第六話 その瞬間は突然に
結局夜は何事も無く明け、皆出発の準備を整える。
僕らは次の目的地としてある集落へ向かうことになっている。
僕たちが探している方たちがとある町に現れ獣人から町人を救ったという話を聞いて急いで向かったが、既に去ってしまったらしく、僕たちはそこの町人たちの情報を元に隣の集落に狙いを定めた。
「隣の集落っていうから大した距離じゃないと思ってた俺が馬鹿だったなぁ...」
ふと祐葉がそんな事を呟いた。
「確かにねぇ。丸一日ぐらいで着くと思ってたけど、具体的な距離を聞いとくべきだったわね」
雪姉ぇがストレッチで身体を上にぐーっと伸ばしながら答える。
「そういやその方たちって何人で行動してるんだろうな」
「町の人たちの話だと、恵里菜たちと変わんない人数って言ってたけどねぇ〜」
朔矢の問いに対して今度は恵里菜が水分を摂りながら答える。
その方たちは一体何を目的に、何を信条にして動いてるんだろう......?
そんな事を考えながら僕たちは歩き始めた。
獣人(じゅうじん)
人の仮面を被った獣と呼ばれ、無差別に人間を襲い捕食する。
何故そういったものが存在するようになったのかは分かっていない。
見た目は身体の一部が獣のようになっているのが特徴で、その獣の種類も、変化する身体の部位も個体差がある。
また現段階で判明している情報と言えば、捕食した人間の数が多ければ多いほど獣化は抑えられ、見た目では普通の人間との判別が非常に困難であること。
また、獣人同士で共食いをすることも無いらしく、襲うのは人間だけ。
このまま獣人を野放しにしておけば、いずれ獣人に人々が支配されてしまう。そしてどんどん人に近づいてく獣人が町の中に潜んでるなんて噂が町に流れればたちまち住民たちは疑心暗鬼になって大混乱を起きるだろう。
僕たちはそんな事態を防ぐためにいる。
だけど今や被害はあちこちに出ていて、僕たちだけでは対処し切れないので、これから会う予定の方々には是非とも協力をお願いしたいのだ。
と言っても僕たちはどっかから公式に依頼されたわけではなく、自分たちで自主的に行っている、言わばボランティアに近い。
獣人には明確な弱点は無いが、実際耐久力は生身の人間と大差ないので、こちらが基本的な戦闘術を覚えていればさほどやり合うこと自体は難しくはない。
しかし、獣人は各個体に対し一つずつ固有能力を持っている。それと相性が悪かったりなんてしたら終わりだ...。
そういった意味では僕らは7人もいるから敵との相性の悪さは誰かしらがカバー出来る。
そして僕たちもそれぞれ武器を持ち、一つずつ固有能力がある......!!
はずなんだけど......。
実際のところ7人中、僕と祐葉の2人が無能力者なのだ。
僕たちに出来るのは単純な刀の鍔迫り合いのみ。
これじゃあずっと足を引っ張っててお荷物になってしまうから日夜修行を重ねてるんだけど、兆しすら見えてこないのが現状なのである。
どうにかして僕も力を......
そう思ったその時ーーーーーー
「ハハハハハハ!!!!俺ァついてる!!朝からこんなバイキングスタイルの朝食に出会えるとはなぁ!!!!!!」
そこにはーーーーー
腕、足、恐らく身体も獣に侵食されているのだろう。
見た目が巨大な猿のような男が、80メートルほど先に立っていた。
そしてハッキリ朝食と言った。
間違いない、獣人だ。
ならやる事は一つ!!!!!
ここは僕が......必ず倒す!!
アンタら獣人を、一人残らず殲滅してみせる......!!!!
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