第17話

 「夏の公式大会が終わってから。・・・するんだよな。ドキドキ大作戦の続き」


 莉奈に尋ねるとこくりと頷いた。

 

 「じ、実はさ。私、忠光君が片思いしているって話聞いちゃったんだよね」

 

 唐突に莉奈は打ち明けてきた。

 

 「もしかして、冬也は知ってたの?忠光君が、冬也の妹の春ちゃんに片思いしていること」


 「・・・あぁ。、知ってた」

 

 一瞬、誤魔化そうかとも思った。が、ここであえて本人から相談されたのだと言った。それを知って、もしかしたら、莉奈は諦めてくれるんじゃないかと思ったのだ。なんともせこい男である。

 

 「そうなんだ」

 

 「黙ってて、ごめん」

 

 謝ると、莉奈は首を振って。


 「謝らないでいいよ。忠光君から相談されたの勝手には話せないよね」

 

 顔を下に向けたと思ったら、すぐに莉奈は顔を上げて言う。


 「よし!じゃあ、春ちゃんに勝てるように頑張ろう。冬也も手伝ってね」

 

 忠光は片思いしている相手がいると言うのに。

 どこまで一途な莉奈を見て、とても健気に感じた。

 

 出来るだけ手を貸そう。最悪、この恋が実る事がなかった時は。


 「それで。私、一度春ちゃんと話をしてみたくなったんだよ。まだ、帰って来てないかな」

 

 壁にかかっている時計に目をやると、時間的にはもう春が家に帰って来ている時間だった。

 

 「ちょっと、家に帰ってるか見てくるよ」

 

 自分の部屋を出ると同時に、パリンと何かが割れた音が春の部屋から聞こえた。

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