第十二話 忍耐と隠されし能力
今のは...一体なんだ.....?
澁鬼と刀を交えた時の散った火花が僕の刀へと消えた......。
澁鬼は一瞬目を丸くしたが、すぐに元の顔に戻り、僕に聞こえない声で何かを呟いた。
「やはりそうか......」
次の瞬間ーーーーー
澁鬼は自ら剣を弾き、再び僕に斬りかかる!!
僕は剣を構え直し、真正面から受け止めるーー!
ガキンッ!!と火花が散るが、今度は吸収されない。
あれ......?さっきのと違う...?
そう思ったのも束の間ーーーー
澁鬼は第二撃、第三撃と次々に攻撃をお見舞いする。
どうにか受け止め続けるも、僕は徐々にスタミナが切れてきて、第三者から見てもハッキリと分かるくらいに澁鬼に押され始めてきた......。
そして僕の足がふらつき始めたその瞬間ーーーー
「はぁっ!!!!!!!」
澁鬼はこの時を待っていたとばかりに、力を込め刀を振り上げたーー!!
重い一撃が来る ーーーーーーー!!!
足もふらついてバランスを崩しかけてる今、避けたり転がったり出来る体勢でもない......!!
僕はもう、真っ向から受け止めるしか無かった......。
僕は刀を真横にして構え、受け止める準備をした。
耐えろ...耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ......!!!
僕はそう唱え、澁鬼の攻撃を受け入れた......。
ビュンッーーーーーー
凄い風切り音だ...僕は骨折も厭わない覚悟で逃げずに前を見た。
ガシャンッ!!!!
あれ......?
刀同士が激しくぶつかる音がしたが、僕に衝撃が一切伝わらない...。
澁鬼も何が起こったか分からない顔をしている。
まるでぶつかった瞬間から何かに吸収されたようだった。
そして刀を交えた時の火花もさっきと同じように僕の刀に吸い込まれていった。
そして僕は自身の刀の変化に気づく。
刀が、熱い......!?
ぶつかった摩擦同士の熱なんてもんじゃない。何だったら柄さえも持っているのもギリギリなぐらいだ。
すると澁鬼は一旦僕から距離をとる。
そして僕に告げた。
「佐斗葉、それがお前の固有能力だ」
僕は一瞬意味が分からなかった。
僕は無能力者だと皆から言われていたのに、いきなり僕の能力なんて言われても理解が追い付かない。
澁鬼は続けた。
「お前はその強い忍耐力が刀に能力として具現化された。お前が『耐えなければいけない』と強く願った時、相手と刀を交えた時の火花や、物理攻撃の勢いを吸収する。それがお前の力だ」
僕の、力......? 僕は力を持っていた...?
澁鬼は知っていた? 雪姉ぇの顔もチラッと確認したが、特段驚くような反応は見せていない。
雪姉ぇも知ってた?もしかしてメンバー皆?
僕は貴船の言葉を思い出す。
「お前は、自分の力を理解しているか?」
僕は言葉の真意に気づいた。
貴船は恐らく、僕自身が自分の能力に気づいているかを問いたんだ...!!
でもここで僕の頭に一つ疑問が浮かぶ。
僕のこの能力、正直言ってかなり使い勝手が良いのでは?
「耐えろ」と念じれば能力が発動して、火花はともかく、物理攻撃の勢いを殺して吸収だなんてかなり応用が効く。
前衛だけでなくサポートもやりようによってはこなせるのでは?
それなのにどうして僕に黙っている必要があり、無能力者だと言い聞かせたのだろう?
僕は澁鬼に聞いてみた。
「僕に能力があったのなら、僕だって前線に出れるのに、どうして皆僕に無能力者だって言って、戦闘にも参加させなかったの?」
澁鬼は回答に少し躊躇った様子を見せたが、やがて僕を真っ直ぐに見て言った。
「お前の能力は吸収だけじゃなく、もう一つある。二つ合わせてお前の一つの能力だ。だが、そのもう一つが問題なんだ」
もう一つある...?吸収とセットであるもう一つの能力......何かリスクが?
僕は身体的リスクでもあるのかと想像していたが澁鬼から放たれた言葉は予想外のものだった。
「能力の完全発動のためには、お前自身が過去と向き合う必要がある。だか下手すると、お前はきっと......また俺たちを忘れちまうーーーー」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます