問「恋愛は依存症なのか考察し解明せよ」〜俺と幼馴染の恋愛録〜

雑作家ミナト

第1話 幼馴染



「ねぇ、雄馬。私は君に依存していると思う?」


 ギラギラと夏の日差しを浴び、肌が焼き殺されていることにと若干のイライラを先程まで感じていたが俺、桜田雄馬さくらだゆうまは目の前にいる幼馴染、白草日南しろくさひなみの言葉に衝撃を受け、思わず足を止めた。

 なぜこんな急にこんな話になったのか、それを説明するには時間を一時間前に戻す必要がある。



















 一時間前


 雄馬side

 ひと昔前のJpopの音で俺は目を覚ます。

 手探りでスマホを探し、アラームを止める。

 ゆっくりと起き上がって部屋のカーテンを開けると太陽の眩しさが体に注ぎ込まれていく。


「くわぁ~~少し熱いけど、どの季節でも朝日は気持ちいいな」


 体を伸ばしながら、眩しさの中にある暖かさを感じた。

 朝日を浴び終わると部屋着を脱いで夏用の制服に着替え始める。

 ちょうど、着替え終わると。部屋のドアがノックされた。


「お兄ちゃん、起きてる?」


 その声と共にドアが開かれる。

 そこにいたのは俺と同じ黒い髪でポニーテールの妹、深青みおだった。


「あ、起きてたの?お兄ちゃん。おはよう」


「おはよう深青、珍しいなお前が俺を起こしにくるなんて」


 深青は普段なら俺よりも遅く起きてくるので俺が起こしに行っている。

 だから深青が起こしに来てくれたのはありがたいが何か複雑な気持ちだ。


「まぁね〜なんか今日、早めに目が覚めちゃってさ」


「それで俺を起こしに来てくれたのね、ありがとな」


 そう言って軽く深青の頭を撫でて、深青と一緒に部屋を出る。










「あら深青がこんな時間起きるなんて珍しい、明日は大雪かしらw。二人ともおはよう」


 深青と一緒にリビングに降りてくると母さんがキッチンから顔を出す。


「おはよう、母さん」


「ママ、その言い方は酷くない?私だって早起きすることだってあるんだからね!」


 母さんに挨拶を返して席につくが深青は頬を膨らませて母さんに文句を言っている、だがそんなことは気にせず母さんが作ってくれた朝飯を食べ始める。

 まず最初に味噌汁を口にするがやっぱ朝に飲む味噌汁最高すぎる、日本人でよかった。

 味噌汁を飲んでホッとしたところで他のものも食べ進めていく。










「それじゃあ、行ってくる」


「あ、雄馬。祐美ゆみさんのところ行くでしょ、これ返しおいて」


 朝飯を食べ終わり数分後、いろいろと準備を終わらせ家を出ようとすると母さんに呼び止められ紙袋を手渡される。

 祐美さんは俺の幼馴染である白草日南の母親で、家族ぐるみで仲がいい。

 ちょくちょくご飯食べにいったり親だけでどこかに旅行したりといろいろしている。

 そしてたまに、ものを貸し借りしているのでそれの返却・受け渡しを子供にやらせている、正直とてもめんどくさい。


「今度は何を借りたんだよ、韓流ドラマかなんか?」


「よくわかったわね、その通りよ!さすが私の息子!」


 フィンガースナップを鳴らしながらドヤ顔を決めた。

 もう若くねぇんだからあんまり無理s「あんた、今なんか失礼なこと考えてるでしょ」な、なぜわかった!俺の心を読むな!


