再会

武市真広

 こんな夢を見た。


 私は広い雪原に立っていた。濡羽色の空に青白い満月が遮る雲もなく浮かんでいる。月明かりに照らされて、ずっと向こうに誰かが立っている。どうやら女らしい。女はじっと立ったまま、視線を月の方へと向けている。知らない顔? いや、見覚えのある顔だ。私はずっと前にこの人に会ったことがある。でも、それがいつなのか思い出せない。声をかけようかと思ったがやめた。女は私のことに気づいているのかいないのかわからない。ただじっと月を見つめている。やがて風が吹いて雪が舞い始めた。風は少しずつ強くなっていく。私は女の方に向かって走ろうとした。でも、雪に足を取られてなかなか前へ進めない。届かないと知りつつ、私は手を伸ばした。……吹雪に包まれて視界が少しずつ白くぼやけていく……。


 目を覚ましてからも、夢の出来事は鮮明に記憶に残っていた。あの女は一体誰だろうか? 私は知っているはずなのだ。初恋の人? そうだったような気もする。思い出せないなら思い出さない方が良いのかもしれない。初恋の思い出なんて誰にとっても苦いものだろうから。

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