テスト
球技大会を総合2位で終えてから一カ月が経ち、私たちは中間テストに向けて勉強をしていた。私と雅はそこそこに勉強はできる方だが、紫音と一花はあまり得意ではない。
なので、現在私たち四人は学校の図書室で勉強をしていた。
「うひぃ~。全く分からない~」
「ほら一花。そんなこと言ってないでちゃんと頑張りなさい。愚痴なんて言っても覚えられないんだから、頭と手を動かしなさいな」
「そんなこと言われても、うちは勉強苦手なんだもん」
「白玖乃と紫音を見習いなさい」
一花と雅はそういうと、二人そろって私たちの方を見てくる。
因みにだが、雅は球技大会が終わってから、私たちを呼ぶ際は呼び捨てで呼ぶようになった。
「紫音、ここ間違えてる。ここはこの公式を使ってもう一度計算してみて」
「わかった。……お、できたよ!白玖乃!」
「偉いね。その調子で次の問題も解いてみて」
私はそう言うと、紫音の頭を軽くなでながら次の問題も解くように伝える。紫音はすぐに問題を解くため教科書を見始める。
「ねぇ、雅。あそこだけ雰囲気が違くない?」
「そうね。前までも距離は近かったけど、大会以降はさらに近くなった気がするわね。
まぁ、二人のことは彼女たちに任せて、私たちも勉強を続けるわよ」
「はーい」
その後私たちは、図書室の利用可能時間が終わるまで四人で勉強をした。
テスト勉強を始めて一週間と少しが経ち、今日からいよいよテストが始まる。
テスト期間中は4時間目で学校が終わるので、寮やアパートに帰った後は翌日のテストに向けて復習などができる。
期間は3日間で行われ、4日目と5日目でテストの返却と問題の解説がされる。
そして、5日目が終わるといよいよ夏休みが始まる。
そうして行われているテストだが、期間中の紫音はなぜかメガネをかけていた。
「紫音、何でメガネかけてるの?」
「ん?あぁ、そういえば教えてなかったっけ?
私いつもはコンタクトなんだよね。そこまで悪いわけじゃないから、コンタクトつけなくてもあんまりメガネかけないから忘れてたよ。
今日はコンタクトがなかなか合わなかったからメガネにしたんだ」
「そうだったんだ」
私はそう話す紫音のメガネ姿を見て、何故か以前に見たことがある気がした。
(何でだろう。初めて見たはずなのに、前にどこかで見たことがあるような…)
そんな事を考えながら紫音のことを見ていると、さすがに気になったのか紫音が少し照れながら尋ねてくる。
「そんなに見られると恥ずかしいよ。もしかして変だった?」
「ううん。メガネの紫音も新鮮でいいね。似合ってるよ」
「ありがとう」
私がそう言うと、紫音は嬉しそうに笑った。その笑顔を見た私は、さっき感じた疑問についてはとりあえず保留にして、私も今日のテストに向けて最終確認をするのであった。
3日後。テスト期間は昨日で終わり、今日からテストの返却と問題の解説がされる。
私が返ってきたテストの点数を見ながら安堵していると、一花が振り返って点数を聞いてくる。
「白玖乃、テストどうだった?」
「まぁまぁかな。一花はどうだった?」
「雅のおかげで何とかなったよ。これで気兼ねなく夏休みを迎えられるね」
「お互い何事もなくてよかったね」
私はそう言いながら、改めてテストの結果に目を通す。
(ふぅ。なんとかそれなりの点数は取れたかな。紫音はどうだったかな)
紫音のことが気になった私は、彼女の方をチラッと見てみる。
すると、紫音もちょうどこっちを見ていたようで目が合った。
そして、私の方に笑顔を向けながら口だけを動かして喋りかけてきた。
何と言っているのかは分からないが、笑顔なことと、口の動きが『大丈夫だった!』と言っている気がしたので、問題なかったようだ。
(あとでちゃんと話を聞いてあげよう)
嬉しそうな紫音を眺めながら、私はそんな事を考えた。
全てのテストが返却された日の放課後、私たちは学校の近くにあるファミレスでまったりしながらテスト結果と夏休みについて話していた。
「それにしても、テストは本当に白玖乃と雅に助けられたね」
「うちらだけだとどうなっていたことか」
「みんな無事、補修もなく夏休みを迎えられて良かったわね」
雅が言ったように、今回のテストでは誰も補習になる事はなく、無事に夏休みを迎えることができた。
「さて。その夏休みだけど、みんなはどうする予定なの?」
「私は後半の二週間で実家に帰る予定よ」