「・・・そ、そんなことねぇよ。と、とにかく返しておくわ」


「本当に〜?とにかくちゃんと返しなさいよ」


「へいへい、わかってるって。じゃあ、行ってくる」


「私も行ってくる!行ってきます!!!」


 母親との会話を切り上げて渡された紙袋を手に持ち、玄関をあけようとすると中学の制服をきた深青が素早い動きで家を出ていった。


「早いな、あいつ。さすがは俺の妹」


 シスコンっぽいことを言った後、自転車にまたがり白草家に向けて自転車を走らせた。

 ちなみに俺はシスコンではないからな、違うからな。












「おはようございます裕美さん」


「あら、おはよう。雄馬君」


 白草家に到着するとちょうど裕美さんが玄関先を掃除していた。

 裕美さんは俺に気が付くと優しい笑顔で微笑みながら挨拶を返してくれる。


「裕美さん。これうちの母親から」


 そう言って手に持っていた紙袋を渡す。


「あ~貸してたやつね。ありがと、雄馬君」


「いえいえ、いつものことですから」


「また今度いいものが手に入ったら連絡するって言っておいてね」


「はい、母さんに言っておきます。あ、裕美さんたぶんまだ寝てますよね」


 そういうと裕美さんは頬に手をやってやれやれといった感じで首を横に振るう。


「そうなのよ、毎度毎度悪いんだけどあの子を起こしてきてくれない?」


「まぁ、いつもやってることなんで気にしないでください」


 そう言って扉に手をかける。


「ごめんなさいね、まったくあの子は雄馬君がいなくなったらどうするのかしら」


「まぁ、その時はその時じゃないですか?」


 裕美さんの言葉をあまり深く考えずに軽く返して玄関を開けて中に入る。

 靴を脱いで、ゆっくりと二階の日南の部屋に向かう。

 階段を上がるとすぐにあいつの部屋があるのでその部屋の前に立ち、ノックをするが案の定返事が返ってくることはない。

 俺はまぁ、いつもの事かっと思いながら扉を開ける。

 部屋を開けてみると壁一面にびっしりと数式やら俺にはピンとこないような単語が張られ、床にはこれまた何かの数式がびっしりと書かれた紙が散乱していた。

 そしてその紙の真ん中でうつぶせで気持ちよさそうに寝ているのが俺の幼馴染、白草日南である。

 はっきりと言おう、こいつは確実に人間としての生活本能を裕美さんの中に捨てていった。

 俺ははぁ~っとため息を吐いて紙をできるだけ踏まないように日南に近づき


「おい、日南。起きろ、朝だ」


 そう言いながら頬を優しく叩いてやるとくすぐったそうに体を動かすと


「・・・あと1200秒寝かせて」


「・・・いや、わかりずらいわ!!そしてなんで20分も寝るんだよ!いいからとっとと起きやがれ!馬鹿!!!」


 あまりにもわかりづらくあほなことをいう日南にツッコミを入れながら頬を思いっきりつねってやる。


「・・・いひゃい!いひゃい!いひゃい!わかひゃ、わかひゃ!!おきりゅから!!はなひて!」


 涙目になりながら俺の手を叩くので離してやる。


「・・・相変わらず起こし方が乱暴だね、雄馬は」


「お前がちゃんと決められた時間に起きないのが悪い、ほら早く着替えろ」


 そう言って壁にかけてある制服を投げ渡す。


「着替えるという行為自体がめんどくさいから、私は着替えない」


 とドヤッと決め顔で言う幼馴染に殺意を覚えたが俺は顔に手をやってため息を吐く。

 その時、頭の中でとある考えが生まれた。

 そうだ、イタズラしよう。


「はぁ~しかたねぇ、動くなよ」


 そういって日南の前にしゃがみ込む。


「えっ、ほ、本当にす、するの」


 俺がしゃがみ込み服に手をかけると日南は顔を赤くして慌て出す。


「そんなわけねぇだろ、この馬鹿ちんが!」


「痛っ!」


 そう言って額に手刀を喰らわせる。

 手刀を喰らわせると日南の前髪についていた付箋をとって


「どうやったら頭に付箋がつくんだよ。お前さ、そろそろ生活能力を上げてもらっていい?お嫁に行けなくなるぞ」


 額に手を当てて悶えている日南に言葉をかける。

 この何気ない一言が後々にめんどくさいことを引き起こすことをこの時に俺はまだ知らない。


「・・・結婚か」


 俺のその言葉に日南は額に手を当てたまま考えるそぶりを見せる。

 そんな日南の横目に見て、壁にかかっている制服を手に取り手渡す。


「ほら、考えてる暇があったら早く着替えろ」


「・・・うん」


 そういうと日南は制服を手に取っていきなり上を脱ぎ始めた。

 俺は急いで部屋に外に出てる。


