(三)

 翌日、仕事を終えた俺は会社から戻るハイヤーの中で彼女に電話を掛けた。何度もかけたが全くつながらなかった。それに今日の運転手も黒川ではなかった。木曜日はいつも黒川が運転していたハズであった。

 それについて尋ねると、砂田は「さあ、詳しいことは何も」とだけしか答えなかった。砂田も悪い運転手ではない。問題もない。しかし黒川の運転は安心感があった。信頼しているのだと思う。

 そうして車は自宅前に到着して俺は帰宅した。いつもの仕事だけではなく、工場と母の事務所の火災の事後処理に追われ、疲れ切っていた。


(続く)

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