第23話 魔女との邂逅

「私が政府から特別に依頼を受けた、そうね…今はリリィと名乗っておくわ!」


 胸を張ってそう名乗るリリィ、だが胸は無い。残念。


「あぁ~カガミっすよろしく~」


 ここに到着した時点で、彼女の存在に気が付いていた渉。


 今回のような事件で、彼女達魔女の登場は予想していた。存在はもちろん公表されていない。が、イギリス政府が秘匿する切り札の一つ。そんな存在の情報だけは耳にしていた。当然現場に居るだろうと考えていたのだ。


 確かに彼女は美人に含まれる。だが成長すればと枕詞が着くのだ。


 服装は現代の魔女らしくしたのか、鍔が広い黒のとんがり帽子、膝上丈の黒いコートに黒のミニスカートを隙間から覗かせる、黒のニーソックスに、黒のローファーと全身黒ずくめ。そんな見た目にプラチナの長い髪が輝いている。瞳は翡翠。


 成長が楽しみな少女であった。が、


 渉は期待していた。絶世の美女を!!!(ボンキュッボーンを)

  

 だが、見た目がおこちゃまであった。なんともやる気の無い返事をする渉。彼の中では期待を裏切られて事となっていたのだ、毎度毎度失礼である。


「ちょっと!なんなのその態度は、見た目はこんなでも中身は数十年を生きる魔女なんだから敬いなさい!」


 いちいち語尾が強いリリィ。だが、そんな台詞を聞いた事で、成長が見込めない現実を理解した渉。やる気はさらに下がっていく。


「あ~はいはい。よろしくお願いしますね(ロリババァ)ボソ。まったく、外見年齢に精神年齢が侵されてるじゃないか、そんなんで大丈夫なのか?」


「大丈夫に決まってるでしょ!あんた何様よ!それと何だか失礼な事言わなかった!?」


 どう見ても精神年齢まで若くなっているいリリィ、何様と聞かれ思わず「加賀美さま」「渉さま」と答えようとして踏み止まる。もっとも渉の考えや行動も、年齢相応では無かった、どんぐりの背比べである。


 異世界と地球を行き来する渉。その過程で過ごした年月は、余裕で100年を超えている。

 200年を超えてからは、面倒になり数えていない。見た目詐欺はお互い様だが、渉からすれば重要なのは見た目。成人していれば年齢を気にすることは無い。だが見た目が子供の相手はしないのである。


「まあいいや、取り敢えずそこに座って、話の続きをするから」


「ふん!」


 そんな二人の様子に、他の者達は呆気に取られている。渉がパンパンと手を叩き注目を集めると、我に返った皆が渉を注視する。


「では、話を進めていきます、今回このエリアに発生した現象は簡単に言えばダンジョン化ですね」


「ダンジョンって、古い遺跡とか王家の墓とか、盗掘対策で作られる迷路のこと?」


「それもダンジョンですが違いますね、今回は異世界化したことで発生したダンジョンなので、全く別物です。ゲームのダンジョンに近いと考えてください」


「異世界化とかゲームとかって、どういう事よ!?」


 もっと訳が分からないとばかりに聞いてくるリリィ。


「おそらくこの地下に迷宮が広がっています。地表に現れたモンスターはその影響でしょう。別の言い方をすれば地上の一部もダンジョン化している。このエリアだけが地球であって地球でない場所。変異したエリアとなっている。ということです」


「この現象は地上だけでは無く、地下にまで広がっている。というのか?」


 何となくではあるが理解したのか、真剣な顔で渉に聞く指令。


「その通り、どちらかといえば、地下で発生している事が主になりますね。氷山をイメージしてください。見えるのはごく一部、実際海面下を含むとかなり巨大となります。まさに氷山の一角ですよ。で、そんなダンジョンですが核があります、なのでそれを破壊して下さい。まあ、言ってしまえばダンジョン攻略ですね」


「そんな…我々に地下のダンジョンを攻略しろと…だと。だがどうすればいい?あのエリアに我々は長く滞在できない。そんな場所を攻略しろだと!?影響を受けない場所から、穴でも掘ってそのダンジョンとやらに侵入するのか!!どんな危険が待ち受けているのかも解らんのだぞ!そんな場所へ仲間を向かわせる事など出来る筈がない!」


「そうですね、危険はあります。ですが、攻略しないと範囲は広がるばかりですよ?元を正さないと影響は消えない。安全を考え範囲外から穴を掘る。それも有りですが時間が掛かる、恐らく一度掘った穴は塞がってしまうので、お勧めはしません。ですが安心して下さい。入口については、すでに発見の目処は付いていますから」


