《泡の能力者》の現代ダンジョン探索譚~成長と覚醒を続ける能力でダンジョンと世界の真実に挑みます~
メルメア@『つよかわ幼女』発売中!!
プロローグ 泡の能力者、目覚める。
第1話 泡の能力者は死神の配信で目覚める。
「どーりゃどりゃどりゃどりゃぁ! うらぁ! おらぁ! ていやぁ!」
荒い言葉をばらまきながら、大鎌を振り回して戦う美少女。
“黙ってりゃかわいいのに戦ったらうるさい死神”という、長ったらしく褒めてるんだか貶してるんだか分からない異名をつけられた探索者、
彼女は定期的に、ダンジョン内で自らが戦う様子を動画サイトで生配信している。
その見た目と性格のギャップ、そして彼女自身の強さが人気を呼び、チャンネル登録者はつい先日100万人を超えた。
俺――
「これでとどめじゃぁぁぁ! 【蒼炎鎌】!」
青い炎を刃に宿した大鎌が、巨大なムカデ型モンスターの腹部に直撃する。
モンスターの体は硬く、キンッと音がして一瞬刃が止まった。
しかし、御堂有栖は気にすることなく大鎌を振り抜く。
「はぁぁぁぁぁ!」
硬い体に刃が食い込み、そしてズバンと一気に突き抜けた。
巨大ムカデの体は真っ二つになり、そして砂になってさらさらと消えていく。
モンスターはどんなものであれ、倒れると砂となって消えるのだ。
「よっしゃぁぁ!」
見た目には黒髪清楚な美少女が、汗が流れ落ちるのも構わずにガッツポーズを決める。
ここまで行くとすがすがしい。そしてかっこいい。
彼女はカメラの方を向くと、汗を拭って言った。
「いつも応援してくれるみんな! 今見てもらった通り、とうとうこの中ダンジョンを踏破できたよ! 本当に嬉しい!」
おめでとうというコメントと共に、大量の投げ銭が放られる。
かくいう俺も、わずかながら自分にできる最大限の金を貢ぐのだった。
「ちょっと自分語りさせてもらうと、私の炎の能力ってそこまで強いものじゃなかった。手に入れた当初はね。だけど私は探索者になりたくて、必死に頑張ってきたの。毎日毎日訓練をして、ようやくここまで来れた」
30年前。
地球にダンジョンが現われ、それと同時に特殊な能力を授かる人が現れ始めた。
能力者は時を追うごとに増加し、今では誰もが何かしらの能力を持っている。
しかし能力は自分で選べない。
炎の能力がほしいと思っても、水の能力が与えられる。そんなケースが大抵だ。
しかも能力者にも才能というものがある。
同じ炎の能力者でも、ろうそくくらいの炎しか出せない人もいれば、災害級の力を持つ人もいるのだ。
「私って多分、才能はそんなになかったんだと思う。だけどね、努力で才能は補える! 私がその証明だよ! だから才能がないって思っても諦めないでね!」
目の前で自らの目標を成し遂げた者の言葉には、とてつもない説得力がある。
コメント欄、感動の嵐。全米ならぬ全俺が泣いている。
「えへへ。偉そうなこと言っちゃったな」
御堂有栖は照れくさそうに頭をかく。
ほんと、戦ってなきゃかわいいんだよな。戦ってなきゃ。
「さあさ! 私はまだまだ止まらないよ! 次の目標はさらに高いレベル、大ダンジョンでも戦えるくらい強くなること! そして最終的には……」
一度、言葉を切って。
そして彼女は言い放った。
「《
ダンジョンが現われて以降の世界を、人々は新世界と呼ぶ。
そのどこかに眠り、見つけた者に莫大な力をもたらすと言われているのが《
世界中の猛者たちが、懸命にそれを探し続けている。
実際、いくつか手がかりも見つかっており、世界的なダンジョン研究機関もその存在を否定していないため、実在することは確かなようだ。
「今日の配信はここまで! それではまた次回お会いしましょー!」
笑顔で手を振って、配信が終了する。
スマホを頭の横に置き、俺は天井を見上げて深く息を吐いた。
俺は今18歳。高校を卒業し、大学に入学……できなかった。
絶賛浪人中の身だ。
つまり俺は、ダンジョンが現われる以前の世界を知らない。
俗に言う新世代の若者なのだ。
そして俺もまた、御堂有栖と同じように、人類の例にもれず能力を持っている。
でもなぁ……
「【
天井に向けて伸ばした右手の先に、野球ボールくらいの大きさの透明な泡が浮かぶ。
これが俺の能力。泡。
例えば炎なら、モンスターを焼き払うことができる。
でも泡だぜ? 泡でどうやって戦えっていうんだ。
自分の能力に気付きそう思った俺は、探索者になるとか《
しかし。
――努力で才能は補える! 私がその証明だよ! だから才能がないって思っても諦めないでね!
御堂有栖の言葉が、頭の中で繰り返し再生される。
「才能を補う努力……してみるか」
不思議とそんな気持ちになっていた。
もしかしたら、目の当たりにした御堂有栖の配信に感情を揺さぶられ、ちょっとテンションが上がっているだけかもしれない。
でもそれでもいい。
どうせ大学の再受験なんて1年先なんだし、時間は大量にある。
探索者っていう夢を、本気で追いかけてみるのも悪くない。
予備校の講師が聞いたらブチギレそうなことを考えつつも、俺は泡の能力を極めてみようと決意するのだった。
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