(一)-3

 彼女は「ちょっとちょっと」と顔を赤らめて慌てたが、すぐに俺を受け入れて抱き返してくれた。

「ここは良くてもドレスとか料理がダメなら他にしよう」

 彼女は再び「うん」と頷いてくれた。

 そのあと、式場のコンシェルジュに案内してもらい、ウェディングドレスとモーニングの試着体験をした。化粧まではしなかったが、彼女はいくつもあるドレスを何着か選んで試着していた。

 俺は自分の衣装についてはずっと以前から羽織袴がいいと思っていてコンシェルジュにそう伝えたのだが、「チャペル形式ならモーニングにされる方がいいかもしれません」と祝福を称えた満面の、しかし営業用の笑顔で却下されてしまった。確かにその通りだった。


(続く)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る