②魔法少女のヒモ
青井かいか
プロット
〇参考作品
『僕のヒーローアカデミア』『チェンソーマン』他、代表的な魔法少女作品など(世界観構築について参考)
〇世界観
ベースは現代だが、『悪魔』『天使』『魔法少女』などが存在して世間にも認知されている。悪さをする悪魔を、天使と契約した魔法少女たちが倒して平和を守っている。
<用語>
【悪魔】
人間の罪悪を元に発生する存在。自律的に罪悪を犯し、また人間の罪悪を誘発する。
悪魔の姿形は、悪魔を構成している罪悪の種類によってそれぞれの特徴を有することが多い。このように特徴の差異が出るのは、「
悪魔の発生を促す罪悪には『主観性罪悪』と『客観性罪悪』の2種類ある。
『主観性罪悪』:自己が認知する自己の罪悪。
『客観性罪悪』:とある個人に対して当人以外の他者が認知する罪悪。
【魔人】
理性と知性を獲得した悪魔。基本的に人型なので、魔人と呼ばれる(ほとんどの悪魔は人型以外の形を取る)。魔人の数は悪魔全体の1%にも満たない。
【天使】
天上より降臨し、悪魔に対抗するチカラを人間に与えるとされている存在。
本来、人間と似た姿形をしているが、多くの天使が人間の愛玩対象となるような動物やぬいぐるみに似た外見に自身を偽装している。理由としては、人間に近い姿のままだと人間と恋に落ちてしまうため。天使は純潔であらねばならない。
【堕天使】
人間と情を交わした天使。
【魔法少女】
天使に選ばれてチカラを受け入れ、悪魔に対抗する存在。そのほとんどが純潔の乙女。
現代日本において、魔法少女に対しては超特例的な『魔法少女特別制度』が適応される。この制度により、魔法少女活動は公務として扱われ、国から給与が支払われる。18歳未満の場合、給与の受け取り対象は保護者になるが、本人の意思で18歳になった時にまとめて本人が受け取ることも可能。その他にも、魔法少女という特殊過ぎる存在を保護、支援、確立するための様々な内容が統合されたご都合制度。
未成年を危険な悪魔と戦わせることについては批判の声もあるが、悪魔に対抗するためには魔法少女に頼るしかないのが現状。
【
人間が元初に犯した十三の大罪のこと。
犯した順に『自愛』『無垢(無知)』『色欲』『強欲』『暴食』『傲慢』『憤怒』『愚痴(愚盲)』『虚飾』『嫉妬』『憂鬱』『怠惰』『自棄』。
【
十三の元罪の化身。この世に十三体いると言われている。人間が罪悪を犯し続ける限り、厳密に元罪悪魔が消滅することはない。
【
人間が人間たるために必要な十二の美徳。
重要な順に『慈愛』『純潔』『知恵』『希勇』『節制』『慈悲』『誠実』『勤勉』『救恤』『謙譲』『忍耐』『聡明』
【
十二の美徳を司る大天使たちのこと。どの時代にも十二人いる。
大天使と言えば基本的に十二大天使を指す。
魔法少女と契約する天使の階級は、低い順に『
【魔法】
科学体系とは異なる魔法体系に則った超自然的な現象を引き起こす超能力のこと。
厳密には、天使が使うチカラを『天法』、悪魔が使うチカラを『魔術』と呼ぶ。この2つを合わせて魔法。
【天魔管理協会】
魔法体系に則った超常存在の管理を担う独立組織。世界各国に支部を持つ。天使はここから派遣される。謎が多い。
ニホン支部は、ニホン政府とも深く結びついている。
通称『協会』。
【女神様】
全ての天使たちの長とされている存在。
○キャラクター
<メインキャラクター>
【
男。17歳。高校一年生(二留)。長身。灰色の髪。超美形。アキラは〝愛喜楽〟と書く。
一人暮らしをしていたが悪魔に家を燃やされる。
半悪魔。人間と悪魔の間に産まれた。が、人間として育った。右目だけが、悪魔の象徴である『
軽薄。非常に怠惰でやる気がない。