 捲し立てていた指令に対し、冷静に答える渉。だが問題がある。エリアに入る事で皆、体調を崩してしまう。この不調の原因を究明しなければ、攻略以前の問題であった。


「体調不良についても問題ないですよ、私が何とかします」


「なんだと、原因が解ったというのか?」


「ええ、原因は魔素。いわゆる魔法や魔術の根源、魔力の素ですね」


「そんな物我々は知らん!当然対処の仕方も解らん。いや人類のほとんどが理解できんぞ!」


 憤る指令、喉が渇いたのでコーヒーを華美にたのむ渉、そんな二人を見つめ話を切り出したのはリリィであった。


「で、どう対処するの、魔素ってことは空気と一緒でしょ?この世界にものに、どうしてこのエリアでは人体に影響してるのよ!?密封して酸素ボンベでも担いでいくのかしら!?」


「一つ目の質問、このエリアに発生している魔素は『別の世界の魔素』だからです。別の世界から来たソレは、この世界では有り余っている魔素で急激に成長した。取り込み変化するこで対応している。ですが普段私たちが吸っている空気、それにほんの少し異物が混じった。それだけで人は体調を悪くするのですよ。知ってますか?その変化は人体に毒となるんです。そして二つ目、ボンベも有りですが、重さは行動を阻害しますし、活動時間を考えるとお勧めできません。なので、私が奥の手を使います。安心して下さい」


「その方法を聞くことは?」


「もちろん秘密です、ですが必ず活動できるので安心して下さい」


「っ!」


 受け取ったコーヒーをすすりながら、自信満々に答える渉。魔女であるリリィは当然その方法が気になった、だがプライドがその先を聞く事を許さなかった。


 魔女にもそれぞれの秘術がある、それは他の魔女にさえ当然秘密だ。そんな秘術を聞き出すこと、魔女として出来なかったのだ。


「まあいいわ、活動については貴方がなんとかする。それでいいとして、入口はどうするのよ、実際中央までドローンとかで確認したけど、それらしい入口は無かったわ!」


「問題ないですね。すでに入口に繋がるヒントは現れましたから」


「ヒント?現れたって何よ!分かるように説明しなさいよ!」


 やれやれといった雰囲気をかもしだし、首を横に振る渉。それがリリィの感に触ったのか、今にも殴り掛かりそうである。


「少しは自分で考えてくださいよ、いいです?今回このエリアに現れた存在は1体、そして他と比べるとかなり強い存在、そして他のモンスターを従えている。もう解りますよね?」


「分かる訳ないでしょ!」


 右手が唸り、渉の頬に叩き込まれた。かに見えた、が、すでに渉はカップを手に移動していた。「それは残像だ」などと恰好付けているが、少し中身が漏れ、渉に掛かっていた。

 周りの面々は、一瞬何が起こったのか理解できなかった。だが笑い声が聞こえて来ると、そちらを向く。そこには呑気に佇む渉が居た。


「酷いですね、いきなり殴りかかるだなんて。お陰で少しコーヒーが零れてしまったではないですか」


「うるさいわね!回りくどいのは嫌い!さっさと答えなさい!」


「はぁ~これだから(おこちゃま精神は)…」


「何よ!さっさと言いなさいよ!」


「では説明しますかね~、今回現れたトロールですが、ダンジョンの準備が整った事で発生したと考えられます。ダンジョンって人の魂を餌にして、より巨大になっていくんですよ。でも、生まれたばかりで、簡単に人が入って来て核を壊されたら意味が無い。で、蓋をして周りの魔素を取り込みながら準備するんです。準備が整えば後は迎えるための入口を作る。ですが今回は地上がすでにダンジョンの1階となっていた。ダンジョンは1階と2階を繋げるための存在が必要となる。進むための条件付け、いわゆる門番ですね~。そんな存在をゲームとかで何と言うか知ってますか?それはって呼ばれてるんですよ。そしてそんなボスを倒すとどうなるか、今回場合はダンジョンのエリアボスなので、次のエリアへ進むため。つまりは倒すことで進む扉が現れるんですよ、理解できましたか?」


「「「「「まったく理解出来ない」です」」」」


「あれ~?」


 長々と話したのに、その場の全員から否定された渉。


 渉は悩む、そして片言でこう言ってきた。



「トロル・タオス・ドビラ・ヒラク・ススム・オーケー?」



 全員からいろいろな物を投げつけられる渉、当然の結果である。







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 読んでくださる方々へ


 お読みくださる方々。いつもありがとうございます。

 自身でも、読みづらさを感じ、文章に厚みを設けようと努力をしています。

 厚みの結果、くどく成る言い回しになっているかもしれません。今後も努力していきますので、よろしくお願い申し上げます。











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