「ば、馬鹿野郎!俺がまだいただろうが!」


 そう叫び、頭を抱える。

 あの馬鹿またやりやがった。

 日南は一度物事を考え出すと考え事以外のことを疎かにする。

 なのでたまに風呂の中で考えことをしてのぼせたりさっきのように異性がいるにも関わらず着替え始めたりなど少しアホである。

 そしてこの後、絶対に


「・・・あっ」


「お前、今気づいたのかよ!」


「う、うるさい」


 このように慌てたり照れたりする。

 おそらく今、日南の顔は真っ赤に染まっていると思う。

 いい加減その癖をなんとかしてしろと思いながら俺は階段をゆっくりと降り始めた。










「おっ、雄馬じゃん〜おはよう」


「おはよ、北暖ゆのん姉ちゃん」


 階段から降りるとコーヒーを片手にリビングから出てきたのは北暖姉ちゃんこと、白草北暖である。

 姉ちゃんは俺たちの4歳上で今は大学で化学を専攻していてここ最近、ずっと忙しそうにしていたので会うのは久しぶりだ。


「それにしても久しぶりね、雄馬。まぁ、私がここ最近家に帰ってきてなかったからだけど」


「そうだね、姉ちゃんここ最近ずっと忙しそうだったもん。そんなに大変だったの?」


「あぁ〜やめて、嫌なこと思い出しそうだから」


「あっ、すみませんでした!」



 大学のことを聞こうとしたら、姉ちゃんが頭を抱えはじめ後ろから黒いものが吹き出しているのを感じたので速攻で頭を下げた。


「まぁ、それはいいとしてまた日南のことを起こしにきたの?毎朝大変だね」


「大変だけどそれがもう体に染み付いちゃってるから、起こしにこないとリズムがガタガタになっちゃってさ」


「フフッ、ほんと仲良いね君たちは」


 姉ちゃんはそう微笑んでコーヒーを口に運んだ。

 しばらく姉ちゃんと喋っていると階段から降りてくる足音が聞こえた。


「お、お待たせ。あれ?お姉ちゃん帰ってきたの?」


 制服に着替えた日南が驚きながら降りてきた。


「おはよ、日南。昨日の夜中にようやく帰ってきたの」


「へぇ〜お疲れ様、お姉ちゃん」


「ありがと、日南。このコーヒー飲んだら私はもう一眠りするから、ちゃんと学校行きなよ二人とも」


「わかってるよ、姉ちゃん。日南早く飯食べてこい、その間俺が準備しておくから」


「わかった、おやすみお姉ちゃん」


 日南はそう言ってリビングに向かっていった。

 それを見届けると姉ちゃんに別れを告げて日南の部屋に向かう。


















 日南の学校の準備を終わらせ、下に降りるとちょうど食べ終わったのか口元にケチャップをつけたままリビングから日南が出てきた。


「あっ雄馬、準備してくれてありがと」


「あぁ、それはいいけどお前な」


 そう言いながら口元についていたケチャップを指で拭う。


「ケチャップがついてんぞ、小学生か」


 そう言って俺の指についたケチャップを舐める。

 すると日南の顔が赤くなり始めた、なんでだ?


「どうした?顔赤くして、風邪でもひいたか?」


「な、なんでもない。ほら早く行くよ」


 そういうと俺の持っていたリュックサックを強引にとるとそそくさと玄関に向かっていったがその時に「か、か、間接」と呟きながら走っていた。

 俺は首を傾げ、先に行ってしまった日南を追いかける。


「「行ってきます」」


 そう言って玄関を開け、外に出る。


「全く今日もあちぃな、まだ六月だぞ」


 制服の首元を掴み、パタパタと風を送りながらチラッと日南の方を見てみると


「・・・・」


 口元に手を当てたまま、ずっと何かを考えている。

 こういう状態になった日南には何もしないのが一番だ、だからこの状態になっている日南に俺ができることはこいつの隣で一緒に立ってリードしてやることだ。

 そう思いながら俺は歩き出した。











「・・・ねぇ、雄馬」


 歩いてからしばらくすると急に日南が話しかけてきた。


「どうした?考え事は終わったか?」


「うん」


「今度は何を考えてた?まさか今日話した結婚のことでも考えてたのかw」


 俺が冗談まじりにそういうと、日南が足を止めた。


「急に止まってどうした?」


「ねぇ、雄馬。私は君に依存していると思う?」


 ・・・はい?

 なんか、また変なこと言い始めたこいつ!!!

 俺は立ち止まり、頭を抱えて心の中で絶叫した。














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