」
「キエさんって確か今家に居るはずじゃ...」
「家はもう見えてる!とにかく急ぐぞ!!」
僕たちは一目散に駆け出した。幸いキエさんの家のすぐ近くまで来ていたので、20秒足らずで家に着く事が出来た。
ガラガラガラガラッ!!!!!
澁鬼が勢い良く扉を開ける。
そこにはーーーーーーーーー
「恵里菜!!!純平くん!!!!!」
玄関の上がり台のすぐ脇に恵里菜と純平が倒れていた。
向かって左に純平、床に半身、壁に背中を預けるような形で気を失っている。その上の壁に凹んだようなアトがあった。
「誰かに壁に叩きつけられたのか...」
澁鬼は急いで純平の脈を確認する。
「大丈夫だ。生きてる。気絶しただけみたいだ」
ホッとしたのも束の間、僕は向かって右に仰向けで倒れている恵里菜のとこに向かう。
「どうして恵里菜が玄関に...」
自力で起き上がったのだろうか...?しかし、それにしては恵里菜の状態が妙だった。
上の服の裾が胸元まで上げられていて、お腹の部分が露になっている。まるで途中まで誰かに無理やり脱がされたような格好だった。
「戻ったのかお前たち!!」
すると奥の部屋からキエさんが
「なっ...!!純平!!!どうしたんだ!!?」
キエさんは倒れている純平くんに気付き、すぐに駆け寄る。
「俺たちが来た時にはもうこうだった...。だが気を失っているだけで、命に別状は無さそうだ。そういや、さっきの鹿笛はキエさんが?」
「あぁ、さっき部屋の窓から怪しい人影を見てな。そいつは今、黒髪の坊主が追っかけとる」
「え!?祐葉が!?」
貴船の問いに対してのキエさんの返答に僕は思わず声を上げた。
祐葉が獣人を追いかけている...?僕はすぐに応援に行こうと場所をキエさんに訪ねようとしたその時ーーーー
「おい、見ろよこれ...」
突然澁鬼が床を見て呟いた。
見ると、先程は純平くんと恵里菜に気を取られていて分からなかったが、キエさんが出てきた場所とはまた別方向の廊下に、血痕の道が出来ていた。
「キエさん、あっちには何が?」
「向こうには縁側しか無いはずだが...」
僕たちは純平くんと恵里菜を部屋に運び終えてから血痕の廊下を辿り、途中の角を曲がる。その先にはーーーー
「何だこれ!?廊下が石まみれじゃねぇか!!」
澁鬼の言う通り、曲がった先の縁側の廊下には白い小さな石があちらこちらに散らばっていた。
「これは庭の枯山水に置かれた石だが何故ここに...」
僕たちは右側に広がる枯山水に目をやる。するとーーーーーーー
「なっ......!!!!??」
「うわぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!!!!」
それはあまりにも受け止めがたい光景が広がっていた。
白い枯山水に一色入れるかのように、庭を自らの血で赤く染め上げるその景色はあまりにも惨たらしく、僕たちは言葉を失った。
そこには身体のあらゆる箇所を切り裂かれ貫かれ、物言わぬ
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