幼なじみの女の子(ちょっと天音に似てる)を自棄の悪魔のチカラで自殺に追いやったことがある。それ以来、自分の存在を無価値以下だと思うようになり、自棄になった。怠惰なのは元から。
ヒモ気質。ダメ人間。女好き。女たらし。
【
女。15歳。高校一年生。一人暮らし。小柄。銀髪(セミショート)。美少女。
半天使。人間と堕天使の間に産まれた。
母親は元々純潔を司る十二大天使の一人だったが、とある人間の男と恋に堕ちて堕天した。その男が天音の父親。
しかし、天音が小学二年生の時、父親が
成績優秀運動神経抜群で、基本スペックはかなり高い。それ故に大抵のことは一人で軽々とこなせてしまうし、一人で全部やってしまう方が効率が良いと思っている。真面目。一人で抱え込むタイプ。世話焼きの素質あり。
悪魔を深く憎んでる。悪魔なんて全て消えてしまえばいい、と。
半天使という特殊な出自も、天音が感じている疎外感、自ら壁を作る要因の一つになっている。半天使は堕天の象徴でもあるので、その事実を知る天使や魔法少女からは奇異の目で見られることが多い。ただ、天使や魔法少女以外で天音が半天使であることを知る者は少ない。
自分の内側に人を入り込ませないだけで、外面はかなり良い。
悪魔の根絶とアモデウスを探し出す事が目的。
【
女。14歳。中学三年生。魔法少女(見習い)。
天音に憧れている。
借り受けた天使のチカラの影響で髪がピンク色。ツインテール。背丈体型は標準的。
【ピヨ太】
桃香の契約天使。
普段はデフォルメされたニワトリの姿をしている。
真名はミカエルで、慈愛を司る十二大天使の一人。
【ディア・マイラ】
自愛の元罪悪魔。
真愛を憎悪して復讐を誓っている。真愛に復讐するため、アキラに目を付ける。
<サブキャラクター(一巻での本登場は無し)>
【
アキラの母親。
元・魔法少女。魔法少女時代の契約天使はピヨ太。
絶対最強の魔法少女と謳われていた。
現在は、逃亡中のデスペイアを探して世界中を飛び回ってる。
【ディア・デスペイア】
アキラの父親。
自棄の元罪悪魔。
真愛の愛の重さに耐えきれずに逃亡中。
【ディア・アモデウス】
色欲の元罪悪魔。
過去、純潔の大天使を堕とした男に興味を持って、誘惑した。
○物語構成
<一巻のあらすじ>
怠惰に自由に自棄に生きてきた半悪魔のアキラが、悪魔被害に遭い、家や財産を失って路頭に迷う。
そんな彼を、悪魔を憎んで一人で抱え込みながら戦ってきた半天使の魔法少女の天音が拾って飼うことになる。
二人は一緒に時間を過ごすようになり、やがて、互いを自分にとって特別な存在だと感じ始める。
<各章の概要>
【プロローグ】
天音に飼われるアキラの日常と世界観の紹介。一章と二章の間の出来事。
【一章】
アキラと天音の出会い。路頭に迷うアキラを天音が飼うことになる。
半悪魔であるアキラが〝人間〟なのか〝悪魔〟なのかを責任持って見極める、という理由。
【二章】
色々と特殊な魔法少女である天音に対して、普通の魔法少女である桃香が登場。天音に窮地を救われて、桃香が天音に懐く。
しかし、半天使である自身の身に引き目を感じて桃香を突き放す天音。そこでアキラが二人の間を取り持つ。
天音に友だちができる。
【三章】
アキラの母親に恨みを持つ自愛の元罪悪魔マイラが登場。復讐のためにアキラを狙うマイラが、天音に取り引きを持ちかける。アキラの身柄を引き渡す代わりに、天音が探しているアモデウスについての情報を渡す、という取り引き。
天音は、アキラにも桃香にも頼らず、相談せず、一人で抱え込んで何とかしようとする。
アモデウスに完敗して殺されかける天音を、アキラが助ける。
天音がアキラに惚れる。
【エピローグ】
