第27話
「それで、ね。おにぃ」
楽しそうに学校であった 出来事を俺に話してくる春。
少し前までのピリピリした感じはなく、人は恋をすると丸くなるのかと思う。
しかし、申し訳なかった。
恐らく春は、忠光に会いに来ていたのであろうが、校内に入るのは事前に入校申請が必要であり、部活練習中の忠光に会わせてあげることが出来なかったのである。その事実を春へ伝えるとよほどショックだったのか、ポカーンとした顔をしていた。
「・・・そういえば、莉奈さんは?」
「莉奈?」
いきなり、莉奈の事を尋ねてきた。やっぱり、恋のライバルである莉奈の行動が気になるのだろう。
「今日は何か用事があるって言ってたな」
「そうなんだ」
なんとも言えない歯切れの悪そうな顔をする春。
それもそうだろう。もしかしたら、莉奈は忠光に会いに行ってるのかもしれない。そう考える出し抜かれた様な気分になって、こんな顔になるに違いない。
などと予想していたのだが、実際は「(なんで、おにぃが莉奈さんの予定知ってるの!)」などと、思っているなど分かるはずもなかった。
「そうだ。忠光の夏の公式戦。春も一緒に応援しに来て欲しいんだが。・・・場所がちょっと遠くて」
「分かった。絶対に行く」
場所を言う前に二つ返事で了承する春。
想い人の試合だもんな。どんなに遠くても見に行きたいよな。
少し前に俺は莉奈の恋を応援すると決めたが、それは他の人の恋を応援しないという訳ではない。兄として、妹の恋もしっかり応援する気である。
そんな妹、春は俺の提案を聞いて。
「(おにぃと、遠出デート。おにぃと、遠出デート)」
ご機嫌に横を歩いていた。
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