大人ランドセル
若草八雲
大人ランドセル 1
画面には五人の男性が映っている。
Vの字で隊列を組んだ彼らは中央の男を除き、スーツ姿で両手を上にあげてVのポーズをとっている。
中央の男だけはどういうわけか黒い海パンとネクタイだけの出で立ちで、やはり他の男と同様にVのポーズをとっている。筋肉質で鍛え上げられた裸体だから見ていられるが異様な光景だなと思う。
「さぁ!みなさん一緒に!」
海パン男が野太い声を上げるとどこからか手拍子が聞こえてきて軽快な音楽とともに男たちが踊り始める。
音楽に合わせ頭上で手拍子をしながら男たちが回転すると、彼らが一様に背中に巨大なハコを背負っているのがわかる。どこかで見た覚えがあるが、思い出せなかった。
「かるーい!おおきーい!せおいやすーい!」
歌にあわせて海パン男が叫ぶ。かけ声の度にスーツ姿のバックダンサーたちが背中でハコをおしあげたり、背負うためのベルトに手をかけたりするのをみて、海パン男がハコの宣伝をしているのだと思った。
「くふうをかさねて〇十年! ×××のランドセルは、ついにここまできました!おとなをしまえるランドセル!」
そうだ、あのハコはランドセルだ。けれども、大人がランドセルを背負う宣伝に何の意味があるのか。
こちらの疑問を無視して海パン男たちのダンスは佳境を迎えている。気がつけばバックダンサーは二人に減っていて、減った分のバックダンサーが背負っていたランドセルは地面に置かれている。かれらはどこにいったのか。
「せなかにぴったり!こころもぴったり!」
海パン男のやけに気合いの入ったバク転に気をとられているうちに更に二人、バックダンサーが消える。
「さあ君も試そう!×××の大人ランドセル!」
海パン男がそういって、背後から私を抱き寄せる。
背後から?
大人ランドセル 若草八雲 @yakumo_p
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。大人ランドセルの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます