第39話

 「な、なんで冬也が謝るの?わ、私が逃げたんだよ。私が嘘をついてたんだよ。冬也は何も悪くない。私が・・・」


 震える声で悪くないと言う莉奈。対して、俺ははっきりと言う。

 

 「いや。莉奈が逃げたくなる程に追い詰めてしまったのは俺だ。だから、謝る。ごめん。その上で莉奈にも謝って欲しい」

 

 「そ、そうだよね。冬也、本当にごめ――」

 

 「俺にじゃなくて、春に謝って欲しい」


 莉奈に嘘を付かれて少なからずそうだと思ってしまい被害を受けたのは、春であって俺ではない。

 

 「分かった。春ちゃんに謝る。でも、冬也。ごめん。急に逃げ出して。本当は。本当はさ」

 

 莉奈は一呼吸、置いてから言う。


 「私が――」

 

 「おにぃ。・・・女子トイレの前で何してるの?」

 

 莉奈が何かを言い切る前に春が会話に割って入ってきてしまって、莉奈の言葉は途中で止まってしまった。

 

 「春?!どうして、ここに?」

 

 「それは、おにぃがどれだけ待っても学校から出てこないから。で、おにぃは女子トイレの前で何してるの?」

 

 「えーと」

 

 果たして、どう説明するのが良いのか。

 女子トイレに籠ってる莉奈に電話をしてました。・・・普通じゃないな。だからと言って、今この場で莉奈が春の事で嘘を付いていた話を追及していたなどと言うと、それはまた莉奈の事を追い込んでしまうのではないだろうか。あくまでも、莉奈には自分のタイミングで春に謝罪をしてほしい。

 今、この場でどう説明しようかと考えていると、莉奈は言う。


 「春ちゃんと二人で話をしていい?」

 

 春に莉奈が二人で話したがっている言うと、二つ返事で分かったと答えてくれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る