新しいアキラと天音の日常。アキラに対する天音の好感度が上がったために、本格的にヒモと飼い主っぽい関係が出来上がっている。そんな二人を心配する桃香。賑やかな日常。
一方で、アキラが胸中に秘める闇をチラつかせて二巻への引きを作る。
<アキラに起こる変化>
『自分には価値がないと思っている。自分の人生がどうなっても別に構わないので、自由に怠惰に好き勝手に、ただ死なずに一人で時間を消費してる』
↓
『衣食住など生活面の全てで天音に依存し切る。胃袋なども掴まれて天音無しでは生きられなくなる。内心で自分自身に価値がないと思っているのは変わらないが、自殺した幼なじみにどこか似ている天音に特別な想いを抱き始める』
<天音に起こる変化>
『悪魔を退治する魔法少女として、一人で戦っている。優秀故に全部自分でやるのが最も効率的だと思っていて、色々と一人で抱え込みがち。今までそれで何とかなってきた。孤高。ある意味では、頼れる相手がおらず孤独。そもそも誰かに頼るという思考がない。悪魔を深く憎んでいる』
↓
『表向きのアキラへの厳しい態度はあまり変わらないが、彼に対して深い情を覚えるようになる。心底から認める訳ではないがアキラに惚れる。アキラを捨てる、処分するという選択肢が天音の中から消える。こんなどうしようもなくだらしないアキラを支えてやれるのは自分しかいないと思う。孤独じゃなくなる。少しだけ他人に頼れるようになる。アキラの存在に精神的に深く寄りかかる』
<各章の詳細>本文の総計は約12万字
【プロローグ】約5千字
朝、惰眠を貪るアキラを厳しく罵倒しつつ、引きずって学校に行かせようとする天音。
登校中に出現した悪魔を魔法少女として無慈悲に殺す天音。半分悪魔の身としておっかないなぁ……と思うアキラ。
【一章】約3万5千字
〈1〉
長閑な春の朝、アキラがのんびりと学校に向かっている。
車に轢かれそうになっている猫を見かけて、我が身を顧みず路上に飛び出すアキラ。猫を抱くアキラに車が衝突する直前、それを目撃した天音が魔法を使って、アキラと猫を念力的なチカラで引き寄せて助ける。
「バカなんですか!?」と、アキラを叱りつける天音。「いやー、助かった」とヘラヘラしながら礼を言うアキラ。変な人だ、でも悪い人ではない、と思う天音。
着ている制服から、天音が同じ高校の新入生だと判断するアキラ。共に学校に向かう二人。
俺はもう三年目だから、分からないこととかあったら聞いてくれ、的なことを言うアキラ。そんなアキラの言葉から、彼を三年生だと思い込む天音。アキラのことを先輩と呼ぶようになる。
〈2〉
新入生で賑わう校門前で、アキラと天音は別れる。アキラは、俺は先生に呼び出されてるから、と何処かへ行く。
入学式を終えて、自分の教室に向かう天音。賑わう教室。魔法少女として有名な天音に気付いて話しかけてくる者もいる。外面を作って無難な対応をする天音。
HRが始まり、自己紹介が始まってしばらくしたところで、アキラが入ってくる。驚く天音。
アキラが自己紹介をする。アキラが二回留年していて、一年生をやるのは三回目だと判明。アキラが超美形なのも手伝って、大いに目立つ。熱い視線を向けてはしゃぐ女子たちと、そんな女子たちの反応を見てアキラに嫉妬しているっぽい男子たち。
〈3〉
HRが終わって、空腹のために食堂へ行こうとするアキラだが、サイフもスマホも家に忘れてきたことに気づく。そもそもカバンを持ってきていない。
大勢に取り囲まれつつも、外面の笑顔を作って、用事があるからと帰ろうとしている天音を追って話しかけるアキラ。昼食代を貸してください、とお願いする。
知り合ったばかりで図々しいアキラに、先輩は非常識です、と少し説教モードに入る天音。
