ひとり旅
手紙
終業式を迎え、夏休みの宿題が配られた。
白翔は家に帰って郵便受けを見ると1通の手紙が入っていた。
誰なのか確認すると赤松碧波と書いてあり薄い線が引かれていてとても几帳面だなと感じていた。
家に上がって手紙を読んでみることにする。
「白翔へ
体育の授業中に足を捻ってしばらく入院することになりました。誰もお見舞いに来てくれないので旅行も兼ねてお見舞いに来てくれたら嬉しいな」
入院している病院が書かれており、部屋にあるパソコンで家の住所と病院名を検索すると電車で片道6時間弱、もし行くとなれば長旅になると考えた。
母に碧波から届いた手紙を見せて旭川に行ってきていいか尋ねてみた。
夏休みの宿題で絵日記も出てるって聞いたから思い出作りも兼ねて行ってきな。
碧波ちゃんがいつまで入院することになるのか分からないけど退院したら遊んできな。小さい時から仲良しだからね。
こうして白翔は旭川に行くことが決まったが駅から病院まで向かう方法がない。タクシーで向かうにもいくらかかるか見当がつかない。
こればかりは碧波ちゃんのお母さんに迎えに来てもらうしかない。いつ行くかは言われるからそれまでに少しでも宿題を進めようと自分の部屋に戻った。
晩御飯を食べ終わったあと、母から通達される。
碧波ちゃんのお母さんに聞いたら明後日ならいつでも大丈夫だって。だから明日の間に用意とフルーツの盛り合わせ買っておかないとね。
夏休みの初日、泊まる準備と買い物に出かけて少し早めに寝た。始発に乗っても着くのはお昼頃、興奮して中々寝付けずにいた。
白翔は始発の特急電車に乗り込んだ。
すると反対の方から声が聞こえる。
「はくちゃん〜、久しぶり〜元気にしてた?」
こうして碧波のお母さんと合流して車に乗り込む。長旅で疲れて寝ようとしたが学校出何が流行っているの、好きな女の子は出来たと病院に着くまでマシンガントークで気がついたら眠気が覚めていた。
病院について碧波の病室に向かう。同じ北海道といえど距離が離れすぎていて会うのは数年ぶり、緊張した白翔はおそるおそる病室のトビラを開ける。
お見舞い
「白翔、久しぶり。ホントにお見舞いに来てくれるとは思わなかったよ。誰も来てくれなくて寂しかった」
久しぶりに見る碧波はかわいくなっていてもう従姉妹というよりも1人の女の子として見てしまう。
ひとまず買ってきたフルーツ盛りを渡すと碧波はニコッとはにかんでありがとう、せっかくなら一緒に食べようよ。果物ナイフでリンゴを剥きはじめた。
同じクラスに碧波がいなくてよかった、こんなかわいい女の子がいたら間違って好きって言ってた。
そういう意味では従姉妹くらいの関係がちょうどいいのかも、下を向いてそう小声で言っていた。
「ツンツン、ツンツン。ねぇ、白翔どうしたの?リンゴの皮付いてた? それとも何か悩みごと?」
悩みごとは特に。ただ……碧波が前見た時よりもかわいくなってたから同じクラスにいなくてよかったなって。
好きでもない男に好きって言われても嬉しくないでしょ、従姉妹でよかったって思っただけ。
なにその従姉妹でよかったって。碧波は男の子に好きって言われたことないから分からないけど自分に好きって伝えてくれるって嬉しいかな。
それで付き合うかは別として。白翔、好きな女の子いるの?
……。いないよ。同じ学年の女の子が束になっても碧波以上にかわいい女の子いないよ。歳下、それも従姉妹に言われても嬉しくないよね。ゴメン。
碧波は腹を抱えるように笑った。
学年の女の子が束になってもって面白いこと言うね。そもそも学年の女の子全員知ってるの?
歳下でも従姉妹でも碧波はことかわいいって言ってくれるのは嬉しいよ。もしかして白翔は碧波のこと好きなの?
いやいや従姉妹で好きになっても付き合って結婚出来ないでしょ。そこまで勘違いしてないよ。碧波ってそんな人を
「おかーさん、従姉妹同士って結婚出来るの?」
ここはひとり部屋の個室ではなく何人かいる部屋なのに大声でそれも小学生が結婚の話ってどうなのか?
足以外は元気そうでよかったと胸をなで下ろしていた。
これならスグにでも退院出来そうだなと思いつつ病室で同じ部屋で過ごした。
白翔が朝起きると同じくらいのタイミングで碧波も起きる。
碧波が退院したら行きたいところある?
行きたいところか〜……。旭川来るの初めてだし、何があるか分からないからな……。
碧波は夏にプールに行って花火見に行きたいな。ねぇ付き合ってよ。手を繋いで行く?キスしたい?
付き合うってそういう事じゃなくて一緒に出かけるってだけでしょ。それに手を繋いだりキスするのは好きな人とするものだよ。
その日の検査で碧波は退院することが決まって白翔は碧波の家に向かうことになる。
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