天かけるうま

つーお.tzt

天かけるうま

 うまの背中には、つばさがありました。

 小さな、小さなつばさだったので、ひばりや、つばめのように、すいすいと空を飛ぶことは出来ませんでした。

 うまは自由に空を飛ぶ鳥たちを見ては、

「ああ、なんと気持ちの良さそうなことだろう。このつばさで空を飛べればなあ」と、思っていました。

 ある日のことです。うまが散歩をしていると、少女と出会いました。

「こんにちは、おうまさん。薬草を見ませんでしたか」と少女は、いいました。

 うまは、よく効く薬草をしっておりましたので、少女に教えてあげました。

 少女は大変よろこんで、薬草をたっぷり取って帰っていきました。

 それからしばらくたった日のことでした。うまが散歩をしていると、少女がすわりこみ、ほろほろとなみだを流しておりました。

「お母さんが、とおくに行かれてしまうのです。それがとても悲しいのです。」と少女は、いいました。

 うまは少女をかわいそうに思いました。そうして、少女をお母さんのところへ送りとどけてあげようと考えました。

「お母さんのところへ、わたしが連れていってあげましょう。わたしとあなたはおともだちになりましょう」とうまは、いいました。

 少女はよろこんで、うまとおともだちになりました。うまも大変よろこびました。うまにとっては、はじめてのおともだちでした。

 うまのこころにもりもりと勇気がわきあがりました。

 うまの背中に少女がまたがると、うまはつばさをばさりと一振りしました。つばさはしゃんと伸び、太陽のひかりを浴びて、あかあかとしておりました。

 うまはひと声、いななくと空へと飛び上がりました。

 うまのつばさは風をつかみ、うまの足はぐんぐんと空をかけます。

 うまと少女は天高くのぼっていきました。高く高く、のぼっていきました。

 少女のなみだはもう乾いていました。

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