アキラは、それじゃあ仕方ないと、付近にいて先程からずっとアキラを見つめていたクラスメイトの女の子に借りようとする。大人しくて気弱そうなその子が赤面するのを見て、心配になった天音が、お知り合いですか……? と尋ねる。今知り合った、と答えるアキラ。
色々と心配が抑えきれなくなった天音が、結局、アキラにお金を貸すことに。
「ちゃんと返してくださいね」「大丈夫。絶対返すから」
アキラと天音が別れる。アキラは食堂へ。
〈4〉
空腹を満たして満足したアキラが帰宅すると、自宅が大炎上している。
アキラに向けられた嫉妬の罪悪から発生したらしい悪魔が、家を焼いている。
Oh…と、唖然とするアキラに襲いかかる悪魔。間一髪のところで、天音が現れて悪魔を滅する。
「無事ですか? 先輩」「マイハウスは無事じゃないです……」
家も家の中にあったモノも完全に炭と化している。
そのタイミングで、天音が持つ情報端末に悪魔発生の通知が届く。
俺のことは気にしなくていいから、と、悪魔退治に向かう天音を見送るアキラ。
パトカーのサイレンが近付いてくるのが聞こえて、対応が面倒だと思って逃げるアキラ。
〈5〉
さて、どうしよう、と。
ここで、アキラの母親が逃げた父親を追いかけて海外を飛び回っているために、アキラが一人暮らし中であるということ、そして、これまでアキラは母親の口座に入っていたお金を引き出して生活を送ってきた、ということを説明。
でも、お金の引き出しに必要な通帳もカードも燃えてしまった。
とりあえず銀行に行ってみるアキラ。
銀行員のお姉さんに尋ねてみるも、そもそもの口座の名義が母親になっているので、カードも通帳も印鑑もない状態ではどうしようもない。
銀行員のお姉さんに無理を言ってスマホを貸してもらい、母親に連絡してみるも繋がらない。母親と連絡が取れないことはよくあることだが、これでアキラは無一文確定。
〈6〉
夕暮れ、河川敷に寝転ぶアキラはどうしようかと悩む。誰か知り合いの女の子の家にでも泊めてもらおうかと思っているうちに眠ってしまう。
〈7〉
起きた時には夜が明けている。お腹が空いていて気力もなくて起き上がる気にならないアキラ。空が曇ってくるけど、やはり動く気にならない。面倒くさい。ぼんやりしていると、どんどん時間が過ぎてお腹も減って力が抜けてくる。夕方になって、土砂降りの雨が降ってくるも、そのまま寝転びながらずぶ濡れになるアキラ。
〈8〉
放課後の時間になって、天音がアキラの前に現れる。昨日のこともあった上に、学校にも来てなかったから心配で探しにきた。
ずぶ濡れ状態で倒れているアキラを面倒見いい感じで介抱する天音。天音は、アキラが路頭に迷っている事情を理解して、悪魔被害に遭った人物対象の公的支援を受けるように薦める。そういうのは申請するのが面倒くさそうで嫌だから天音の家に泊めて欲しいとお願いするアキラ。流石にそれは無理です、常識を考えてください、と真っ当に厳しく断る天音。それでも必死に頼み込むアキラ。アキラの怒涛の押しに、ちょっと揺らぎそうになる天音。だが、アキラの体力の限界が訪れて、ふと、悪魔の象徴である〝
〈9〉
驚愕する天音。アキラを人間に成りすましていた悪魔(魔人)だと判断した天音は、天使のチカラで生成した光の剣を構える。そのままアキラの首を落とそうとする天音だが、まるで無抵抗のアキラを殺すのを躊躇する。
剣を突きつけたまま、アキラに問答する天音。「先輩の目的は何ですか?」
アキラは、自分は悪魔ではなく、人間として育てられた半悪魔で、悪魔らしい悪さをしたことは一度だけしかない、と言う。
「一度はあるんですか?」