「あ、うちと一緒じゃん。白玖乃と紫音さんは?」
「私は白玖乃予定を聞いてから決めようと思ってた」
「私は後半の一週間だけ帰る予定だよ」
私の家は県内にあるため、他の3人よりも近いので帰省期間も短くしている。
「そうなんだ。なら私もそのあたりに帰ろうかな?」
「いいの?紫音は私と違って実家も遠いし、気にしないで帰ってもいいんだよ?」
「別に大丈夫だよ!確かに家にも帰りたい気持ちはあるけど、白玖乃一緒にいる方が私にとっては大事だし!」
紫音はそう言いながら、眩いほどの笑顔を向けてくる。私は紫音が私を気にかけてくれた嬉しさと、大事だと言われたことへの恥ずかしさで顔が熱を持つ。
(前までは同じこと言われても恥ずかしくなったりしなかったのに、最近なんか変だな。)
球技大会以降、私は紫音の行動や発言を妙に意識してしまうようになった。そのせいでいつものように返すことができず、変な反応をしてしまう。
そんな私たちを一花と雅は微笑ましい何かを見るような目で見てくるが、それに対応する余裕もない。
空気を変えたかった私は、少し慌てながら夏休みの話をすることにした。
「そ、それより、みんな最低でも夏休みの前半は今まで通り生活するんだよね?なら、せっかくだし遊びに行かない?」
「それもいいね。ならうちはみんなでプールとお祭りに行きたい!」
「あら、いいわね。私も行きたいわ」
「なら両方行っちゃおう!!」
こうして、何とか話の流れを変えることに成功した私は、みんなと一緒に夏休みの予定を立てて行った。
翌日。今日からいよいよ夏休みが始まるわけだが、特に何かが変わるわけではない。
紫音とはいつも一緒にいるし、精々二人でいる時間が増えるだけだ。
「白玖乃ー。そろそろおきな?お昼近いよ?」
「んー。もう少し…」
「ひゃ?!」
私は紫音に声をかけられながら揺すられるが、まだ寝ていたかった私は起きることができない。
むしろ私のことを揺すっていた紫音の手首を掴むと、ベットの中に引き込んで抱きしめた。
「紫音あったかくて柔らかい…」
「白玖乃くすぐったいよ。あとそこ胸だから恥ずかしいんだけど…」
紫音が何か言っていた気がするが、心地よい抱き心地には抗うことができず、また微睡の中に意識を落とした。
それから数時間後、私は少しの暑苦しさで目が覚めた。
「んぁ、暑い」
私はそう言いながらゆっくりと目を開けると、何故か近くに紫音の寝顔があった。
少しずつ意識が覚醒してきた私は、今の状況を確認してみる。
(な、何で紫音が私を抱きしめて寝てるんだろ。それに私もなんか抱きしめてるし…。何があってこうなったんだろうか)
いつもは紫音の方が早起きしているため、こうやって朝を迎えるのは初日以来だ。
それに、最近は変に彼女を意識してしまっているため、恥ずかしさから顔が熱くなる。
私が一人でどうしたらいいものかと考えていると、紫音が目を覚ました。
「…あれ?私、寝ちゃったのか…。あ、白玖乃。おはよ」
紫音はそう言いながら、綺麗な顔を私の至近距離で微笑ませる。
まだ寝起きの彼女は、目が蕩けており、妙な色気と可愛さがあった。
それに、同じシャンプーなどを使っているはずなのに、彼女からは私とは違ったとても良い香りがして、それが私をさらにドキドキさせる。
私はそんな彼女の色気に当てられ、言葉を詰まらせながら返答する。
「お、おはよ紫音。あの、できればこの状況を説明して欲しいんだけど…」
「んー?覚えてないの?私が白玖乃の事を起こそうとしたら、白玖乃が私をベットに引っ張ったんだよ?
離れようとしたら抱きしめてきたからどうする事できなくて、気づいたら寝ちゃってたみたい」
どうやらこの状況を作り出したのは、寝ぼけた私のようだった。
紫音は説明を終えると、私の背中に回していた腕を離してベットから体を起こし、大きく伸びをする。
「さてと。少し遅くなっちゃったけど、お昼作ったから一緒に食べよ?」
紫音はそう言いながら私に微笑む。私もベットから降りて彼女の近くに行き、お昼を食べることに了承すると、彼女が作ってくれた物をテーブルに運び、私たちはお昼を食べた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
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