第二十八話 第一の事件発生
「なんだ!?今の声は?」
祐葉は声がした方角にいち早く振り向く。しかし、どうやらここからでは何も分からない程の距離から聞こえてきた声のようだった。
とりあえず僕たちは声が聞こえた方へ急いで駆け出した。ついでに楠河さんも着いてきた。あとキエさんも僕らのダッシュに普通に着いてきました。やっぱり化け物だ...。
そして着いたのは宍戸さんの家だった。
するとそこには二人の女性が腰を抜かして何かに怯えた様子で抱き合っていた。
「きよか、すみか、どうしたんだい!?」
キエさんは二人の女性に声をかける。
すると女性の一人が家の中を指さし「あ、あれ......」と呟く。
僕たちは家の中を覗き込むとーーーー
「「「「なっ........!!!!!??」」」」」
あまりにも衝撃的過ぎる光景に僕たちは言葉を失った。
そこには壁だけでなく天井含めた玄関六面が赤い飛沫に包まれていて、上がり台の中央に四肢、 胴体、首、それぞれがバラバラにされ、食い散らかされた後、食べ残しのゴミかのように雑に投げ捨てられ各部位が山の如く重ねられたあまりにも惨すぎる
「なんだ...これ......」
祐葉はあまりにも酷い有り様に恐怖を覚えている。貴船と雪嶺は言葉も出ない様子だが、それは僕も同じだ。
「おぅえぇぇぇ.........」
楠河さんは宍戸さんの変わり果てた姿を見て吐きそうになったのか、口に手を当てうずくまった。
そんな中、キエさんが落ち着いた様子で悲鳴を上げた女性二人にゆっくり声をかける。
「二人は怪我は無いかい?何があったか説明出来るかい?」
すると女性二人は頷きながらゆっくりと立ち上がり、そのうちの一人が口を開いた。
「あたし達、自分たちの畑で収穫出来た野菜があったから、それを宍戸さんにおすそ分けしようと思って来たんだけど返事が無くて...この時間は居るはずだから寝てるのかと思って、玄関の中に置こうと思ってドアを開けたら宍戸さんが.....」
狭いコミュニティのせいかこの二人は宍戸さんの生活リズムを把握してるようだった。でもそれは多分この人たちに限ったことでは無いのかもしれないけど。
すると女性の内のもう一人が恐る恐る口を開く。
「あの、キエさん。ちなみにその方たちは...?」
僕たちを手のひらで指し、少し怯えながら聞いてきた。
キエさんは僕たちを旅でたまたま寄った人たちだと説明してくれた。
すると最初の女性が一気に不機嫌そうな顔になり、僕たちを睨んだ。
「またよそもん!?もしやアンタ達も獣人狩りとか抜かすんじゃないでしょうね!?関係なく巻き込まれた被害者たちの気持ちも考えず正義の味方とか語ったりしたら今すぐここで人生終わらしてやっからね!?」
「まぁまぁお姉ちゃん、この人たちまだ何もしてないし...」
そう言って大人しい方のもう一人の女性が宥める。
そして僕たちに軽い自己紹介をしてくれた。
「私は
すみかさんは黒い髪を真っ直ぐ伸ばし、両方の触覚の部分に和紙があしらわれた特徴的な髪留めをしている大和撫子のような雰囲気のある女性だ。
一方勝ち気な印象の姉のきよかさんは黒い髪を頭の高い位置でツインテールにし、ラメでも入っているのかと思うぐらいにキラキラしたヘアゴムをしている。
向こうがしてくれたので僕たちも軽く自己紹介をする。そして
「ふーん、熱中症に脱水ねぇ。確かにこんな真冬にそれは妙ね。」
きよかさんは僕たちの事情を聞くと、先ほどよりは大人しくなり、僕たちの話を聞いてくれた。
「それも獣人の能力なのかもしれないわね。私たちの想像を超えるのが異能なんだし」
きよかさんは嘆息をつきながら述べる。確かに恵里菜も朔矢も獣人の能力にやられた可能性は十分にある。
「でも同じ被害者だからって、アンタ達を信用する訳にはいかないわ」
やはり過去の事件のせいで外部の人間に警戒心は皆あるようだ。こればっかりは仕方ないか...。
「とりあえず怪しまれたくなかったら単独行動なんてしないことね。分かった?黒チビ」
「はっ!!!?黒チビ!?俺のことか!!!?」
きよかさんは祐葉を指さしてそう言った。単独行動しそうに見えるんだな...。
一方、祐葉はチビ呼ばわりされたことに我慢ならないようだったが貴船が諌めた。
まぁきよかさん見た感じ170cmは超えてるし、157cmの祐葉は確かに小さく見えるかも...。
「弟のアンタもよ白チビ」
うんまぁ、この流れならそうなるよね分かってました..。
ーーーー陣外視点ーーーー
「これは予想以上に早かったな...」
朝来た訳の分からない連中が去った後、何とかして追い返せる理由をつけられないかとこっそり後をつけてみたが、まさか宍戸のヤツが獣人に襲われていたとは.....。
獣人がまた動き出している。自分もいつ襲われるか分からない恐怖に多少震えながらも私はとある言葉を思い出す。
私は連中が去る前に、「この集落で何かあったら頭を撃ち抜いてやる」と自分でそう言ったんじゃなかったか?
そうだーー言った、私は言ったぞ。
あの時言質を取った。私に文句を言える人間は誰もいない。
私の胸は高揚感に包まれた。
万が一として持ってきた猟銃を見つめる。
そして誰にも聞こえない声量でそっと呟いた。
「また合法的に堂々と人が撃てるのか...」
私の顔からは恐怖なんてものはすっかり消えていた。
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