「一度だけ、な。でもそれはもう過去のことだし、これからそういうことをするつもりは一切ないし、今の俺は人間として生きているつもりなんだよ。だから俺は悪魔じゃない。まあ、それでも俺を殺したいっていうなら仕方ない。この状況で抵抗しても無駄なのは分かってるし、あと抵抗するの面倒だし」
そんなアキラを、今ここで殺す、ということに迷いが生じる天音(〝人間〟なのは半分だけ、というアキラの境遇にシンパシーも感じてしまっている)。
〈10〉
アキラをぐるぐる巻きに縛って天魔管理協会の支部に連れて行く天音。上層部にアキラについての報告をする。すると、アキラという特殊な半悪魔の存在は既に協会に把握されていたことが判明。ただ、とある圧力(実際にはアキラの母親の圧力だが、ここで詳細は伏せられる)がかかっていて、積極的にアキラに干渉できない状態。また、アキラ自身が特に悪さをしているわけでもないので、放置されている。
そんな上層部の曖昧な説明に、モヤモヤする天音。納得いかず、今すぐ処分はやり過ぎにしてもアキラを監禁して本当に無害なのかどうかを確かめるくらいはするべきじゃないのか、半分だとしても悪魔は〝悪魔〟なのだと、抗議する天音。
そこで、上層部の一人が提案する。
なら、天音がアキラを監視して管理すればいい、と。
天音自身が、アキラが有害か無害かを判断して、有害だと判断すれば〝天音の責任〟でアキラを処分すればいい、と。(暗に、アキラの処遇について協会は責任を取らないことを仄めかして、天音もそれを理解する)
色々と複雑な気持ちを抱えつつも、分かりましたと頷く天音。
かくして、アキラは天音に飼われることになる。
【二章】約3万5千字
〈1〉
プロローグに引き続いて、天音に飼われるアキラの日常。胃袋を掴まれていたり、何かと世話されまくるのが既に日常の一部になっていたり。ゲームとかの欲しいモノを天音にねだるアキラ。厳しく一蹴されるも、策を尽くして強請り押しまくって買ってもらう、など。
学校では飲み物代とか昼食代を天音にせびるアキラ。ヒモ感。学校の噂の的になってる二人。色々とダメでクズなアキラ。実はチョロくて押しに弱い天音。
〈2〉
とある日の学校帰りに、緊急支援要請を受け取った天音が、目を離せないアキラを引きずって現場に駆け付ける。色欲型の魔人に襲われて大ピンチの魔法少女を、天音が助ける。
魔人を追い詰め、剣を突きつけて詰問する天音。色欲の
〈3〉
まだ魔法少女になったばかりだという桃香が、天音にとても感謝して(天音は有名なので、存在は元から知っており、憧れていた)、懐く。
魔法少女としてもっと強く立派になりたいと志す桃香が、天音に色々教えて欲しいとお願いする。しかし、「あなたと私は違うので、あなたに教えるようなことは何もありませんよ」と、外面の良い笑顔を浮かべて遠回しに突き放すように返してその場を去る天音。
その場にいる桃香の契約天使たるピヨ太が、不自然にアキラに注目している描写も入れておく。
〈4〉
家に帰ってから、アキラが天音に、どうして
ここで
天音は、自身の血に流れる天使のチカラを使って魔法少女活動をしているため、魔法少女であれば当然側にいるはずの契約天使がいない。
私は普通じゃないんです、と零す天音。
ここでアキラは、天音が桃香に向けて言った『あなたと私は違う』という台詞の真意に気付く。
天音の不器用さを示す。今までずっと一人の時間を過ごし続けてきた天音のコミュ障な一面。そして、天音が悪魔を憎んでいる理由をしっかり提示した上で、アモデウスを見つけ出して殺すという彼女の大目的を示す。
〈5〉
夜、天音とは別の部屋で眠っているアキラの元にピヨ太がやってくる(天音の家に忍び込んだ)。
