第三十二話 第二の事件
「何...?今の音......?」
雪嶺は音のした方へ振り返る。
「今のはハンターの方が獲物を探す時によく使う鹿笛の音ですが、山で本来は使うはずなのに何で...」
晴樹くんも不思議そうな顔をしている。
僕らは一旦外に出て、音の詳しい位置を探ろうとした。
するとまたしても、
ピーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!
という音が聞こえ、僕たちはただ事じゃない事態が起きている事を何となく察しながら音のする方向へ駆け出した。
「ハァッ...ハァッ......!!あ、キエさん!!!」
僕たちは音を頼りにしばらく走ったあと、とある建物に辿り着いた。
そしてそこにはキエさんが立っていて、鹿笛を持っている。恐らく音を鳴らした主はキエさんで間違いない。
「一体どうしたんですか!?キエさん!」
僕たちはキエさんに何かあったのか聞いた。するとキエさんは目の前の建物を首でクイっと指し、いつもの口調で話し始めた。
「さっき北條姉妹を送り終わった後の帰り道に突然銃声が聞こえてね。何があったのかと急いでこちらへ来たんだが、この建物の前にあれが落ちていてね」
キエさんを指す方向を見てみると、そこにはーーーーー
「これって...さっき陣外のジジイが持ってた猟銃じゃねぇか!!」
「よく覚えてんなお前...」
祐葉のセリフに対し貴船が即反応する。あんな状況下でもそんな細かいとこまで見てるのは流石過ぎる...。
「あぁ、奴が自分の猟銃をこんなとこに捨てていくとは思えなくてね。間違いなく何かあったハズだ」
キエさんはそう言うと、目の前の建物のドアを開けた。
「そういえばこの建物は?大きいけど誰かの家っぽい感じはしないんだけど」
僕は晴樹くんに聞いた。
「ここはいわゆる集会所ですよ。獣人事件の前は年配の方たちが主に皆でカラオケ大会したり、碁や将棋をしたりしたんですよ。ただ 今はもう使う人はいないですね」
晴樹くんもそう言ってキエさんの後に続いた。
僕らも続いて中に入ると、そこには12畳程の和室が広がっていて、奥には小上がりの舞台が見える。
だがその舞台には......
「なっ......!!これは......!!!」
キエさんが言葉を失う。僕らも続いて覗き込むと......
「えっ......血が......」
舞台の上は真っ赤な血で床一面が染まっていた。
「血が乾いてない...恐らくまだ時間はそんな経ってないな...」
貴船が冷静に分析する。だけど一体この状況はどういう......
ピチャンッ...
「んっ......?」
「なぁ、今舞台の上から血が落ちなかったか...?」
祐葉の疑問に全員がゆっくりと頷く。
僕たちは恐る恐る血がしたたる舞台の天井を覗き込んだーーー
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「なっ...!?」
「じっ...陣外っ......!!」
それは直視するのもはばかれる光景だった...。
天井には先ほどの宍戸さんと同じように手足や胴体、首すらもバラバラにされ、それをスポットライトのコードに巻き付けられた、変わり果てた
「そんな...陣外さんまで...」
僕は立て続けに集落の住人が襲われるこの状況に絶望すら感じた。間違いなく獣人が潜んでいる事は分かっているのに、まだ手がかりすら何も掴めていない。
異能を使えば獣人を探し当てるのはさほど難しくは無いかもしれないけど、異能に対しマイナスなイメージを持っているこの集落で使うのは危険過ぎるし、異能に対する悪いイメージを取り払うためにやって来たのだから、使うのは悪手以外の何物でもない。
「とりあえず陣外さんを下ろしましょう。いつまでもあそこに置いておくのは可哀想ですから」
晴樹くんはそう言うと建物の出口へ向かって駆け出した。
「え?こっから直接下ろさないの?」
「こっちからじゃ高さ的に届かないですし、仮に肩車とかしたとしても、流石に血だらけの床の上に立って下ろすのは危ないですよ。それにコードに絡まってるようなので、上から上って解いた方が多分早いです!」
「じゃあ俺も手伝う!!」
「いえ、コードとか機材の位置関係とか、集落の住人であるボクの方が理解してると思うので、一人で大丈夫だと思います!!」
晴樹くんは祐葉の提案をやんわりと断ると、そのまま建物の外へ出ていった。
「あっ、古賀さん!!ちょうど良かった!!実は陣外さんが大変で...ちょっと一緒に来て手伝ってもらって良いですか!?」
外から晴樹くんの声が聞こえてきた。出入り口で古賀さんに会ったのか。古賀さんもさっきの鹿笛を聞いてこっちへ来たのかな?
「しかしこうなって来ると、もう獣人である犯人は一人しかおらんな」
急にキエさんがそんな事を呟いた。
「えっ、キエさん犯人が分かったんですか?」
雪嶺がキエさんに聞くと、「もちろんだ」と言い、続けた。
「いるだろう?宍戸の時といい、陣外の時といい、共通してアタシらと一切顔を合わせず、騒動の
するとキエさんは一気に鋭い目つきに変わり、窓の外を見つめ、こちらが怯むくらいの冷たい声色で告げた。
「
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます