第19話
おにぃが部屋を出て私の部屋の方に来ると分かって、慌ててしまいコップを落としてしまった。
「どうした?!大丈夫か?」
すると、おにぃが私の部屋へと飛んできた。心配してくれたんだと嬉しくなる。と、同時に盗み聞きを行っていた事への罪悪感に襲われた。
「(盗み聞きはもうやめよう)」
内心でそう決めながら、割れたコップを片付けようとすると。怪我したら危ないからと、おにぃに止められた。
なんて優しいのであろうか。おにぃ大好きである。
そんな親愛なる兄から、莉奈さんが話した事があるらしいと言われ、私は兄の部屋へ向かった。
「・・・兄貴に言われたんので来ました。冬也の妹、春です」
一応、莉奈さんとは初対面なのでしっかり挨拶をした。
「えっと。最近思い出したんだけど、小さい頃に一度だけ顔を合わせた事があったね。春ちゃん」
どうやら、私が忘れていただけで、会った事があったらしい。
「・・・冬也はどうしたの?」
「コップを割ってしまって、それを片付けてくれてます」
「ふーん。じゃあ、少し間は戻って来ない感じか。丁度良いや。実はさ。春ちゃんに頼みたい事があってさ」
何を頼まれるのだろう。話題になっていた忠光さんの話かな?などと考えていた。
「実は私、冬也の事が好きで・・・」
「はぁ?」
思わず、口が開く。
だって、さっきまでの話と違う事を言っているのだからだ。
「あれ?もしかして、さっきの話を聞いてたの。それなら話は早いや。私、本命は冬也なの。忠光君には振られる予定で、忠光君にも了承を貰ってるから」
「・・・」
ポカーンと空いた口が閉じない。閉じれない。
何を言ってるんだこの人は。
「でも、忠光には悪い事をしちゃったな。まさか、盗み聞いされてるなんて思っていなかったから」
後で謝らいと。などと言う莉奈さんに問う。
「・・・それになんの意味があるんですか?」
莉奈さんはここまでの流れを話してくれた。
普通に告白しようとして、怖気づいてしまった事。おにぃが慰めてくれているタイミングで告白しようとしている事。
話を聞いて、本気でこの人が嫌いになった。だって、おにぃの気持ちをもてあそでいたから。
私は気づいている。おにぃが莉奈さんい片思いしている事に。その気持ちを押し殺してまで、莉奈さんの恋が実る様に手をかしているのに。それなのに。
「春ちゃんは私と良い感じに忠光君を取り合って欲しいだけど」
「ふざけた事言わないで下さい!!」
思わず、大きな声を出してしまった。
「ありえないです。なんでそうな風に出来るですか?おにぃの気持ちを考えて――」
「・・・もしかして、冬也に恋してるの?」
「ッ?!」
唐突な図星に怯んでしまった。その事実は私は否定しないといけない事実だから。
「私は妹なのでおにぃに恋なんてして――」
ません。これは兄妹だから。と言うつもりであった。次の莉奈さんの言葉を聞くまでは。
「春ちゃんって確か義理だもんね」
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