「大きくなったね、アキラくん」と声をかけるピヨ太。以前に会った覚えがないアキラは首を捻るが、「お母さんは元気にしてる?」というピヨ太の問いで勘付く。ピヨ太が、母親が魔法少女だった頃に契約していた十二大天使の一人〝慈愛のミカエル〟である、と。
「あんたがあのミカエルか?」
「その呼び方は、できれば控えて欲しい。今は〝ピヨ太〟で通してるんだ」
ここで、アキラの母親がかつて〝絶対最強〟と呼ばれた魔法少女であること、父親が元罪悪魔であること、などを示す。
俺を殺しにきたのか? と問うアキラに、首を振るピヨ太。「例え、最悪の悪魔の血を引いていても、真愛が愛する息子をどうこうするつもりはないよ。むしろその逆と言っていい。ボクがここに来たのは、君を案じてのことだよ。慈愛の心さ」
ピヨ太は言う。かつて真愛に倒された
そうか、と特に動じた様子もなく、ピヨ太の言を受け入れるアキラ。「警告ありがとう、って一応言っとくよ。頭に入れとく」
話は変わって、天音のこと。天音の母親は、かつて大天使で、純潔を司っていたにも関わらず、人間の男と恋に堕ちて堕天した。そして、純潔の大天使を堕とした男に興味を持ってしまったアモデウスにちょっかいをかけられた。堕天してまで愛することを決めた夫に裏切られた彼女は、自死の道を選んだ。たった一人取り残された天音は、堕天と自殺――二つの大罪を犯した天使の娘として、他の天使や魔法少女からは奇異の目で見られている、という話。天音自身が詳細には話さなかった部分を補足する形で、ピヨ太が語る。
「どうして俺にそんな話をする?」「これもまた慈愛の心さ。人間はこういうのを〝お節介〟って言ったりするけど、ボクはこれこそを慈愛の美徳だと信じる。慈愛とは、愛とはつまり、その者の幸せを願う感情そのものだ。ボクはね、キミたちの幸せを願っているんだよ」「お前が俺に天音の過去を教えることが、なんで俺たちの幸せに繋がるんだよ」「さぁ、どうしてだと思う? ただこれだけは言っておこうかな。ボクはね、君たちに期待しているんだ」
「お節介と慈愛、ね……。なるほどなぁ」
〈6〉
翌日、勝手な行動はしないという天音との約束を破って、天音の監視から外れて学校を抜け出すアキラ。行き先は、昨日見た桃香の制服から予測した桃香が通う中高一貫校(女子校)。
放課後、校門前にて、出てくる女子中学生たちに桃香について尋ねる。用があるから、知り合いだったら呼んで欲しい、と。
見た目だけは超イケメンなアキラにきゃーきゃー騒ぐ女子たち。やがて、頭にピヨ太を乗せた桃香が現れる。話がしたいと桃香をカフェに誘うアキラの顔を見て、ボクは外した方が良さそうだね、と飄々と何処かに消えるピヨ太。
〈7〉
おしゃれカフェにて桃香と2人で会話するアキラ。天音は素直じゃなくて、そのせいで友達もいなくて、本当は桃香みたいな子と仲良くしたいけど不器用だから素っ気なくしてしまった、的なことを話す。できれば仲良くしてあげて欲しい、と。あと、天音は押しに弱いから、グイグイ行けばきっと魔法少女の先輩として色々教えてくれるぞ、的なアドバイスもする。喜ぶ桃香。
所持金がゼロなので、カフェの代金を桃香に払って貰おうとするアキラ(しっかり高いケーキとかも食べてる)。そこで天音が登場。悪びれもせず桃香にたかろうとしたアキラを張り倒す。天音が代わりに支払いをする。アキラが消えたことにはすぐ気付いたが、折悪く悪魔が出現してしまったために、来るのが遅れた、とのこと。どうして場所が分かったのか、と問うアキラに、監視のために位置情報を取得する魔法をかけていたことを明かす天音。
〈8〉
