メディア
憧れ
テレビを付ければ小学生マンガ家赤松碧波、雑誌の特集を組まれたりラジオに出演すると北海道のローカルではあるが、広い北海道内で知らない人がいないくらい人気が出ていた。
従姉妹としてだけでなくて人として尊敬をしている。忙しいのはマンガ家として結果を残して充実している証。
会えば優しく接してくれるかわいいお姉ちゃん。だが出演しているテレビやラジオ、載っている雑誌やマンガを買うだけが出来る応援の形なのか。自分の部屋で寝ずに考える。
翌朝、学校に行くと何かザワいついている。
「白翔、今度函館のテレビ局に小学生マンガ家の赤松碧波が公開収録するみたいで一緒に応募しないか?」
詳細について聞くと全員が参加出来るわけではなく、抽選で当たった場合のみ。いわば抽選だが当たって観に行きたいな。クラスの仲のいい人たちそれぞれパソコンでテレビ局に応募する。
当選したのは白翔1人だけだった。
旭川にいた時には会ったがその時はまだマンガ家赤松碧波としてではなく、従姉妹として会っていたからまた違う心境でいる。みんな当たらずに悔しがっていた。
周りから羨ましい、会いたがってたことを伝えて欲しいとクラスメイトから言われる。
応援してるよ、そう言われて嬉しくない人はいないが誰がどれだけの熱量なのかはそのひと言では表すことは出来ない。行きたかったのに落選してしまったクラスメイトのために何かしたいと考えた。
「公開収録の前日までにそれぞれ手紙を書いてきて。本人に渡せるかどうかは分からないけどスタッフさんを通じてでも応援してるって気持ちが伝わると思ってさ」
その話を聞いたクラスメイトは色紙に寄せ書きをしよう、レターパックを買って手紙を書くから渡して欲しい。マンガ家赤松碧波を応援すると気持ちは同じだ。
家に帰ってレターパックに従姉妹、赤松碧波の活躍とマンガ家としての赤松碧波の気持ちを綴る。
ファンレターを送ること自体が初めて、それも顔馴染みの相手に送るとなると嬉しさと恥ずかしさが入り交じる。鉛筆で書いては消しゴムで擦る。
次第に紙が汚くなって破れてととても人に渡すようなものではなくなる。
パソコンで下書きをしてそれを手紙に書く。
時間はあっという間に過ぎてクラスメイトから寄せ書きをした色紙と個々の手紙を受け取った。1人ずつ握手を交わして赤松碧波さんに宜しくと託される。
公開収録の当日を迎える。紙袋に色紙と手紙を入れて家を出る。どんな番組になるのか楽しみにしていた。テレビ局に入るまで時間があり、近くのコンビニに立ち寄った。
週刊のマンガをペラペラと読んでいると毎週楽しみにしている読者がいてそれに応えるマンガ家がいることに改めて気がついた。テレビ局内では飲食厳禁のため、軽くおにぎりと紅茶を買って飲食する。
初めてのテレビ局、観覧とはいえ従姉妹としてマンガ家としての碧波を見るということに緊張をしてきた。
入口でスタッフさんに色紙とお手紙が入っていますと紙袋を渡そうとすると観覧イベントがあるからそこで直接どうぞ。
刻一刻と時間が近づく。自分がメインではないのに心臓がバクバクしてくる。
碧波が椅子に座ると収録が始まる。ツインテールに黄緑のワンピースを着ている。
かわいすぎる……。それ以外の言葉が出てこない。
2時間程して公開収録が終了してイベントに移る。
やっと番が回ってきて紙袋を渡すとニコッとはにかむ。笑顔で握手をして帰ろうとしていた。
だがスタッフさんに黒木白翔さんですよね?ちょっと来て欲しいと裏にある楽屋らしきところで待つようにと伝えられる。詳細について何も聞かされず椅子に座っている。
「白翔〜、来てくれてありがとう。色紙とお手紙ありがとう」
こんな沢山お手紙もらえて嬉しいよ。
そ、それはクラスメイトと一緒に来たかったけどみんな当たらなくてさ。
応援してる気持ちを伝えるには色紙やお手紙に綴る方がいいと思って募って持ってきたよ。それにお手紙ならいつでも見返せるでしょ。
……。そうだね、ファンレターもらうの初めてだから嬉しいな。じゃあ早速白翔の手紙から読もうかな。何て書いてあるのかな……。
「赤松碧波様、いつも応援しています」
ちょっと音読しないでよ。国語の授業じゃああるまいし。黙読するか家で読んでよ。
恥ずかしくて顔が赤くなるでしょ。すぐ
碧波は隣の椅子に座って頭を撫でる。
久しぶりあったのに顔を赤くして恥ずかしがっていて相変わらずかわいいね。
今回は出演者とお客さんみたいな感じだったけど今度会う時は従姉妹として恋人としてデートしようね。
こんなかわいい女の子とデート?そう思うと恥ずかしくて碧波の顔を見られない。恋人になるというのはあくまでも理想。
従姉妹として碧波の行きたいところについて行く。それをデートと呼んで2人で出かけるだけで充分。それ以上のことを望むのはワガママ。
せっかく会ったから写真を撮ろう。そう言って碧波はスマホを取り出して2ショットを撮って握手を交わしてテレビ局を後にした。
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