お手紙
講演会
休日、出かける日もあれば家でゆっくりする日もある。
編集社から家に送られてくるお手紙は再掲載、単行本化、アニメ化、映画化と次のステップに進むほどその数は増えていく。幼稚園の子からご高齢の方々まで幅広く。まさに老若男女といった形。
何通か見ていると気になるものがある。
うちの幼稚園に来て子供と一緒に遊んで欲しい。小学校や中学校に来て全校生徒の前で話をしてください。
それ以外にも高校で講演会をしてもらいたい。大学の学祭でゲストとして呼びたいと多くの声が寄せられていた。とてもありがたいことだが……と悩む。
その姿を見た白翔は碧波に声をかける。どうしたの?
幼稚園で子供と遊んで欲しいとか小学校や中学校に来て話して欲しい。高校で講演会をしてもらいたい。
学祭でゲストとして呼びたいって声があってね。どうしようかと。年代によって何を話すのかって言うのも変わってくるし。
北は北海道、南は沖縄まで多くの幼稚園から学校まで来て欲しいと思ってくれるのは嬉しいことだが本業のマンガを描くことを考えると首都圏、電車で片道1時間くらいじゃないと難しいのが現実。
この圏内にある大学の学祭は早々と決まる。だが小学校や中学校は運動会や学芸会、文化祭など毎年決まった時期にやるのでそれ以外の所で行って欲しい。
アシスタントさんのスケジュールも管理しなきゃいけないしどうするか。日程をずらしてそこで学校に行くでもいいがそれぞれ予定があるしと頭を抱えていた。翌日、アシスタントさんが集まって話をする。
「大学の学祭でゲストとして出演するのは日曜日でいいけど、他に幼稚園で子供たちと遊んで欲しい。小学校や中学校で全校生徒の前で話してください。高校で講演会をやってもらいたいと話があってね。
全校生徒の前で話すとなると平日になると思うからいつもとスケジュールが変わることになるけど大丈夫?休みを削るではなくて変えるだけだからさ……」
心配そうな顔で訴える碧波。ダメなら不眠不休で死ぬ気で描きあげる気持ちだと頭を下げる。
大学の授業があるから午後からなら、夕方からでもよければ大丈夫なので。
ここの6人はマンガ家赤松碧波さんのアシスタントである前にファンでもあるのでとサムズアップをする。この年は手始めに小学校に1校と学祭で1校行くことを決めた。
梅雨明けの7月のある日、所沢駅近くの小学校に行ってどういう経緯でマンガ家になったのか、夢を持つことの大切さ。
そして好きなことをやり続けることは大変だけど楽しいことを伝えた。泣いてくれる子の姿を見ると登壇してよかったと感じる。数日後、お手紙を読んで涙が溢れてくる。
肌寒くなった11月、東京のとある大学にゲストとして行くとすしずめ状態と思うくらい人がいて驚く。学祭を楽しむ人がいる中、時間になると大学実行委員会の子が進行を進めつつトークショーと大学生とクイズをする。
自分がゲストだと忘れるくらい
どこから調達したのか分からないが10枚の色紙とサインペンが用意される。だがどうやって渡すか考えた。じゃんけんで決めよう。
舞台下にいる100人近くと一斉にジャンケンをする。1回で決まるはずもなく何度かやっていくうちに決まりサイン色紙を渡し始める。
握手してサインを渡すと泣いて喜んで家宝にします、小さい男の子がお姉ちゃんありがとうとかわいすぎる笑顔でいる子もいた。最後の人に渡そうとしてみるとそこにはアシスタントの河合さんだった。
みんなこんな所まで足を伸ばしてくれたのかと6人と共に写真を撮ってからは出店や大学生のオリジナルの演劇やお笑いなどを見て家に帰った。
相談
碧波は小学生の前で夢について語ったり、学祭で大学生とクイズをしたりと人との交流が楽しくてまたやりたいと秘かに考えていた。ファンの人とも交流出来たら絶対楽しいだろうな。
だが休日を増やせるほど余裕があるかと言ったらそうではない。
何か碧波とファンの人と一緒に何か出来るイベントをしたい。個人でするには限界もあるし、どこかに依頼をすればいくらかかるか見当がつかない。
アシスタントさんたちに相談する。
それならインスタライブしてみたらいいと思うよ。最近お互いに対話が出来るアプリがあるからそれを使ってみるのはどうですかと意見が挙がる。
同い年くらいなのにスマホを駆使している。碧波は電話とラインが出来れば何でもいいと考えていてとてもじゃないがそんなこと言えない。
とはいえ日本に住む碧波のファン全てがスマホを持っているかと言ったらそうではない。直接会う機会も作りたいなと白翔に相談をすると編集社主催で出来ないか駆け寄ってくれると決まる。
佐藤さんにアプリの取り方、やり方などを聞いて複数をインストールする。
試しに6人に参加してもらって流れを確認をする。休日、インスタライブとファンの人と交流している中で悩みを打ち明ける人もいる。
マンガを描くにはどうしたらいいのかという小学生、好きな女の子がいるけど目を合わせるだけで声をかけられないというかわいい中学生。
彼氏が話を聞いてくれないと嘆く女子高生や女子大生。みんな色々と悩みを抱えて生活をしていると実感をする。
白翔が頭を下げてくれたおかげで編集社主催でイベントホールを貸し切って映画「石岡杏子と子グマのリナちゃん物語」の主題歌にもなった蕾のリグレットを歌ったり、質問コーナーやグッズ抽選の他に夏祭りの出店で出てるような射的やヨーヨーすくい、輪投げなどのゲームコーナーなどもあり、みんなで盛り上がる。
来場特典で全員に何か渡したいが数も限られていることもあり、その代わりに1人ずつ握手して写真撮影を無償で行う。今日来てくれた全ての人に幸あれと願う。
全員が退場したあとに碧波は主催をしてくれた編集社の方々、そして頭を下げてくれた白翔。本来なら休日なのにも関わらずイベントを開催してくれたことを感謝の気持ちとして1人ずつサインをして握手を交わす。
お互いに休みが被るのは少なく、一緒にデートしたいはずなのに時間を犠牲にしてくれる白翔のことがホントに好き。従姉妹としてもそして恋人としても。
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