カフェを出て、アキラが迷惑をかけたことを桃香に謝る天音。そこで桃香が、疑問に思っていたアキラと天音の関係について尋ねる。「お付き合いされてるんですか? とってもお似合いだと思います!」的な。それはあり得ない、と否定する天音。アキラとの関係については曖昧に誤魔化す。遠い親戚で、訳あって一緒にいることが多い、的な。
別れ際、桃香が天音に、魔法少女として強くなるために必要なことを色々教えて欲しい、的なことをもう一度頼み込む。断る天音だが、アキラのアドバイスを活かして押しまくる桃香。天音が折れて、天音と桃香の距離が縮まる。桃香と連絡先を交換する天音。桃香はアキラとも連絡先を交換したがるが、アキラはスマホを持っていない。アキラが天音にスマホを買って欲しいと頼んで、そんな二人の異様な関係を爛れたものだと(勝手に)察する桃香。
桃香が天音に、相談には乗りますから、的な妙な気を使ったところでオチをつけて、二章は終わり。
【三章】約4万字
〈1〉
桃香と一緒に悪魔退治をする天音。天音に懐いて師事する桃香。
天音は色々と込み入った事情からアキラというヒモを飼っているのだと、二人は爛れた関係であるだと、そんな勘違い認識をしている桃香が、頑張って調べてきたヒモカレシを真人間にするための方法などをこっそり天音にアドバイスする。本当の事情を話すこともできない天音は、頭を抱える。
〈2〉
桃香に妙な勘違いされているのが我慢ならない天音は、今まで以上にアキラに厳しく接して、アキラを真っ当な人間に矯正しようとする。
それでも怠惰であり続けるアキラに、天音の苛立ちが募る。二人の間に、険悪な雰囲気が生まれる。
〈3〉
とある休日、買い物に出かけようとする不機嫌な天音。常に天音の監視下にいることを命じられているアキラはいつも通り天音に着いて行こうとするが、付いてこないでください。絶対に家からも出ないでください、的なことを言われる。自宅待機するアキラ。
〈4〉
買い物に行く途中、迷子の女の子(小学2年生くらいの見た目)を見つける天音。
お母さんを探して欲しいと言われて、一緒に探すことに。女の子に、ひと気のない方に誘導される。
女の子の正体が
〈5〉
地に伏した天音に、マイラが、アキラを拘束して連れて来いと命じる(マイラはここ数日、アキラと天音のことを見張っていた(←二章あたりでアキラが怪訝な視線を感じる伏線など入れておく)(実際として、マイラはピヨ太の企てに誘導されてアキラのことを知ったわけだが、一巻でそこまで深掘りはしない。仄めかせる程度)(マイラは復讐の為にアキラの身柄が欲しいが、真愛の息子であるアキラを警戒しているから天音が一人の時に近付いた)。
マイラは、天音の父親を誘惑した
〈6〉
アキラが大人しくお留守番してると、桃香が訪ねてくる。天音に会いに遊びにきた感じ。桃香とピヨ太と話していると天音が帰ってくる。
天音の様子がおかしいことに気付くアキラたち。何かあったか? と尋ねるアキラ。いつもお世話になってるので、困ったことがあったら言ってくださいね、と言う桃香。
しかし、別に何もないと誤魔化す天音。
〈7〉
夜、眠るアキラを置いて家を出て、マイラに指定された場所に一人で向かう天音。一人で抱え込んで何とかしようとする(マイラから力づくでアモデウスについて聞き出そうと目論む)。マイラを奇襲するも、返り討ちにされて負ける。
お前は〝愚痴〟で罪深いと、マイラに嘲笑される天音。殺されかけたところで、アキラが現れる。
〈8〉
(少し時間を戻して)
夜、起きて、天音がいないことに気付くアキラ。様子がおかしかった日中の天音を思い返して、天音がアキラにかけていた追跡探知魔法を逆探知して、天音の元に辿り着く。自棄の悪魔のチカラ(対象を自傷させる)でマイラを圧倒するアキラ。天音の窮地を救う。
マイラに、どうしてこんな愚かな女を助けるのか、と問われて、天音は愚かなんかじゃない、と飄々と返す。天音がいつもひたむきに頑張っていることは、側で見てきた俺がちゃんと知っている、と。そして最後に、それに天音がいなくなったら誰が俺の世話をするんだ、的な格好つかない決め台詞。
追い詰めたマイラから、アモデウスがとある目的(今代の純潔を司る大天使と、そのパートナーの魔法少女を追っている)から現在日本に潜伏しているという情報を得た上で倒し、拘束する。駆け付けた警察に引き渡す。
〈9〉
めちゃくちゃ久しぶりに悪魔のチカラを使ったせいで、体力が限界まで無くなって一切身動きが取れなくなったアキラを介抱する天音。
アキラに深く感謝してお礼を言う天音。アキラにデレる天音。これからは一人で抱え込む悪癖を控えるつもりだと言う天音(そして心の内では、やはりだらしないアキラには自分がついてないとダメだと思っている)。
アキラを他の悪魔とは違うと認めて、アキラを悪い存在ではないと信じて、アモデウスを探し出すという自分の目的を手伝って欲しい、とお願いする天音。めんどくさいし疲れるから嫌だと返すアキラ。でもまあ、これからも俺の面倒を見てくれるなら考えないでもない、と。
やっぱり先輩はダメ〝人間〟です、という天音の罵倒でオチ(でも、アキラの世話を焼くことが(無意識の内に)もう満更ではなくなっている)。
【エピローグ】約5千字
〈1〉
新しいアキラと天音の日常。結局、まだ天音に飼われているアキラ。天音がアキラに落ちてしまったので、今まで以上にリアルなヒモと飼い主っぽい共依存関係になっている。そんな天音を心配する桃香と、面白がるピヨ太。
そういう平和な、その後の日常を描く。
〈2〉
アキラの独白。
アキラが過去に、天音にどこか似ている幼なじみの少女(怠け者のアキラを甲斐甲斐しく世話していた)(魔法少女になるのが夢だった)を、しょうもないケンカが原因で、無自覚に自棄の悪魔のチカラを使って自殺させてしまった、ことを明かす。このタイミングで初めて、アキラが
アキラが、自分自身を価値のない存在だと捉える〝自棄の罪悪〟を有していることを仄めかした上で、天音のことを他とは違う特別な存在だと感じ始めている、みたいな心情。
そのような二巻への引きを作って、一巻は終わり。
<備考>
➡天音の魔法少女活動に対する給与は、書類上の後見人である叔母を通して全額天音の手元に収まるようになっている。このお金で天音は生活しているので、完全に自立している形。
➡天音が天魔管理協会と直接通じているのはかなり特殊。基本的に魔法少女は協会と直接のコネクションは持たない。契約天使が、魔法少女と協会の仲介役を果たすのが通例。天音には契約天使がいないので直接繋がっている。(参照:一章〈10〉)
➡天魔管理協会を仕切っているのは、大天使より上の階級を持つ天使たち。天使以外でこの事実を知る者はごく少数。
➡ピヨ太の目的は〝世界平和〟。そのためには天使と悪魔と人間が和解して〝愛〟を育む必要があると考えており、アキラと天音がその象徴となることを期待している。目的のためなら手段を選ぶつもりはない。
<二巻以降>
他の個性豊かなキャラを出したり、アモデウスを追っていくストーリーの過程で、アキラから天音に向ける好感度や依存度を上げつつ、かけがえのない存在にする。その上で、天音の存在をキッカケにして、アキラが真の意味で自分を大切できるようになる方向へ物語の舵を切っていく。
自己犠牲を厭わないアキラに天音が本気で怒って泣いたり、そういう自分の愚挙のせいで天音を失いそうになったり、悲しませたり、などがキッカケになる。
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